米国発のノンアルコールブランド「Kin Euphorics(キン・ユーフォリクス)」は、アダプトゲンやノートロピック(認知機能に働きかけるとされる成分)を配合した機能性ドリンクで、欧米のsober curious(ソバーキュリアス)市場を代表する存在のひとつになっています。単に「アルコール抜き」の飲み物ではなく、「乾杯の場にふさわしい、別の何か」を提供するというポジショニングが特徴です。この記事では、Kin Euphoricsの成り立ちと欧米での市場動向を一次資料で確認しながら整理し、日本で同種の製品を検討する際に知っておくべき規制上の注意点までをまとめます。

この記事の要点

  • Kin Euphoricsは2018年、Jen BatchelorとMatthew Cauble(Soylent共同創業者)によって設立され、2021年にモデルのBella Hadidが共同創業者として参画した米国のノンアルコールブランド
  • 「アルコールの不在」ではなく「別の何かの存在」を売るという発想で、乾杯の儀式そのものを再設計するというコンセプトを掲げている
  • 米国のアダプトゲン配合飲料は市場調査会社NIQのデータで、2026年2月14日までの52週間で売上16億ドル超・前年同期比18%以上の成長が報告されている
  • 海外製品の個人輸入には規制上の注意が必要。特にアシュワガンダを含む製品は、日本国内では食品として合法に扱えない

Kin Euphoricsとは何か — 「飲まない社交」のために生まれたブランド

Kin Euphoricsは2018年、ウェルネス業界出身のJen Batchelorと、代替食品ブランドSoylentの共同創業者であるMatthew Caubleによって米国で設立されました。2021年9月には、モデルのBella Hadidが共同創業者・ビジネスパートナーとして参画したことが同社のプレスリリースで発表され、ブランドの知名度を大きく押し上げました。

創業者のBatchelorは、サウジアラビアで育った幼少期に父親が家庭で密造酒を作り家族でパーティーを開いていた経験を振り返りつつ、米国に帰国した後、「アルコールは本当に切断的なもの(disconnective)だ。自分の身体からも、コミュニティからも切り離してしまう」と感じたことがブランド設立のきっかけになったと、業界メディアDry Atlasのインタビューで語っています。重要なのは、Batchelorが目指したのが既存の酒の「アナログ(模造品)」を作ることではなかったという点です。同インタビューで彼女は「アナログを作るのではなく、これまで存在しなかったものを作りたかった」と述べており、自宅のキッチンでエキスやエリキサーを試作しながら開発を進めたと説明しています。

Kin Euphoricsの製品は、アダプトゲン(アダプトゲンとは?種類と研究の現在地で解説)、ノートロピック(認知機能に働きかけるとされる成分)、ボタニカル(植物由来成分)という3つのカテゴリーの成分を組み合わせて設計されていると同社は説明しています。代表的な製品ラインは次の通りです。

製品名主な配合成分(公式サイト・製品情報より)訴求ポイント
Kin Spritzロディオラ・ロゼア、5-HTP、GABAエネルギーと気分の高揚
Kin Bloomシサンドラ、ダミアナ、L-テアニンリラックスと親密さ
Lightwave(ノンカフェイン)霊芝(レイシ)、L-テアニン、L-トリプトファン鎮静と内なる静けさ

同ブランドは2025年、4年ぶりとなる新スピリット製品「Matchatini」を発売しました。業界メディアBeverageDaily(2025年1月30日)によれば、抹茶をベースに、マカ、アルファGPC、CoQ10、舞茸(まいたけ)由来の成分を配合し、エネルギー・認知機能・気分の安定を意識した設計とされています。製品は米国のTarget、Sprouts、Erewhon、BevMo、Wegmansといった小売チェーンやフィットネスクラブのEquinoxなどで取り扱われています。

