ロディオラ(和名イワベンケイ、学名Rhodiola rosea)は、北欧やロシアの寒冷地で伝統的に使われてきた植物です。「アダプトゲン」というカテゴリーで語られる成分の中でも、日本の食薬区分では非医薬品リストに収載されており、効能効果を標榜しない範囲であれば食品として合法的に入手できる数少ない存在です。同じアダプトゲンとして知られるアシュワガンダが国内では食品として扱えないのとは対照的な位置づけにあります。この記事では、この規制上の違いを踏まえたうえで、疲労やストレスに関する研究の現在地を、断定を避けながら整理します。摂取を勧める記事ではなく、規制と研究の現状を正確に知るための解説記事です。

この記事の要点

  • ロディオラ(イワベンケイ)は、厚生労働省の「医薬品的効能効果を標ぼうしない限り医薬品と判断しない成分本質(原材料)リスト」(非医薬品リスト)に、他名コウケイテンとして収載されており、効能効果を標榜しなければ食品として合法的に販売できます(2026年7月16日時点で確認)
  • 身体的疲労・精神的疲労への効果を調べたシステマティックレビューでは、結果が試験によって割れており、方法論上の限界が繰り返し指摘されています
  • ストレス関連疲労を対象にした試験では改善を報告したものがある一方、健康な人を対象にした別の試験ではプラセボ群のほうが有意に良い結果を示した例もあります
  • まれに躁状態を誘発したとする症例報告があり、降圧薬との相互作用も報告されています

ロディオラ(イワベンケイ)とは何か

ロディオラは、学名をRhodiola roseaといい、北欧・ロシア・中央アジアなどの寒冷な高地に自生するベンケイソウ科の植物です。日本語では「イワベンケイ」と呼ばれ、根の部分が伝統的に、寒冷地での体力維持や疲労対策を目的に用いられてきました。

「アダプトゲン」という概念そのものの成り立ちや歴史、他の代表的な成分との比較については、アダプトゲンとは?種類と研究の現在地で詳しく解説しています。ロディオラは、この記事の中でも、アダプトゲンという言葉を体系化した旧ソ連の研究者たちが早くから注目していた植物の一つとして位置づけられています。

日本でロディオラは合法なのか — アシュワガンダとの対比

ここが、この記事でもっとも正確に伝えたい点です。

日本では、ある原材料が「食品」として販売できるか「医薬品」として扱われるかを、厚生労働省が定める食薬区分という仕組みで判断しています。この区分には大きく分けて、食品としての流通が認められない「専ら医薬品として使用される成分本質(原材料)リスト」と、医薬品的な効能効果を標榜しない範囲であれば食品としての流通が認められる「医薬品的効能効果を標ぼうしない限り医薬品と判断しない成分本質(原材料)リスト」(非医薬品リスト)があります。

厚生労働省が公開している非医薬品リストの植物由来物一覧を確認すると、次の記載があります(2026年7月16日時点で確認)。

名称他名等部位等
イワベンケイコウケイテン地上部・地下部を含む植物の全体

つまりロディオラ(イワベンケイ)は、医薬品的な効能効果(「疲労が回復する」「ストレスが軽減する」といった標榜)を行わない範囲であれば、根を含む植物体全体を食品・サプリメントの原材料として国内で合法的に製造・販売できる位置づけにあります。

この点は、アシュワガンダの研究を読むで詳しく解説したアシュワガンダの状況と対照的です。アシュワガンダ(ウィザニア)は2013年の食薬区分改正により「専ら医薬品」リストに移され、含有成分ウィザフェリンAの毒性の強さを理由に、国内では食品として製造・販売できなくなりました。一方でロディオラは、この「専ら医薬品」リストには含まれておらず、非医薬品リストの側に収載されています。海外のウェルネス市場でアダプトゲンとして注目される成分の中で、「日本国内でも合法に食品として入手できる筆頭候補」という位置づけにあるのがロディオラだと言えます。

ただし、非医薬品リストに収載されているのはあくまで「食品として扱ってよい原材料である」ということであり、「効果が確認されている」ことを意味するわけではありません。また効能効果を標榜した販売は、収載の有無にかかわらず薬機法上の問題になり得ます。さらに食薬区分の対象品目は随時見直される可能性があるため、購入前に最新の公的情報を確認することをおすすめします。

研究の現在地(1) 身体的疲労・精神的疲労への効果

海外では、ロディオラの摂取と疲労指標の関係を調べたランダム化比較試験が複数行われ、それらを統合したシステマティックレビューも発表されています。

Hungらが2011年に学術誌Phytomedicineに発表したシステマティックレビューでは、11件のランダム化比較試験(身体的パフォーマンスに関する6件、精神的パフォーマンスに関する4件、精神保健疾患のある人を対象にした2件)を検討した結果、「身体的パフォーマンス・精神的パフォーマンス・特定の精神保健状態に有益な効果を持つ可能性がある」と報告されています。ただし著者らは、対象となった11件のうち、研究の質の目安となるJadadスコアで一定基準(3点以上)を満たしたのは5件にとどまること、個々の試験について独立した追試(再現研究)が乏しいことを限界として明記しています。

