ヤングケアラーというと、障がいや病気のある家族の介護をイメージする人が多いかもしれませんが、こども家庭庁が実施した実態調査では「アルコール・薬物・ギャンブルなどの問題のある家族に対応している」ことも、ヤングケアラーの典型的な状況の一つとして数えられています。学校が把握しているヤングケアラーのうち、この状況に当てはまる子どもは中学校で11.1%、全日制高校で16.1%、定時制高校では31.6%にのぼります。この記事では、家庭内の飲酒問題が子どもにどんなケアの役割を負わせているのかを、公的な実態調査の数値をもとに整理し、子ども自身・支援職(教員・福祉職)の双方が使える相談先までまとめます。

この記事の要点

  • こども家庭庁の定義でヤングケアラーとは、家族の介護その他の日常生活上の世話を過度に行っている子ども・若者を指し、令和6年6月施行の子ども・若者育成支援推進法で支援対象として明記されました
  • 学校が把握しているヤングケアラーのうち「アルコール・薬物・ギャンブルなどの問題のある家族に対応している」子どもは、中学校で11.1%、全日制高校で16.1%です(こども家庭庁令和3年度調査)
  • 大学生を対象にした自己申告調査では、世話をしている母親の状況として「依存症(疑い含む)」を挙げた人が5.7%、父親では8.4%でした
  • 世話をしている家族がいると回答した中学2年生は5.7%で、世話を始めた平均年齢は9.9歳です
  • 世話について相談した経験が「ある」と回答したのは2〜3割にとどまり、多くの子どもが一人で抱え込んでいます

ヤングケアラーとは — アルコール問題は「想定される状況」の一つ

こども家庭庁は、ヤングケアラーを「家族の介護その他の日常生活上の世話を過度に行っていると認められる子ども・若者」と定義しています。令和6年6月に施行された子ども・若者育成支援推進法により、国・地方公共団体が支援すべき対象として法律上に明記されました。

こども家庭庁が学校向けに実施した調査の選択肢には、ヤングケアラーと思われる子どもの状況として「障がいや病気のある家族に代わり家事をしている」「家族の代わりに幼いきょうだいの世話をしている」などと並んで、「アルコール・薬物・ギャンブルなどの問題のある家族に対応している」という項目が設けられています。家庭内の飲酒問題は、介護や病気の世話と同じ枠組みで、子どもに重い負担を負わせうる状況として公的に位置づけられています。

数字で見る、アルコール・薬物・ギャンブル問題とヤングケアラー

こども家庭庁が令和3年度に実施した調査(株式会社日本総合研究所、令和4年3月報告書)は、小学校・中学校・全日制高校・定時制高校・通信制高校それぞれの教職員に、ヤングケアラーと思われる子どもの状況を尋ねています。「アルコール・薬物・ギャンブルなどの問題のある家族に対応している」と回答された割合は、学校種によって大きな差があります。

学校種該当する子どもの割合
小学校3.4%
中学校11.1%
全日制高校16.1%
定時制高校31.6%
通信制高校28.6%

学年が上がるほど、また定時制・通信制高校ほど割合が高くなる傾向がうかがえます。これは、依存や嗜癖の問題が発覚したり深刻化したりする時期が、子どもの発達段階と重なりやすいことや、家庭の状況が進路選択にも影響していることを示唆しています。

同じ調査を子ども本人に尋ねた大学生向けアンケートでは、世話をしている(していた)母親の状況として「依存症(アルコール依存症、ギャンブル依存症など)(疑い含む)」を挙げた人が5.7%(n=349)、父親では8.4%(n=202)でした。小学6年生向けの調査でも、世話を必要としている父母の状況として「依存症(疑い含む)」が2.9%(n=138)挙げられています。学校側の把握と子ども自身の申告、どちらの調査でも、飲酒や依存の問題がケアの背景にあるケースは一定数存在することが確認できます。

子どもは家庭でどんな役割を担っているのか

こども家庭庁の調査で示されているヤングケアラーの状況には、家事(買い物・料理・洗濯・掃除など)、幼いきょうだいの世話、目を離せない家族の見守りや声かけ、家族の通訳、感情面のサポート(愚痴を聞く・話し相手になる)、金銭管理や薬の管理などが含まれます。家庭内に飲酒問題がある場合、これらに加えて、酔った家族への対応そのものや、もう一方の親の情緒的な支え役を担うことも少なくありません。

こうした役割は、家庭という環境の中で子どもに割り当てられたものであり、本人の性格や頑張りの問題ではないという理解が重要です。子どもが担わされやすい役割の背景や、なぜこうした状況が生まれやすいのかについては、「親が飲む家庭」で育つとはで詳しく整理しています。

世話を始める年齢と、その負担

こども家庭庁の令和2年度調査(三菱UFJリサーチ&コンサルティング株式会社、令和3年3月報告書)によれば、世話を始めた年齢は中学2年生で平均9.9歳、全日制高校2年生で平均12.2歳です。世話をしている頻度は「ほぼ毎日」が最も多く、中学2年生45.1%、全日制高校2年生47.6%にのぼります。平日1日あたりに世話に費やす時間は、中学2年生で平均4.0時間、全日制高校2年生で平均3.8時間でした。

