「専門機関や当事者会に相談してください」と言われても、当事者会が具体的にどんな場なのかが分からなければ、足を運ぶ決心はつきにくいものです。日本でお酒の自助グループというと、AA(アルコホーリクス・アノニマス)や断酒会(全日本断酒連盟)の名前を聞いたことがある人は多くても、両者の違いを正確に説明できる人は多くありません。海外ではSMART Recoveryという認知行動療法をベースにした団体も知られています。この記事では、それぞれの団体の公式サイトで確認できる情報にもとづいて、成り立ちと参加の実際を整理します。どれか一つを推奨するものではなく、自分に合いそうな場を選ぶための材料として読んでください。
この記事の要点
- AA・断酒会は日本国内に会場があり公式サイトから探せますが、SMART Recoveryは国内の日本語窓口を公式サイト上で確認できませんでした
- 匿名か実名か、家族が参加できるかは団体によって大きく異なります
- 多くの団体で予約や入会手続きなしに見学から参加でき、指名されても話さなくてよい運用があります
- 「言いっぱなし聞きっぱなし」という原則はAA・断酒会に共通しています
- 自助グループは医療機関の代わりではなく、他の相談先と併用するものです
自助グループには何がある? 3つの団体の成り立ち
自助グループとは、専門家が主導するのではなく、同じ経験を持つ人同士が体験を分かち合う場のことです。お酒に関するものとして名前が挙がる団体は主に次の3つです。
AA(アルコホーリクス・アノニマス)は、1935年に米国で始まった自助グループです。日本では1975年に東京でミーティングが開かれたのが始まりとされています。公式サイトでは「AAのメンバーになるために必要なことは、飲酒をやめたいという願いだけ」「会費や料金は必要ない」と説明されています。
断酒会(公益社団法人全日本断酒連盟)は、1958年に日本で生まれた自助組織です。公式サイトは「酒害者による、酒害者のための自助組織」と紹介しており、現在は会員本人とその家族が参加しています。
SMART Recoveryは、1994年に米国で始まった団体です。公式サイトによれば、認知行動療法とやる気を引き出す面接技法にもとづく「4-Point Program」(動機づけの構築・維持、衝動への対処、思考や感情・行動の管理、バランスの取れた生活)を軸に進めます。現在36カ国・16言語で展開されていますが、依存症対策全国センター(国立病院機構久里浜医療センター運営)が紹介する国内の自助グループ一覧にSMART Recoveryは含まれておらず、日本語での定例ミーティングや国内窓口の存在は公式情報から確認できませんでした。
3団体の主な違いを一覧にすると、次のようになります。
| 団体 | 発足 | 匿名/実名 | 費用 | 家族の参加 | 進め方の特徴 | 公式サイト |
|---|---|---|---|---|---|---|
| AA(アルコホーリクス・アノニマス) | 1935年 米国/1975年 日本 | 匿名が基本(ファーストネームやニックネームで参加) | 入会手続き・会費なし(メンバー個人の献金は任意、日本では年間上限あり) | 本人向けが中心。オープンミーティングは誰でも参加可 | 言いっぱなし聞きっぱなし、12ステップに沿って進行 | aajapan.org |
| 断酒会(公益社団法人全日本断酒連盟) | 1958年 日本 | 実名が基本(出席表に氏名・連絡先を記入する運用を確認) | 所属する地域の断酒会により異なる(例: 愛知県断酒連合会は入会金1,000円程度・月会費2,500円) | 会員の家族も例会に参加し、体験を話す | 言いっぱなし聞きっぱなし、指名されても挨拶だけでも可 | dansyu-renmei.or.jp |
| SMART Recovery | 1994年 米国 | 匿名性についての明確な方針は公式サイトで確認できず、出席記録は残さない方針 | ミーティング・オンラインサービスは無料(献金は要請ベース) | 家族参加についての記載は確認できず | 認知行動療法にもとづく4つのポイントに沿って進行 | smartrecovery.org |
匿名か実名か、家族は参加できるか — 具体的に何が違う?
