アシュワガンダ(Withania somnifera)は、インドの伝統医学アーユルヴェーダで数千年にわたって使われてきたナス科の植物です。海外では近年、「アダプトゲン」を謳うノンアルコール飲料やサプリメントの主要成分として存在感を増していますが、日本の状況はそれとは大きく異なります。この記事では、まず知っておくべき日本での法的な位置づけを整理したうえで、睡眠やストレスに関する研究の現在地、安全性をめぐる論点を、断定を避けながら解説します。摂取を勧める記事ではなく、規制と研究の現状を正確に知るための解説記事です。

この記事の要点

  • アシュワガンダ(ウィザニア)は、根だけでなく茎や葉を含む植物体全体が厚生労働省の「専ら医薬品として使用される成分本質(原材料)リスト」に収載されており、日本国内では食品・サプリメントとして製造販売できません
  • 睡眠の質やコルチゾール(ストレスホルモン)の低下を示唆する研究がありますが、多くは小規模な試験で、主観的なストレス実感への効果は研究によって結果が割れています
  • 海外では稀な肝障害の症例報告があり、妊娠中は避けるべきとされています

アシュワガンダとは何か

アシュワガンダは、学名を Withania somnifera といい、インドやアフリカ北部などに自生するナス科の植物です。日本の食薬区分の資料では「ウィザニア」という名称で扱われています。アーユルヴェーダでは古くから、乾燥させた根を牛乳や蜂蜜と合わせて日常的に摂る習慣があったとされ、体質改善や体力維持を目的に用いられてきました。

近年の海外のウェルネス業界では、こうした伝統的なハーブが「アダプトゲン」というカテゴリーで語られることが増えています。アダプトゲンとは何を指す言葉で、どこまで研究が進んでいるかについては、アダプトゲンとは?種類と研究の現在地で解説しています。

日本でアシュワガンダは合法なのか — 食薬区分という壁

ここが、この記事でもっとも正確に伝えたい点です。

日本では、ある物質が「食品」として販売できるか「医薬品」として扱われるかを、厚生労働省が定める食薬区分という仕組みで判断しています。この区分に「専ら医薬品として使用される成分本質(原材料)リスト」があり、ここに載った原材料は、食品やサプリメントとして製造・販売することができません。

厚生労働省が公開している同リストの植物由来物一覧には、次の記載があります。

名称他名等部位等
ウィザニアアシュワガンダ根だけでなく茎や葉を含む植物体全体

つまりアシュワガンダは、根に限らず植物体全体が「専ら医薬品」に区分されています。この区分になった経緯を確認すると、2011年7月28日から8月26日にかけて厚生労働省が同リストの改正案についてパブリックコメントを募集し、2012年1月23日付けで厚生労働省医薬食品局監視指導・麻薬対策課が意見募集の結果を公表しています。この過程では、「アシュワガンダの根は健康食品として流通してきた実績があり、部位ごとに判断すべき」といった反対意見も多数寄せられましたが、厚生労働省の考え方は、原材料としての流通実績ではなく、含まれる成分の毒性の強さで判断するというものでした。具体的には、アシュワガンダに含まれるウィザフェリンA(withaferin A)という成分が毒性の強い物質であり、根だけでなく植物の他の部位にも含まれることを理由に、植物体全体が「専ら医薬品」に区分されています。

この改正が行われる前は、アシュワガンダの根は「医薬品的効能効果を標ぼうしない限り医薬品と判断しない成分本質(原材料)」に含まれており、食品としての販売が可能でした。2013年には日経メディカルが「アシュワガンダが食薬区分の『薬』に」という見出しでこの変更を報じています。

現時点の帰結として、日本国内でアシュワガンダを主成分とする製品を食品・サプリメントとして製造・販売することはできません。 海外のオンラインショップなどで販売されているアシュワガンダのサプリメントやドリンクを見かけることがあっても、それらは日本の食薬区分上、食品として流通が認められた製品ではない点に注意が必要です。

海外製サプリメントを自己使用目的で個人輸入すること自体は、数量などの条件を満たせば可能な場合がありますが、無許可で国内で転売・譲渡すれば医薬品医療機器法(薬機法)違反となる可能性があります。また個人輸入した製品は、国内の品質管理基準の対象外であるため、含有成分や安全性が保証されているわけではありません。購入・使用を検討する場合は、この法的な位置づけを理解したうえで、慎重に判断することをおすすめします。