なぜ「アルコールの不在」ではなく「別の何か」を売るのか

Kin Euphoricsのポジショニングを理解するうえで鍵になるのが、「引き算」ではなく「足し算」の発想です。ノンアルコール飲料の多くが「お酒の代わりに」「アルコールゼロで」という引き算の言葉で語られるのに対し、Kin Euphoricsは「乾杯にふさわしい、新しい何かを飲む」という足し算の言葉でブランドを語ります。ドリンクの効能を「基本的な栄養や風味を超えた、気分や幸福感への前向きな働きかけ」と説明する同社の姿勢は、ソバーキュリアスとは?意味・始め方を徹底解説で紹介した「我慢ではなく選択」という考え方とも重なります。

BeverageDaily(2025年1月30日)の報道によれば、同社は2025年の観察として、Dry January(1月の禁酒チャレンジ)後に45歳以上の層で顧客ロイヤルティが大きく向上したこと、小売での売上が前年比90%台という高い伸びを見せたことを挙げています。この数字は同社単独の実績であり、市場全体の成長率と同一視はできませんが、「1月だけの実験」から「通年のライフスタイル」へと定着しつつある動きの一端を示す事例といえます。

欧米のアダプトゲンドリンク市場はどれくらい伸びているのか

海外のsober curious市場の広がりを裏づけるデータをいくつか確認します。数字は調査手法や対象範囲によって幅があるため、複数の出典を並べて紹介します。

出典対象数値
Gallup(2025年8月発表)米国成人のうち飲酒すると答えた人の割合54%(1939年以来の調査史上最低。2023年62%→2024年58%→2025年54%と3年連続で低下)
NIQ(市場調査会社、2026年2月14日までの52週間)米国のアダプトゲン配合飲料の小売売上16億ドル超、前年同期比18%以上の成長
NIQ(2025年)ノンアルコールのビール・ワイン・スピリッツ全体の売上約10億1,000万ドル、前年比18.5%増
Future Market Insights(市場予測レポート)世界のアダプトゲンドリンク市場規模2025年に19億ドル、2035年には36億ドルに達するという予測(年平均成長率6.7%)
データ分析企業Spate(2024〜2025年)「アダプトゲン」関連の検索数の伸びGoogle検索で14.1%増、TikTokで43.3%増、Instagramで171.1%増

Gallupの調査は米国成人全体の飲酒率という「消費が減っている」側のデータであり、NIQの小売売上データは「代替飲料が伸びている」側の実測データです。両者を重ねると、飲酒量そのものが減る一方で、その空いた場所を機能性のノンアルコール飲料が埋めているという構図が見えてきます。業界メディアBevIndustryの報道(2026年)では、Z世代の29%、ミレニアル世代の26%が過去6ヶ月間に外食・外飲みの場で機能性飲料を口にしたと回答したというNIQのデータも紹介されており、若い世代を中心に「乾杯の一杯」としての定着が進んでいることがうかがえます。なお、市場予測レポートは調査会社ごとに手法や対象範囲が異なるため、他の調査会社では異なる成長率・市場規模を示すケースもあります。一つの数字を絶対視せず、「複数の推計がおおむね拡大方向を示している」という程度に読むのが適切です。

Kin Euphoricsは日本で買えるのか — 個人輸入と規制の壁

結論から言うと、Kin Euphorics公式サイトは日本を含む海外への直接発送を行っていません。第三者の海外通販代行サイトを経由すれば商品を取り寄せること自体は可能なようですが、これは通常の店頭購入ではなく個人輸入の扱いになります。

ここで正確に知っておくべきなのが、成分ごとの日本国内での法的な位置づけです。Kin Euphoricsの一部製品が使うシサンドラやL-テアニン、ロディオラなどは日本国内でも比較的流通実績のある成分ですが、アダプトゲンを謳う海外製品の中には、日本の食薬区分で「専ら医薬品として使用される成分本質(原材料)リスト」に収載された成分を含むものもあります。代表例がアシュワガンダです。厚生労働省の同リストでは、根だけでなく茎や葉を含む植物体全体が「専ら医薬品」に区分されており、国内で食品・サプリメントとして製造・販売することはできません。この経緯と研究の現在地はアシュワガンダの研究を読む — 何がわかっていて、何が不明かで詳しく解説しています。