まず参加者の名乗り方が大きく異なります。AAの公式サイトは「メンバーが無名であることはAAのスピリチュアルな基礎」と位置づけており、公共の場でメンバーの氏名を明かすことは避けられています。一方、神奈川県断酒連合会の案内では「氏名と連絡先を出席表に記入します」とされており、断酒会は実名参加が基本です。
家族の参加可否も対照的です。神奈川県断酒連合会は「断酒会の例会には会員の家族も参加し、酒害体験を話します」と説明しており、断酒会は当事者と家族がともに体験を語り合う場として設計されています。AAは本人向けのミーティングが中心ですが、オープンミーティングであれば家族や関心のある人も参加できます。
費用の考え方も違います。AAは入会手続きも会費もなく、公式サイトは「メンバー以外からは、寄付を求めることも受け取ることもしていない」と明記しています。断酒会は所属する地域の断酒会によって会費が定められており、愛知県断酒連合会は入会金1,000円程度・月会費2,500円としています。地域によって金額は異なるため、参加を検討する断酒会に直接確認するのが確実です。
宗教性についても公式の説明があります。AAの序文には「AAはどのような宗教、宗派、政党、組織、団体にも縛られていない」と明記されており、12ステップに出てくる「ハイヤーパワー」が特定の宗教の神を指すものではなく、何を自分より大きな力とするかは各人の解釈にゆだねられる、という立場です。
進め方については、AA・断酒会のどちらも「言いっぱなし聞きっぱなし」という原則を採っています。話している間は他の参加者が意見や批評を挟まず、聞いたことをその場に置いて帰るという考え方です。断酒会の公式サイトは「体験談は言いっぱなしの聴きっぱなし。この部屋で聞いたことはこの部屋に置いていく」と説明しています。SMART Recoveryは4-Point Programという構造化されたプログラムに沿って進める点が異なり、ファシリテーターが認知行動療法の枠組みを使って進行します。
初めて行くとき何が起きる? 予約・飲酒状態・沈黙の自由
初参加のハードルを下げる情報として、公式サイトで確認できることを整理します。
AAの公式サイトは、オープンミーティングについて「アルコホーリクス・アノニマスに興味のある方ならどなたでも参加できる」としており、クローズドミーティングは「アルコホーリクだけが参加できるもの」と説明しています。初めて参加する場合は、会場や当日の流れについて、事前に地域のAAサービスオフィスに問い合わせることが案内されています。
断酒会について、神奈川県断酒連合会は「参加に際しての事前の申し込みは不要です」「最初は見学でも、相談でも、OKです」「酒をやめたい気持ちさえあれば誰でも参加できます」としています。発言についても「指名されたら、酒害体験をお話しください。発言したくない方は、挨拶だけでもOK」と説明されており、参加してすぐに体験談を話すことを強制されるわけではありません。
飲酒している状態でも参加できるかどうかについて、AA・断酒会いずれの公式サイトにも一律の規定は見当たりませんでした。会場や地域によって対応が異なる可能性があるため、不安がある場合は事前に問い合わせるか、後述する家族向けの窓口や医療機関への相談から始める方法もあります。すでに手の震えや発汗などの離脱症状が出ている場合は、自助グループより先に医療機関につながることが優先されます。
オンライン開催については、AA・断酒会のいずれも地域によってZoom等を使ったオンラインミーティングの案内があることを、それぞれの関連ページで確認できます。開催の有無や頻度は会場によって異なるため、参加を検討する地域のミーティング一覧で確認してください。
どこで探せばいい?
会場や開催日時は地域ごとに異なり、変動します。AAは公式サイトの「各地のAAミーティング会場」ページ、断酒会は全日本断酒連盟や都道府県の断酒連合会の公式サイトから、それぞれ最新の会場情報を探せます。どこから手をつければいいか分からない場合は、お酒の相談先マップで紹介している精神保健福祉センターや保健所からも、地域の自助グループを案内してもらえます。
家族のための場は別にある
断酒会の例会は家族も参加できる場ですが、家族だけで参加できる専用の場もあります。飲酒問題を抱える人の配偶者・親・友人などのためのアラノン(Al-Anon)は、当事者本人が飲酒をやめていなくても家族だけで参加できるグループです。家族としてどう関わればいいかをまとめた記事は家族の相談ガイドで扱っています。
自分に合わなかったらどうする?
一つの団体の雰囲気が合わなかったとしても、それは自助グループそのものが役に立たないという意味ではありません。AA・断酒会・SMART Recoveryは前提としている考え方も進め方も異なるため、別の団体や別の会場を試してみることも選択肢の一つです。複数を並行して利用している人もいます。うまくいかない日が続いたときの考え方については飲んでしまった翌日の立て直し方で扱っています。
自助グループは医療の代わりになる?
自助グループは、専門的な診断や治療を行う医療機関の代わりではありません。体調面の不安がある場合や、飲酒量を減らしたいけれど急にやめるのが不安な場合は、減酒外来を含む医療機関との併用を検討する価値があります。医療機関の選び方は減酒外来・専門医療機関ガイドで整理しています。
よくある質問
断酒会とAAは何が違いますか?
