ギャンブルや浪費と飲酒は、それぞれ別の問題として現れることもあれば、同じ人の中で重なって現れることもあります。国の実態調査でも、ギャンブルの問題を主な理由に相談機関を訪れた人・家族のうち、一定割合がアルコールの問題も併せ持っていることが確認されています。この記事では、ギャンブル・浪費と飲酒がなぜ重なりやすいのかを公的な調査や研究から整理し、当事者を責めることなく、専門機関や相談先につなぐための情報をまとめます。

この記事の要点

  • 国の実態調査では、ギャンブルの問題で相談機関を利用した人・家族のうち、アルコールの問題も併せ持つ人が一定割合いることが確認されている
  • ギャンブル障害は、米国の診断基準DSM-5でアルコール・薬物の依存症と同じカテゴリーに位置づけられている
  • 飲酒がその場の判断に影響を与え、目先の刺激を優先しやすい状態をつくることが、重なりやすさの一因として指摘されている
  • 複数の問題が重なっている場合、どちらか一方だけでなく両方に対応できる窓口に相談することが望ましいとされる
  • 相談は本人からだけでなく家族からも可能で、無料・匿名で対応する窓口がある

ギャンブル・浪費と飲酒はどのくらい重なっているのか

独立行政法人国立病院機構久里浜医療センターは、厚生労働省の補助を受け、ギャンブル等依存症対策基本法第23条にもとづく実態調査として「令和5年度 ギャンブル障害及びギャンブル関連問題の実態調査」を実施しました。このうち、依存の問題で相談機関を利用した当事者・家族を対象にしたアンケート(令和5年9月1日〜令和6年3月31日、全国の精神保健福祉センター65か所・保健所54か所を通じて実施)では、相談の原因となった依存の種類が次のように集計されています。

回答者ギャンブルの問題アルコールの問題
当事者本人(有効回答288件)64.9%17.0%
家族(有効回答382件)58.1%25.1%

いずれも複数回答の項目で、割合は有効回答数を母数に算出されています。「家族」の行は家族自身の依存ではなく、家族が相談した当事者(相談対象となった本人)の依存の種類を指します。当事者本人の相談では、原因の種類としてギャンブルの問題に次いでアルコールの問題が多く挙げられており、家族からの相談ではその割合はさらに高くなっています。この数値は、二つの問題に因果関係があることを示すものではなく、あくまで全国の相談機関を利用した人たちの間で、ギャンブルとアルコールという二つの問題が同時に語られることが珍しくないという実態を示すものです。それでも、ギャンブルや浪費の悩みを抱えている人にとって、飲酒も同時に振り返ってみる価値がある理由の一つになります。

なぜ飲酒とギャンブル・浪費は重なりやすいのか

一つの理由は、診断上の位置づけにあります。米国精神医学会の診断基準DSM-5(2013年)は、ギャンブル障害を、アルコールや薬物の依存症と同じ「物質関連障害および嗜癖性障害群」というカテゴリーに位置づけました。公益社団法人日本精神神経学会が公開している専門医へのインタビューによれば、この分類は、症状や経過、治療の面でアルコール・薬物依存症と同質性が見られること、脳機能の研究でも共通した特徴を示唆する知見が集まってきたことが背景にあるとされています。アルコール依存症がどのような基準で診断されるかはアルコール依存症はどう診断される?で扱っていますが、ギャンブル障害についても、医師が問診などを通じて総合的に判断する点は共通しています。

もう一つの理由として指摘されているのが、飲酒がその場の判断に与える影響です。心理学者スティール氏とジョセフス氏が1990年に提唱した「アルコール近視(alcohol myopia)」という理論では、アルコールを摂取した状態では目の前の刺激や短期的な報酬に注意が向きやすくなり、長期的な結果を考慮した判断が難しくなるとされています。これは主に欧米で行われた実験研究にもとづく理論であり、日本人を対象にした検証や、ギャンブル行動そのものへの当てはめを直接確認した研究ではない点には留保が必要ですが、「飲みながらだと、ついもう一勝負してしまう」といった感覚を理解する手がかりにはなります。お酒もギャンブルも、脳の報酬系を素早く刺激する「即効性のある報酬」という枠組みで捉えられる部分があり、この仕組みについてはドパガキとは?でドーパミンの働きから整理しています。