個人輸入そのものは、自己使用目的で数量等の条件を満たせば可能な場合がありますが、無許可で国内に転売・譲渡すれば医薬品医療機器法(薬機法)違反となる可能性があります。また個人輸入した製品は国内の品質管理基準の対象外であり、成分表示通りの内容量や安全性が保証されているわけではありません。「海外で人気だから」という理由だけで飛びつく前に、配合成分を一つひとつ確認し、日本の食薬区分でどう扱われるかを調べる姿勢が欠かせません。成分ごとの規制の考え方はアダプトゲンの合法性ガイドでさらに詳しく整理しています。

国内で今、合法に試せる選択肢は何か

海外のアダプトゲンドリンク文化そのものを体験したい場合、まず検討したいのが国内で合法に製造・販売されている機能性ノンアルコール飲料です。L-テアニンやGABA、高麗人参、ロディオラなど、食薬区分上「専ら医薬品」に該当しない成分を使った製品であれば、国内メーカーからも選択肢が増えています。具体的な製品と選び方はアダプトゲンドリンクの選び方ガイドでまとめていますので、「乾杯の一杯」を探している方はあわせてご覧ください。CBDのように、アダプトゲンとは異なる法規制の枠組みを持つ成分もあり、合法性の考え方そのものが成分カテゴリーごとに違う点も押さえておくと、選択肢を広げやすくなります。

よくある質問

Kin Euphoricsとはどんな会社ですか?

2018年に米国で設立された、アダプトゲンやノートロピックを配合したノンアルコール機能性飲料のブランドです。創業者はJen BatchelorとMatthew Cauble(Soylent共同創業者)で、2021年にモデルのBella Hadidが共同創業者として参画しました。

Kin Euphoricsは日本で買えますか?

Kin Euphorics公式サイトは日本への直接発送を行っていません。海外通販代行サイトを通じた個人輸入という形になりますが、製品に含まれる成分によっては日本の食薬区分上、国内で合法に流通できないものもあるため、購入前に成分を確認することをおすすめします。

アダプトゲンドリンクの効果は科学的に証明されていますか?

「証明されている」と言える段階ではありません。アダプトゲンという概念自体、欧州医薬品庁(EMA)は正式な薬理学的カテゴリーとして採用しておらず、成分ごとに研究の蓄積やエビデンスの強さが大きく異なります。詳しくは本記事前半のアダプトゲンの解説、および関連記事で紹介しています。

海外の市場規模データは、なぜ出典によって数字が違うのですか?

市場調査は会社ごとに対象範囲(国・製品カテゴリーの定義)や算出手法が異なるため、同じ「アダプトゲンドリンク市場」でも予測値に幅が出ます。本記事では実測に近いNIQの小売売上データと、将来予測であるFuture Market Insightsのレポートを分けて紹介し、性質の違う数字であることを明記しています。

日本で合法に試せるアダプトゲン系ドリンクはありますか?

はい。L-テアニンやGABA、高麗人参など、食薬区分上「専ら医薬品」に該当しない成分を使った国内製品であれば選択肢があります。具体的な製品情報は本記事内でも紹介している国内向けガイド記事にまとめています。

まとめ

Kin Euphoricsは、「アルコールの不在」ではなく「乾杯にふさわしい別の何か」を提供するという発想で、欧米のsober curious市場を代表するブランドに成長しました。Gallupの飲酒率データとNIQの小売売上データを重ねると、米国では飲酒そのものが減る一方、アダプトゲンを含む機能性ノンアルコール飲料がその隙間を埋めつつあるという構図が見えてきます。一方で、日本国内には食薬区分という独自の規制があり、海外で人気の成分をそのまま個人輸入できるとは限りません。海外の潮流を知ることと、国内で合法に選べる選択肢を知ることは、別々に押さえておく必要があります。

参考文献

免責事項

本記事は特定のブランド・製品の購入や摂取を推奨するものではなく、医療アドバイスでもありません。海外製品の個人輸入には法的なリスクが伴う場合があり、製品によって国内での取り扱いの可否は異なります。購入・使用を検討する場合は、最新の公的情報を確認し、持病がある方・服薬中の方・妊娠中や授乳中の方は事前に医師にご相談ください。20歳未満の方への使用は推奨していません。