研究の現在地(1) 睡眠の質との関係

海外の研究では、アシュワガンダの摂取と睡眠指標の関係を調べたランダム化比較試験がいくつか行われています。

Cheahらが2021年に学術誌PLOS ONEに発表したシステマティックレビュー・メタ分析では、5件のランダム化比較試験(健康な成人210名、高齢者50名、不眠症のある人140名を含む計約400名)を統合した結果、アシュワガンダの摂取群でプラセボ群と比べて睡眠の質のスコアが改善したという報告があります。入眠までの時間や総睡眠時間、睡眠効率についても改善方向の結果が示されており、特に1日600mg以上・8週間以上の摂取で、かつ不眠症のある人を対象にした試験で効果がより明確だったとされています。

ただし、この分析の著者ら自身が、対象となった試験の数が少なくサンプルサイズも小さいこと、試験ごとの結果のばらつき(異質性)が大きいこと、長期的な安全性データが乏しいことを限界として明記しています。「睡眠に良い影響が示唆される」という段階であり、断定できる結果ではありません。

研究の現在地(2) ストレス・コルチゾールとの関係

ストレスホルモンとされるコルチゾールとの関係についても、複数のメタ分析が発表されています。

2025年にBJPsych Open誌に発表されたBachourらのシステマティックレビュー・メタ分析(15件の研究、参加者873名)では、8週間の摂取後にコルチゾール値の有意な低下と、主観的ストレス尺度(PSS)の有意な改善が報告されています。一方で、生活の質(QOL)の指標には統計的に有意な改善が見られなかったとされています。

これに対し、同じく2025年に発表されたAlbalawiらのメタ分析(コルチゾールに関する7件、主観的ストレスに関する6件、参加者計488名)では、コルチゾール値については有意な低下が確認された一方、主観的なストレスの実感(PSS)については、プラセボ群との間に統計的な有意差が見られなかったと報告されています。この研究では、両方の指標についてエビデンスの確実性を「低い」と評価しています。

つまり、「コルチゾール値が下がる」という報告は複数の研究で比較的一貫していますが、それが「本人が感じるストレスの軽さ」に結びつくかどうかについては、研究によって結果が分かれているのが現状です。ホルモンの数値と主観的な感覚は別のものであり、この違いを区別して読む必要があります。

主要研究の一覧

研究年・掲載誌対象規模主な結果主な限界
Cheah et al.2021年・PLOS ONERCT 5件、約400名睡眠の質・入眠潜時・総睡眠時間の改善が示唆される試験数・サンプルサイズが小さい、異質性が大きい
Bachour et al.2025年・BJPsych Open研究15件、873名コルチゾール低下、主観的ストレス(PSS)改善QOL指標には有意差なし
Albalawi et al.2025年コルチゾール7件・ストレス6件、488名コルチゾール低下は有意、主観的ストレスは有意差なしエビデンスの確実性は両指標とも「低い」

安全性をめぐる論点 — 肝障害と妊娠中の注意

研究の「効果」の話と並んで、安全性に関する報告も正確に押さえておく必要があります。

学術誌Hepatology Communicationsが2023年に発表した症例シリーズでは、インドにおいて2019年1月から2022年12月の間に、アシュワガンダの単剤製品の摂取後に肝障害を発症した8例が報告されています。このうち78%が黄疸、51%がかゆみを伴っていたとされます。あわせて発表されたシステマティックレビューでは、これまでの医学文献から37例の関連する症例が確認されています。多くは投薬中止によって回復していますが、既に肝硬変などの肝疾患を抱える患者を中心に、まれに肝移植や死亡に至った重症例も報告されています。頻度としては非常にまれとされていますが、既往に肝疾患がある人は特に注意が必要とされています。

妊娠中の使用についても、慎重な扱いが求められています。動物実験では子宮収縮や流産のリスクを示唆する報告があり、米国NIH(米国立衛生研究所)やACOG(米国産科婦人科学会)は、妊娠中の安全性を裏づける十分なヒトでのデータが存在しないことを理由に、使用を避けるよう注意を呼びかけています。ヒトでの大規模な追跡研究が乏しいという評価は多くの専門機関で共通しています。

なお、これらはいずれも海外で流通する製品を前提にした研究・報告です。日本国内では前述のとおりアシュワガンダを食品として合法的に入手する手段自体が存在しないため、こうした安全性の論点は、個人輸入や海外渡航時の入手を検討する場合に特に踏まえておくべき情報といえます。