もっとも大きな違いは匿名か実名かという点です。AAはファーストネームやニックネームでの参加が基本で入会手続きや会費もありませんが、断酒会は出席表に氏名・連絡先を記入する運用で、地域の断酒会が定める会費もあります。断酒会は会員の家族も例会に参加しますが、AAは本人向けのミーティングが中心です。
SMART Recoveryは日本でも参加できますか?
SMART Recoveryの公式サイトは36カ国・16言語での展開を紹介していますが、日本語での定例ミーティングや国内窓口の存在は、依存症対策全国センターが紹介する国内の自助グループ一覧を含め、公式情報からは確認できませんでした。参加を検討する場合は、公式サイトのミーティング検索で言語や開催地域の条件を確認してください。
お酒を飲んでいる状態でも参加できますか?
AA・断酒会いずれの公式サイトにも一律の規定は見当たりませんでした。会場や地域によって対応が異なる可能性があるため、不安な場合は事前に問い合わせることをおすすめします。手の震えや発汗などの離脱症状がある場合は、自助グループより先に医療機関への相談を優先してください。
初めて行っても話さなくていいですか?
断酒会については、神奈川県断酒連合会が「指名されたら酒害体験をお話しください。発言したくない方は、挨拶だけでもOK」と案内しています。AAについても、聞くことを中心にした参加のしかたが認められています。
会費はかかりますか?
AAは入会手続きも会費もなく、メンバー個人からの献金は任意です。断酒会は所属する地域の断酒会によって会費が定められており、たとえば愛知県断酒連合会は入会金1,000円程度・月会費2,500円としています。SMART Recoveryはミーティングとオンラインサービスを無料で提供し、献金は要請ベースとしています。
まとめ
AA・断酒会・SMART Recoveryは、成り立ちも匿名性・実名性も、家族の参加可否も、進め方も異なります。AAは匿名参加が基本で会費がなく、断酒会は実名参加で家族もともに体験を語り合い、SMART Recoveryは認知行動療法にもとづくプログラムで進めますが国内の窓口は確認できていません。どの団体も優劣をつけられるものではなく、まずは見学や相談から始めて、自分に合いそうな場を探すことができます。合わなければ他の団体や、精神保健福祉センターなどの行政・医療の窓口を併用することも選択肢です。
参考文献
- AA日本ゼネラルサービス公式サイト(https://www.aajapan.org/)
- AA日本ゼネラルサービス「AAは初めてですか?」(https://aajapan.org/introduction/)
- AA日本ゼネラルサービス「AA序文」(https://aajapan.org/aboutaa/)
- AA日本ゼネラルサービス「各地のAAミーティング会場」(https://aajapan.org/meetings/)
- AA関西地域情報「ミーティングの種類」(https://www.aa-kco.org/about-meetings/)
- 公益社団法人全日本断酒連盟公式サイト(https://www.dansyu-renmei.or.jp/)
- 全日本断酒連盟「酒害体験を聴く、そして話す」(https://www.dansyu-renmei.or.jp/reikai/index.html)
- 全日本断酒連盟「酒は一人ではやめられない、仲間が必要!」(https://www.dansyu-renmei.or.jp/susume/danshu3.html)
- 全日本断酒連盟「断酒のすすめ」(https://www.dansyu-renmei.or.jp/susume/danshu4.html)
- 愛知県断酒連合会「断酒会ってなに?Q&A」(https://aichi-danshu.jimdofree.com/断酒会の紹介/断酒会ってなに-q-a/)
- 神奈川県断酒連合会「断酒会とは」(https://www.shindanren.com/aboutdansyukai)
- SMART Recovery公式サイト「About Us」(https://smartrecovery.org/about-us/)
- SMART Recovery International「Find a Meeting」(https://www.smartrecoveryinternational.org/meetings)
- 依存症対策全国センター(国立病院機構久里浜医療センター運営)「自助グループのご紹介」(https://www.ncasa-japan.jp/you-do/other/self-help-groups/)
医療機関への相談について
自助グループは専門的な診断や治療を行う医療機関の代わりではありません。手の震え・発汗・幻覚・強い不安などの離脱症状がある場合は、自己判断で参加を検討する前に医療機関にご相談ください。本記事はいずれかの団体を推奨するものではなく、参加や治療方針については医師・専門機関にご確認ください。
免責事項
本記事は一般的な情報提供を目的としており、診断や治療方針を示すものではありません。長期間・大量の飲酒が続いている場合、自己判断で急にお酒を断つと離脱症状が現れることがあります。手の震え・発汗・強い不安・けいれんなどがみられる場合は、自己判断で進めず医療機関にご相談ください。相談先には保健所・精神保健福祉センター・アルコール専門医療機関(減酒外来)などがあります。