治療・支援の現場ではどう対応されているか

前述の日本精神神経学会のインタビューでは、ギャンブル依存症の治療について、アルコール依存症や薬物依存症で効果があるとされる認知行動療法や集団(精神)療法などが応用されていると説明されています。複数の問題が同時にある場合、片方だけを扱う場では十分な支援が難しいことがあるため、両方に目を向けて対応できる医療機関・支援機関につながることが望ましいと考えられています。

相談先 — ギャンブル・浪費と飲酒、両方に対応できる窓口

複数の問題が重なっているとき、どちらか一方の窓口に絞る必要はありません。以下はいずれも、ギャンブルとアルコールの両方について相談できる窓口です。

窓口できること費用匿名・家族相談
精神保健福祉センターギャンブル・アルコールを含むこころの健康相談、専門機関の案内無料匿名・家族相談に対応するセンターがある
ギャンブル依存症予防回復支援センター(サポートコール)臨床心理士等の資格を持つカウンセラーによる電話相談(24時間・年中無休)無料(通話料も無料)家族相談に対応
依存症専門医療機関・治療拠点機関診断・治療、複数の依存症が併存する場合の対応保険診療の自己負担受診が前提
自助グループ(GA・ギャマノン等)同じ経験を持つ人同士が集まる場原則無料匿名参加が基本

精神保健福祉センターは、都道府県・政令指定都市に設置されており、ギャンブルやアルコールを含むこころの健康について、地域の医療機関や自助グループの情報も得られる窓口です。ギャンブル依存症予防回復支援センターのサポートコールは、24時間・365日、相談料・通話料ともに無料で利用できます。GA(ギャンブラーズ・アノニマス)やギャマノンといった自助グループは、本名を明かさずに参加できる場として運営されています。飲酒についての相談先をさらに詳しく知りたい場合は、お酒の相談はどこにすればいい?で行政・医療・当事者会の3系統を整理しています。

経済的な負担が同時にある場合

ギャンブルや浪費によって家計や借金の問題が同時に生じている場合は、お酒代で家計が苦しいと感じたらで紹介している生活困窮者自立支援制度や法テラスなど、経済面の相談窓口も並行して利用できます。ギャンブル・飲酒・家計の問題はそれぞれ別の窓口が担当しますが、一つの窓口で相談したことをきっかけに、他の窓口を紹介してもらえることもあります。

よくある質問

ギャンブルとお酒、両方の問題がある場合、どちらから相談すればいいですか?

どちらか一方に絞る必要はありません。精神保健福祉センターや依存症専門医療機関は、複数の問題が重なっている場合の相談にも対応しており、状況をそのまま伝えることで、両方に目を向けた支援につながります。

家族が心配しているのですが、本人が相談を嫌がります

ギャンブル依存症予防回復支援センターのサポートコールや精神保健福祉センターは、家族だけの相談にも対応しています。本人が動かなくても、家族が先に相談し、対応の仕方について助言を受けることができます。

飲みながらギャンブルをしてしまうのは意志が弱いからですか?

飲酒によって目先の刺激を優先しやすい判断の状態がつくられることを示す研究があり、意志の強さだけの問題として片づけられるものではないと考えられています。専門機関では、意志の問題ではなく、治療で対応していく状態として位置づけています。

自助グループには誰でも参加できますか?

GAやギャマノンなどの自助グループは、本名を明かさずに参加できる場として運営されています。参加の具体的な流れや条件は団体によって異なるため、各団体の公式情報を確認することをおすすめします。

まとめ

ギャンブルや浪費と飲酒は、国の実態調査でも同じ相談の場面で重なって語られることが少なくないことが確認されています。ギャンブル障害がアルコール依存症と同じ診断カテゴリーに位置づけられていることや、飲酒がその場の判断に影響を与えうるとする研究は、この重なりやすさを理解する手がかりになります。どちらも意志の弱さの問題として片づけるのではなく、精神保健福祉センターやサポートコール、専門医療機関など、両方に対応できる窓口に相談することが、無理のない立て直しにつながります。

参考文献

免責事項

本記事は一般的な情報提供を目的としており、診断や治療方針を示すものではありません。長期間・大量の飲酒が続いている場合、自己判断で急にお酒を断つと離脱症状が現れることがあります。手の震え・発汗・強い不安・けいれんなどがみられる場合は、自己判断で進めず医療機関にご相談ください。相談先には保健所・精神保健福祉センター・アルコール専門医療機関(減酒外来)などがあります。