アシュワガンダの研究を読むで解説した通り、アシュワガンダ(ウィザニア)は厚生労働省の食薬区分で「専ら医薬品として使用される成分本質(原材料)リスト」(別添2)に収載されており、日本国内では食品・サプリメントとして合法的に製造・販売できません。海外で人気のアダプトゲンを試してみたくても、その代表格が国内では買えない――このねじれが、「アシュワガンダの代わりに、日本で合法的に買えるアダプトゲンは何か」という実用的な疑問を生んでいます。この記事では、厚生労働省が公開するもう一つのリスト「医薬品的効能効果を標ぼうしない限り医薬品と判断しない成分本質(原材料)リスト」(別添3、通称:非医薬品リスト)に掲載が確認できる代表的な5素材――ロディオラ(イワベンケイ)・マカ・高麗人参(オタネニンジン)・霊芝(レイシ)・ヤマブシタケ――を、規制上の位置づけと研究の現在地、入手性の3点から整理します。

この記事の要点

  • アシュワガンダが「専ら医薬品」に区分される一方、ロディオラ・マカ・高麗人参・霊芝・ヤマブシタケの5素材は、厚生労働省の非医薬品リスト(別添3)の「植物由来物等」に単独で掲載が確認でき、医薬品的な効能効果を標ぼうしない限り食品として製造・販売できます
  • いずれも研究は進行中の段階で、「効く」と断定できる素材はありません。研究の蓄積量や結果の一貫性には素材ごとに差があります
  • 食薬区分の対象品目は随時見直されるため、本記事の内容は2026年7月時点の確認情報です。購入前に最新の公的情報を確認してください

なぜこの5素材なのか — 「専ら医薬品」と「非医薬品リスト」の違い

厚生労働省の食薬区分には、性格の異なる2つのリストがあります。一つは前述の「専ら医薬品として使用される成分本質(原材料)リスト」(別添2)で、ここに載ると原則として食品としての流通が認められません。アシュワガンダはこの別添2に該当します。

もう一つが「医薬品的効能効果を標ぼうしない限り医薬品と判断しない成分本質(原材料)リスト」(別添3)です。ここに掲載された原材料は、「効く」「治る」といった医薬品的な効能効果を表示・広告しない限り、食品(サプリメントを含む)として製造・販売することができます。アダプトゲンとは?種類と研究の現在地で扱った高麗人参などは、以前からこの別添3の枠組みで流通してきました。

同リストの「1. 植物由来物等」を確認すると、次の5素材が単独で掲載されており(専ら医薬品リストへの二重掲載を示す「医」の注記はありません)、食品としての入手が可能です。

名称(リスト表記)他名等部位等
イワベンケイコウケイテン全草
マカマカマカ
オタネニンジンコウライニンジン/チョウセンニンジン果実・根・根茎・葉
レイシ<霊芝>マンネンタケ/ロッカクレイシ子実体(胞子を含む)
ヤマブシタケ(他名等の記載なし)子実体

以下、それぞれの伝統的な位置づけ・研究の現在地・入手性を見ていきます。

ロディオラ(イワベンケイ、Rhodiola rosea)— 疲労関連の研究が比較的蓄積した一種

ロディオラは、北欧やロシアの寒冷地に自生するベンケイソウ科の植物で、伝統的に厳しい気候や重労働への耐性を高める目的で用いられてきました。「アダプトゲン」という概念を体系化した旧ソ連の薬理学者らの研究対象の中心の一つでもあります。

Ishaqueらが2012年にBMC Complementary and Alternative Medicine誌に発表したシステマティックレビューでは、身体的疲労・精神的疲労を対象にした複数の試験が検証されています。身体的疲労を扱った試験では改善を示した結果が多かった一方、精神的疲労については効果が確認できなかった試験も含まれており、結果は一貫していません。著者らは、対象となった試験の方法論的な質にばらつきがあることを限界として挙げています。「疲労感の軽減が示唆される」という段階であり、断定できる結果ではない点に注意が必要です。

入手性の面では、ロディオラは国内のサプリメント通販サイトやハーブ専門店で、カプセルや粉末、抽出液(チンキ)の形態で販売されている製品が見られます。コンビニやドラッグストアの一般的な棚に並ぶ機会はまだ多くありませんが、通販での取り扱いは比較的見つけやすい素材です。研究の詳細や製品選びのポイントは、ロディオラガイドで深掘りしています。

マカ(Lepidium meyenii)— アンデス由来、性機能・更年期領域で研究が進む根菜

マカは南米ペルーの高地アンデスで栽培されてきたアブラナ科の植物で、根の部分が伝統的に滋養強壮を目的とした食材として利用されてきました。日本でも「マカ」の名でサプリメントの知名度が高い素材の一つです。