海外の「飲まない夜」とアダプトゲン、日本の現在地

海外では、アルコールを飲まない選択をする人向けのノンアルコール飲料市場で、アダプトゲンを配合した製品が急速に広がっています。ある市場調査では、アダプトゲンを配合したドリンク市場のうち、アシュワガンダを使った製品が2023年の世界売上の3割以上を占めたと報告されています。リラックスを目的に、お酒の代わりの一杯としてアダプトゲン入りのノンアルコール飲料を選ぶという文脈は、「ソバーキュリアス」の広がりとも重なる、海外の夜の過ごし方の変化の一つです。

一方、日本ではアシュワガンダそのものが食薬区分上「専ら医薬品」とされているため、海外で流通しているアシュワガンダ入りのノンアルコール飲料やサプリメントを、そのままの形で国内で合法的に製造・販売することはできません。同じ「アダプトゲン入りノンアルドリンク」というコンセプトであっても、日本で流通する製品は、L-テアニンやGABAなど別の成分を使ったものになるのが実情です。「海外で人気の成分だから」という理由だけで個人輸入品に手を伸ばす前に、この規制の違いを知っておくことは、夜の一杯を選ぶうえでも大切な前提です。ノンアルコールの選択肢全体については、大人のノンアル完全ガイドや、寝る前の一杯が睡眠に与える影響については寝酒は睡眠の質を下げるもあわせてご覧ください。CBDのように、別の成分では法規制の枠組みそのものが異なるケースもあります。合法性の考え方の違いはCBDとは?基礎知識と安全な製品の選び方で比較できます。

よくある質問

アシュワガンダは日本のドラッグストアやネット通販で買えますか?

国内で合法に販売されているサプリメントとしては入手できません。アシュワガンダ(ウィザニア)は根を含む植物体全体が厚生労働省の「専ら医薬品として使用される成分本質(原材料)リスト」に収載されており、食品・サプリメントとしての製造・販売が認められていないためです。

アシュワガンダには本当に効果があるのですか?

「効果がある」と断定できる段階ではありません。睡眠の質やコルチゾール値の低下を示唆する研究報告はありますが、多くは小規模な試験であり、主観的なストレスの軽減については研究によって結果が分かれています。研究が進行中の成分として理解するのが適切です。

海外のアシュワガンダ配合サプリを個人輸入するのは違法ですか?

自己使用目的の個人輸入自体は、数量等の条件を満たせば可能な場合がありますが、無許可で国内で転売・譲渡すれば薬機法違反となる可能性があります。個人輸入した製品は国内の品質管理基準の対象外であり、内容成分や安全性が保証されているわけではない点にも注意が必要です。

妊娠中や授乳中でも使えますか?

妊娠中の使用は避けるべきとされています。動物実験で子宮収縮や流産のリスクを示唆する報告があり、NIHやACOGなど海外の専門機関も、ヒトでの十分な安全性データが存在しないことを理由に注意を呼びかけています。

アダプトゲンとは何ですか?アシュワガンダ以外にどんな成分がありますか?

アダプトゲンとは、ストレスへの適応を助けるとされるハーブや植物由来成分の総称として使われる言葉です。L-テアニンや紅景天(こうけいてん)なども同じ文脈で語られます。カテゴリー全体の考え方と各成分の研究の現在地はアダプトゲンとは?種類と研究の現在地で解説しています。

まとめ

アシュワガンダは、海外では研究とウェルネス市場の両面で注目度が高まっている植物ですが、日本ではまず「食薬区分によって食品としての流通が認められていない」という法的な前提を知っておく必要があります。睡眠やストレスホルモンへの好ましい影響を示唆する研究は増えつつあるものの、多くはまだ規模が小さく、主観的なストレス実感への効果は研究間で結果が割れています。安全性についても、まれではあるものの肝障害の症例報告や妊娠中のリスクが指摘されており、「天然由来だから安全」と単純化できるものではありません。規制と研究の両方を正確に知ったうえで、情報として距離を置いて捉えることが大切です。

参考文献

免責事項

本記事は医療アドバイスではありません。持病がある方、服薬中・通院中の方、妊娠中・授乳中の方は、使用の可否について必ず医師にご相談ください。本記事はアシュワガンダの摂取を推奨するものではなく、日本国内における法的な位置づけと、海外で行われている研究の現状を正確に伝えることを目的としています。20歳未満の方への使用は推奨していません。