世話に費やす時間が長くなるほど、負担感も比例して大きくなる傾向があります。平日の世話時間が7時間以上になると、「身体的にきつい」と感じる割合が26.0%、「精神的にきつい」が34.2%、「時間的余裕がない」が42.5%となり、3時間未満の場合と比べて大幅に高くなっています。健康状態が「よくない・あまりよくない」と回答した割合も、世話の時間が3時間未満では7.6%であるのに対し、7時間以上では26%に達しています。

なぜ相談できないのか

同じ令和2年度調査では、世話について相談した経験が「ある」と回答したのは、中学2年生で21.6%、全日制高校2年生で23.5%にとどまり、「ない」がそれぞれ67.7%、64.2%を占めています。相談したことがない理由としては「誰かに相談するほどの悩みではない」が最も多く(中学2年生74.5%)、次いで「相談しても状況が変わるとは思わない」が挙げられています。

世話をしている家族が父母である場合には、「相談できる人が身近にいない」「家族のことを知られたくない」と回答する割合が、きょうだいや祖父母を世話している場合より高い傾向も報告されています。家庭内に飲酒問題があること自体を、恥ずかしいことだと感じて口にできない子どもは少なくないと考えられます。相談しても状況が変わらないという諦めと、家庭のことを外に出したくないという遠慮の両方が、子どもを孤立させやすい構造になっています。

学校・支援職の視点から見えること

前述の令和2年度調査は、要保護児童対策地域協議会に通告されたケースについても調べています。世話を必要としている家族の状況として「精神疾患、依存症(疑いも含む)」を挙げた割合は、通告されたケースで38.7%、通告するほどではないが学校以外の外部支援につないだケースで26.0%と、いずれも最も高い区分でした。これは、精神疾患や依存の問題を抱える家族のケアが、支援の必要性が特に高いと判断されやすいケースであることを示しています。

学校生活での兆候としては、欠席・遅刻や早退が多い、持ち物の忘れ物や提出物の遅れが多い、宿題や課題ができていないことが多いといった状態が、世話をしている家族がいる子どもに高い割合で見られると報告されています。こうした兆候は本人の怠けではなく、家庭でのケア負担のサインである可能性があります。

相談先 — 子ども自身も、支援職も使える窓口

家庭内の飲酒問題とケアの負担が重なっていると感じたら、次のような窓口があります。

介護と飲酒の問題が同時に重なっている家庭では、介護疲れとお酒で紹介している制度も参考になります。

子ども時代の経験は、おとなになってからも続くことがある

ヤングケアラーとしての経験は、進学や就職といった人生の選択に影響することがあるだけでなく、大人になってからの生きづらさとして表れることもあります。子ども時代にこうした環境で育った経験をどう理解すればいいかは、アダルトチルドレンとは?で整理しています。

よくある質問

ヤングケアラーは何歳までを指しますか?

法律上の支援対象は主に18歳未満の子どもですが、ケアの負担が大学生活や就職活動に影響している可能性もあることから、こども家庭庁は大学生も対象に含めた実態調査を行っています。年齢で機械的に区切られるものではなく、ケアの継続的な負担そのものが問題の本質です。

家庭にお酒の問題があることを、子ども自身が自覚していないこともありますか?

はい。物心ついたときから続いている状況の場合、それが特別なことだと気づかないまま「普通の家庭」として受け止めている子どもは少なくありません。学校生活での欠席・遅刻の多さや、持ち物の忘れ物の多さなどが、周囲が気づくきっかけになることがあります。

学校の先生に話しても大丈夫ですか?

はい。学校のスクールカウンセラーやスクールソーシャルワーカーは、家庭のことを話せる相手の一つです。学校側から要保護児童対策地域協議会などの外部支援につながるケースも一定数あります。家庭のことを知られたくないと感じる場合は、児童相談所や24時間子供SOSダイヤルのような、学校を介さない窓口を使うこともできます。

支援職(教員・福祉職)は何に注意すればいいですか?

欠席・遅刻の多さ、忘れ物や提出物の遅れ、宿題ができていない状態などは、本人の怠けではなくケア負担のサインである可能性があります。こども家庭庁の調査では、世話をしている家族がいる子どもにこうした傾向が高い割合で見られることが報告されています。本人が「相談するほどの悩みではない」と感じていることが多いため、子ども側からの申告を待つだけでなく、日常の様子から早めに気づく視点が求められます。

まとめ

家庭内の飲酒問題は、こども家庭庁の実態調査でヤングケアラーの典型的な状況の一つとして位置づけられており、学校が把握しているケースでは中学校で11.1%、全日制高校で16.1%にのぼります。世話は平均9〜12歳頃から始まり、ほぼ毎日、平日4時間前後続くことも珍しくなく、負担の大きさに比例して身体的・精神的なきつさも増していきます。それにもかかわらず相談した経験がある子どもは2〜3割にとどまり、多くが「相談するほどの悩みではない」「家族のことを知られたくない」と感じて一人で抱え込んでいます。子ども自身にも支援職にも使える相談窓口は複数あり、早く気づき、つながることが負担の軽減につながります。

参考文献

免責事項

本記事は一般的な情報提供を目的としており、医療・心理療法上のアドバイスではありません。家族の飲酒に悩んでいる場合や、ご自身の心身の負担が大きいと感じる場合は、保健所・精神保健福祉センター・アルコール専門医療機関・家族向けの自助グループなどへのご相談をご検討ください。子どもの安全に関わる緊急性の高い状況では、児童相談所虐待対応ダイヤル「189」へご連絡ください。