Ishaqueらが2012年にBMC Complementary and Alternative Medicine誌に発表した別のシステマティックレビューでは、11件の試験(ランダム化比較試験10件・対照臨床試験1件、参加者計446名)を対象に、身体的疲労を扱った6試験のうち効果を報告したのは2試験のみ、精神的疲労を扱った5試験のうち効果を報告したのは3試験でした。この分析の著者らは、対象となったすべての試験に何らかのバイアスのリスクや報告上の欠陥があることを指摘し、「ロディオラの効果に関する研究結果は一貫しておらず、矛盾している」と結論づけています。

つまり、身体的・精神的疲労への効果については、「有望な報告がある」段階にとどまり、研究間で結果が一致していないというのが正確な現状です。

研究の現在地(2) ストレス関連疲労への効果 — 結果が分かれる2つのRCT

ストレスに関連した疲労を対象にした試験では、対照的な結果を示す報告が存在します。この違いを具体的に見ておくことは、「ロディオラは効く」という単純化を避けるうえで重要です。

Olssonらが2009年に学術誌Planta Medicaに発表したランダム化二重盲検プラセボ対照試験では、ストレス関連疲労のある60名を、標準化抽出物SHR-5(1日576mg)を摂取する群とプラセボ群に無作為に分け、6週間の摂取後を比較しています。主要評価項目としたPines燃え尽き尺度のスコアはロディオラ群で有意に改善し(p=0.047)、注意力を測るCCPT IIテストの複数の指標や、覚醒時のコルチゾール反応の低下についても、ロディオラ群で好ましい方向の結果が報告されました。

一方、Punjaらが2014年にPLOS ONE誌に発表した、カナダの看護学生を対象にしたランダム化二重盲検プラセボ対照試験では、異なる結果が示されています。臨床実習の交代勤務に初めて従事する看護学生48名を登録し(分析対象40名、ロディオラ群21名・プラセボ群19名)、1日364mgのロディオラまたはプラセボを42日間摂取してもらったところ、活力を測るRAND-36の下位尺度ではロディオラ群がプラセボ群と比べて有意に悪化し(p=0.011)、疲労感を測る視覚アナログスケール(VAS-F)でもプラセボ群のほうが有意に良い結果を示しました(p=0.015)。著者らは、目標としていたサンプルサイズ(64名)に届かなかったことや、用量が十分でなかった可能性を限界として挙げています。

この2つの試験は、対象者(ストレス関連疲労を訴える成人 対 健康な看護学生)や評価尺度が異なるため単純比較はできませんが、「ロディオラを飲めば疲労が改善する」と一様に言えるわけではないことを示す重要な材料です。

なお、対照群を置かない予備的な研究としては、Kasperらが2017年にNeuropsychiatric Disease and Treatment誌に発表した、燃え尽き症状のある117名を対象とした非盲検・多施設試験があり、12週間の摂取後に疲労感や集中力低下の軽減が報告されています。ただし著者ら自身が、対照群がないことを明確な限界として述べており、予備的な結果にとどまります。

主要研究の一覧

研究年・掲載誌デザイン・規模主な結果主な限界
Hung et al.2011年・Phytomedicineシステマティックレビュー、RCT 11件身体的・精神的パフォーマンス等への有益な可能性を示唆11件中Jadadスコア3点以上は5件、独立した追試が乏しい
Ishaque et al.2012年・BMC Complement Altern Medシステマティックレビュー、RCT10件+CCT1件、446名身体的疲労6試験中2試験、精神的疲労5試験中3試験で効果を報告全試験にバイアスのリスクまたは報告上の欠陥、結果は矛盾
Olsson et al.2009年・Planta MedicaRCT、60名、6週間Pines燃え尽き尺度が有意に改善(p=0.047)、コルチゾール反応低下単一施設、対象はストレス関連疲労のある成人に限定
Punja et al.2014年・PLOS ONERCT、看護学生40名、42日間活力(p=0.011)・疲労VAS(p=0.015)ともプラセボ群が有意に良好目標サンプルサイズ未達、用量が不十分だった可能性

安全性をめぐる論点 — 躁状態の症例報告と相互作用

研究の「効果」の話と並んで、安全性に関する情報も正確に押さえておく必要があります。

米国NIH傘下の国立補完統合衛生センター(NCCIH)は、ロディオラについて「健康関連の目的での有用性を判断するには、信頼できるエビデンスが十分でない」としたうえで、安全性については「12週間程度までの使用はおそらく安全」としつつ、めまい・頭痛・不眠・口の渇きまたは逆に唾液の増加などが副作用として起こりうると案内しています(2025年4月更新)。また降圧薬の一種であるロサルタンとの相互作用が報告されていることにも触れています。