Shinらが2010年にBMC Complementary and Alternative Medicine誌に発表したシステマティックレビューでは、性機能に関する4件のランダム化比較試験(勃起不全患者50名、健康成人男性57名、健康な閉経後女性16名、健康な自転車選手8名、計131名)を検証しています。勃起不全患者を対象にした試験や閉経後女性を対象にした試験では改善方向の結果が報告された一方、健康な自転車選手を対象にした試験では効果が確認されませんでした。著者らは、試験数・サンプルサイズ・方法論の質がいずれも限定的であり、確実な結論を導くのは難しいと述べています。更年期症状に関しても複数の小規模試験でレビューが行われていますが、同様に試験規模の小ささが指摘されています。

入手性としては、粉末(マカパウダー)がスムージーや料理に混ぜる形で流通しているほか、カプセル・タブレット型のサプリメントも通販やドラッグストアで比較的見つけやすい素材です。詳しい研究の解説は、マカとアダプトゲンで扱っています。

高麗人参(オタネニンジン、Panax ginseng)— 倦怠感軽減のメタ分析で比較的一貫した結果

オタネニンジン(高麗人参・朝鮮人参)は、東アジアで数千年にわたり使われてきたウコギ科の植物で、根の部分が滋養強壮の目的で古くから食品・生薬の両面で用いられてきました。アダプトゲンの中では比較的研究の蓄積が多い部類です。

Zhuらが2022年にMedicine (Baltimore)誌に発表したシステマティックレビュー・メタ分析では、12件のランダム化比較試験(計1,298名)を統合した結果、高麗人参サプリメントが疾患関連の倦怠感を統計的に有意に軽減したと報告されています(標準化平均差-0.33、95%信頼区間-0.44~-0.22)。がん関連の倦怠感に絞った別のメタ分析でも同様に有意な軽減が報告されており、疲労・倦怠感の領域では比較的一貫した結果が得られている素材といえます。ただし著者らは、研究間で使用された用量や製剤の種類、評価尺度が異なる点(異質性)を限界として挙げています。

入手性の面では、高麗人参は粉末・エキス・タブレット・お茶(高麗人参茶)など形態が豊富で、ドラッグストアや通販、韓国食材を扱う店舗などで比較的容易に入手できます。研究の詳細は高麗人参ガイドで解説しています。

霊芝(レイシ、Ganoderma lucidum、マンネンタケ)— 関心は高いがエビデンスは限定的

霊芝(マンネンタケ)は東アジアで古くから用いられてきたサルノコシカケ科のキノコで、子実体(いわゆるキノコの本体部分)が伝統的に用いられてきました。「不老長寿のキノコ」として語られることもありますが、現代の臨床研究の到達点はそれとは距離があります。

コクラン共同計画がSantessoとWielandによる2016年のレビューとして発表した霊芝とがん治療に関するコクランレビューでは、5件の研究(参加者373名、進行肺がん・直腸がん術後などが対象)を統合しています。治療反応の改善につながる可能性や、生活の質(QOL)の改善につながる可能性が示唆される一方、生存率については測定されておらず、エビデンスの質は「非常に低い~低い」と評価されています。理由としてランダム化の手順の記述が不明確であることや参加者数の少なさが挙げられており、霊芝は関心の高さに比べて、質の高い臨床研究がまだ十分に蓄積していない段階の素材と言えます。免疫や疲労への影響を扱った小規模な報告も存在しますが、同様に慎重な読み方が必要です。

入手性としては、乾燥スライスや煎じ用のチップ、エキス顆粒、カプセルなどの形態で、漢方薬局や通販サイトを中心に流通しています。一般的なドラッグストアでの取り扱いはロディオラやマカほど広くありません。詳しい研究の解説は霊芝ガイドで扱っています。

ヤマブシタケ(Hericium erinaceus、ライオンズメイン)— 認知機能への関心が高まる、小規模試験段階のキノコ

ヤマブシタケは、獅子のたてがみのような見た目からライオンズメインとも呼ばれるサンゴハリタケ科のキノコです。子実体が食用・素材として用いられ、近年は海外のノンアルコールドリンクや「マッシュルームコーヒー」の文脈で認知機能への関心が高まっています。

Moriらが2009年にPhytotherapy Research誌に発表した二重盲検プラセボ対照試験では、軽度認知障害と診断された50~80歳の日本人男女30名(各群15名)を対象に、乾燥粉末を含む錠剤を16週間摂取してもらったところ、摂取群でプラセボ群と比べて認知機能評価スケール(長谷川式認知症スケール改訂版)のスコアが有意に上昇したと報告されています。ただし摂取を中止した後の追跡では効果が減弱したとされており、参加者数も30名と小規模です。近年発表された健康な成人を対象にした試験でも、視覚的注意や作業記憶、主観的な睡眠の質などで改善方向の結果を報告するものがある一方、結果が一貫しない試験も見られ、いずれも小規模・短期間の試験にとどまっています。

入手性の面では、粉末やカプセルのサプリメントに加え、海外由来の「マッシュルームコーヒー」「アダプトゲンラテ」的な商品カテゴリーとしても輸入・国内製造の製品が通販で見られるようになっています。ドリンクとしての楽しみ方はヤマブシタケとアダプトラテで紹介しています。

5素材の比較表

素材和名(リスト表記)食薬区分上の位置づけ部位等研究の特徴詳しく読む
ロディオライワベンケイ非医薬品リスト(別添3)掲載全草身体的疲労で改善方向の報告、精神的疲労は結果が不一致ロディオラガイド
マカマカ非医薬品リスト(別添3)掲載性機能・更年期領域で研究があるが小規模マカとアダプトゲン
高麗人参オタネニンジン非医薬品リスト(別添3)掲載果実・根・根茎・葉倦怠感軽減のメタ分析で比較的一貫した結果高麗人参ガイド
霊芝レイシ非医薬品リスト(別添3)掲載子実体(胞子を含む)がん治療補助の文脈でエビデンスの質は低い評価霊芝ガイド
ヤマブシタケヤマブシタケ非医薬品リスト(別添3)掲載子実体認知機能に関する小規模試験が進行中ライオンズメインラテガイド

(参考:アシュワガンダ(ウィザニア)は根だけでなく茎や葉を含む植物体全体が専ら医薬品リスト(別添2)に掲載されており、食品としての製造・販売はできません。)

購入時に確認しておきたいこと

非医薬品リストに掲載されているからといって、どんな表示・訴求でも許されるわけではありません。「ストレスを解消する」「不調が治る」といった医薬品的な効能効果を標ぼうすると、たとえ原材料が非医薬品リスト掲載であっても薬機法上の問題になり得ます。パッケージや広告に断定的な効能表現がなく、原材料名・含有量表示がある製品を選ぶことが、規制面でも情報の正確さの面でも大切です。

また、食薬区分の対象品目や運用は今後も見直される可能性があります。本記事の内容は2026年7月時点で厚生労働省の公表資料を確認したものであり、購入前には厚生労働省や販売事業者が公開する最新の情報を必ず確認することをおすすめします。

よくある質問

アシュワガンダの代わりになる成分はありますか?

「代わり」として同じ効果を保証するものではありませんが、日本の食薬区分上、食品として合法的に入手できるアダプトゲン系の素材として、ロディオラ・マカ・高麗人参・霊芝・ヤマブシタケが挙げられます。それぞれ研究の蓄積量やエビデンスの強さは異なるため、成分ごとに現在地を確認した上で検討することをおすすめします。

この5素材はどこで買えますか?

高麗人参やマカはドラッグストアや通販サイトで比較的見つけやすく、ロディオラ・霊芝・ヤマブシタケは通販サイトやハーブ・漢方専門店での取り扱いが中心です。コンビニでの取り扱いは限定的です。いずれも購入前にパッケージの原材料表示を確認してください。

非医薬品リストに載っていれば安全ということですか?

安全性を保証するものではありません。非医薬品リストは「食品として製造・販売できるかどうか」という法的な区分を示すものであり、有効性や安全性を厚生労働省が認定したものではない点に注意が必要です。持病がある方や服薬中の方は、摂取前に医師・薬剤師に相談してください。

この5素材はアシュワガンダと同じ効果がありますか?

研究対象としている症状や指標が素材ごとに異なり、単純に比較できるものではありません。「疲労」「認知機能」「性機能」など、それぞれ研究で扱われているテーマが異なるため、目的に応じて各素材の研究内容を個別に確認することをおすすめします。

食薬区分は今後変わる可能性がありますか?

あります。アシュワガンダも2013年の改正で「専ら医薬品」に区分が変更された経緯があり、食薬区分のリストは随時見直されています。本記事の内容は2026年7月時点の確認情報であり、購入前に最新の公的情報を確認することをおすすめします。

まとめ

アシュワガンダが食薬区分上「専ら医薬品」とされ日本では買えない一方、ロディオラ・マカ・高麗人参・霊芝・ヤマブシタケの5素材は、厚生労働省の非医薬品リスト(別添3)に掲載が確認でき、医薬品的な効能効果を標ぼうしない限り食品として合法的に入手できます。ただし、いずれも研究はまだ進行中の段階であり、「効く」と断定できる素材はありません。研究の蓄積量や結果の一貫性は素材ごとに異なるため、興味を持った素材があれば、それぞれの単独記事で研究の詳細を確認したうえで、規制の位置づけと合わせて判断することをおすすめします。

参考文献

免責事項

本記事は医療アドバイスではなく、特定の製品の購入や摂取を推奨するものではありません。本記事で紹介した研究はいずれも研究段階のものであり、効果や安全性を保証するものではありません。持病がある方、服薬中・通院中の方、妊娠中・授乳中の方は、使用の可否について必ず医師にご相談ください。食薬区分の内容は法改正等により変わる可能性があるため、本記事の情報は2026年7月時点の確認情報として扱い、購入前には厚生労働省や販売事業者が公開する最新の情報をご確認ください。20歳未満の方への使用は推奨していません。