まれな事例として、Primary Care Companion for CNS Disorders誌に2022年に発表された症例報告では、日常的に筋力トレーニングを行っていた58歳の男性が、推奨量の3倍のロディオラを摂取した後、大声を出す・物を壊すといった興奮状態と頻脈(心拍数128/分)、多弁・誇大的な思考内容を呈し、救急搬送された例が報告されています。鎮静と経過観察により2日以内に症状は消失したとされていますが、著者らはこれを、ロディオラの摂取に関連して躁状態が生じた医学文献上初めての報告例と位置づけています。摂取量の設計や、双極性障害の既往がある人での使用については、特に慎重な判断が必要です。

妊娠中・授乳中の安全性についても、十分な情報が存在しないとされています。持病がある方や服薬中の方は、自己判断で摂取を始めず、事前に医師・薬剤師に相談することが重要です。

「飲まない夜」とロディオラ、日本で買えるという現在地

海外では、アルコールを飲まない選択をする人向けのノンアルコール飲料やウェルネス系サプリメントで、アダプトゲンを配合した製品が広がっています。前述のとおり、日本ではアシュワガンダを主成分とする製品を食品として合法的に販売することはできませんが、ロディオラは非医薬品リストに収載されているため、効能効果を標榜しない形であれば、国内でもサプリメントや飲料の原材料として流通させることができます。海外で人気のアダプトゲン全般について、日本で実際に合法に入手できる成分・できない成分を整理した内容は、日本で買えるアダプトゲンガイドでまとめています。

ただし「合法に買える」ことと「効果が確立している」ことは別の話です。本記事で見てきたとおり、ロディオラの疲労・ストレスへの効果は研究間で結果が割れており、断定できる段階にはありません。話題性や規制上の位置づけだけで選ぶのではなく、研究の現在地を踏まえたうえで、情報として距離を置いて捉える姿勢が大切です。「アダプトゲン」と、集中力を目的に語られることの多い「ヌートロピック」という言葉が何を指し分けているのかについては、アダプトゲンとヌートロピックの違いで整理しています。お酒を飲まない選択肢全体を検討している方は、ソバーキュリアスガイドもあわせてご覧ください。

よくある質問

ロディオラは日本のドラッグストアやネット通販で買えますか?

効能効果を標榜しない形であれば、国内でも食品・サプリメントとして合法的に流通しています。ロディオラ(イワベンケイ)は厚生労働省の非医薬品リストに収載されており、アシュワガンダのように「専ら医薬品」に分類されている成分とは位置づけが異なります。ただし個別の製品が国内の品質基準を満たしているかは、購入時に成分表示等で確認することをおすすめします。

ロディオラには本当に効果があるのですか?

「効果がある」と断定できる段階ではありません。ストレス関連疲労を対象にした試験で改善を報告した例がある一方、別の試験ではプラセボ群のほうが良い結果を示した例もあり、システマティックレビューでも研究間の結果が一致していません。研究が進行中の成分として理解するのが適切です。

ロディオラとアシュワガンダはどちらが良いですか?

どちらが優れているかを判断できるだけの直接比較データはありません。日本国内での入手可能性という点ではロディオラに分があります(アシュワガンダは食品として販売できません)が、研究の蓄積量や結果の一貫性は成分ごとに異なるため、単純な優劣では語れません。それぞれの規制と研究の現在地を個別に確認することをおすすめします。

妊娠中や授乳中でも使えますか?

妊娠中・授乳中の安全性については十分なデータがないとされています。使用を検討する場合は、自己判断せず必ず事前に医師に相談してください。

服薬中でも安全に摂取できますか?

降圧薬ロサルタンとの相互作用が報告されているほか、まれに躁状態を誘発したとする症例報告もあります。持病で通院中の方や服薬中の方は、自己判断で摂取を始めず、医師・薬剤師に確認することをおすすめします。

まとめ

ロディオラ(イワベンケイ)は、日本の食薬区分において非医薬品リストに収載されており、効能効果を標榜しなければ食品として合法的に入手できるという点で、アシュワガンダとは異なる位置づけにあります。一方で、疲労やストレスへの効果に関する研究は、システマティックレビューの段階でも結果が一貫しておらず、改善を報告した試験もあれば、プラセボ群のほうが良い結果を示した試験もあります。安全性についても、おおむね良好とされる一方でまれな躁状態の症例報告や薬剤との相互作用が指摘されており、「合法に買えるから安心」と単純化できるものではありません。規制上入手しやすいことと、効果が確立していることは別の問題として、切り分けて捉えることが大切です。

参考文献

免責事項

本記事は医療アドバイスではありません。ロディオラの効果には研究段階のものが多く、特定の症状の治療や予防を目的とした情報ではありません。持病がある方、服薬中・通院中の方、妊娠中・授乳中の方は、使用の可否について必ず医師にご相談ください。国内での成分の取り扱いは食薬区分の見直しにより変わる可能性があるため、購入前に最新の公的情報をご確認ください。20歳未満の方への使用は推奨していません。