お酒代がかさんで家計が苦しいと感じているとき、その背景には「飲みすぎているから」という一言では片づけられない構造があることがあります。失業や収入の減少、生活の乱れ、借金の返済といった経済的な困りごとがストレスとなり、それが飲酒量を押し上げ、飲酒がさらに家計を圧迫するという悪循環に陥りやすいことは、依存症支援に関わる団体の資料でも指摘されています。この記事では、飲酒と経済的な困窮がどのように影響し合うのかを一次資料にもとづいて整理し、家計の立て直しに使える公的な相談窓口と、飲酒そのものが気になる場合の相談窓口を紹介します。

この記事の要点

  • お酒代が家計を圧迫していると感じることと、経済的な困窮は互いに影響し合う関係にあるとされる
  • 失業・収入減少・借金などのストレスが飲酒量を押し上げ、飲酒がさらに家計を圧迫する悪循環が指摘されている
  • 家計や借金の悩みには、生活困窮者自立支援制度・消費生活センター・法テラスといった無料の公的相談窓口がある
  • 飲酒そのもののコントロールが難しいと感じる場合は、家計の相談と並行して専門機関に相談することもできる
  • 経済的な困窮は特別な人だけに起きることではなく、相談することは責められる行為ではない

お酒代の負担を「家計が苦しい」と感じるのはどんなときか

総務省統計局「家計調査」2024年(令和6年)平均によれば、二人以上の世帯における酒類への年間支出額は44,967円で、月平均に換算すると約3,747円です。ただしこの数字は、お酒を飲まない世帯も含めた全世帯の平均であり、毎晩のように飲む世帯やすでに家計に余裕がない世帯の実感とは大きな差があります。家計全体が苦しい状態では、毎回ほぼ同じ金額が出ていくお酒代が、数ある支出の中でも「削れるはずなのに削れない」項目として意識されやすくなります。

晩酌の生涯コストを計算する酒代シミュレーションで扱ったのは、将来に向けた前向きな節約シミュレーションでした。一方、本記事が扱うのは、すでに家計が苦しい状況の中でお酒代が負担として重くのしかかっている場合です。前向きな節約と、今まさに苦しい家計をどう立て直すかは、似ているようで別の課題です。

経済的な困窮と飲酒は、なぜ相互に影響し合うのか

認定NPO法人ASKの解説では、飲酒による社会的な損失として、厚生労働省研究班が2011年に公表した推計(2008年時点のデータにもとづく)が紹介されており、年間4兆1483億円という金額が示されています。この推計には医療費や労働損失、雇用損失などが含まれています。金額の大きさ以上に注目したいのは、同じ解説の中でASKが、失業や飲酒に伴う生活の乱れ、借金などによって困窮に陥ると、そのストレスからさらに飲酒が進行するという悪循環に陥りやすいと説明している点です。

この悪循環を整理すると、次のような流れになります。

きっかけ起こりやすいこと悪循環になりやすい理由
収入の減少・失業生活全般のストレスが増えるストレスへの対処として飲酒に頼る場面が増えやすい
飲酒量の増加酒代の支出が家計を圧迫するただでさえ厳しい家計の余裕がさらに失われる
経済的な余裕のなさ孤立や生活リズムの乱れにつながりやすいストレスが積み重なり、飲酒に頼る場面がさらに増えやすい

一つひとつの矢印は「必ずそうなる」という意味ではなく、そうなりやすい方向として理解してください。実際には、経済的な困窮があっても飲酒量が変わらない人もいれば、飲酒とは無関係に困窮する人もいます。それでも、この二つが同時に起きているとき、片方だけを見て解決しようとすると、もう片方に押し戻されやすいという構造がある点は、知っておく価値があります。

「意志が弱いから」ではない

経済的なストレスは、誰にとっても飲酒量に影響しうる要因の一つであるという考え方は、依存症支援の現場で広く共有されています。お酒代が家計を圧迫していると分かっていても飲酒量を減らせないとき、それは意志の弱さの証明ではなく、ストレスと飲酒が結びついた状態が続いているサインとして捉えるほうが、次の一歩につながりやすくなります。

経済的な困りごとを相談できる公的な窓口

家計や借金の悩みは、一人で抱え込まなくても相談できる公的な窓口があります。いずれも無料で利用でき、本人だけでなく家族からの相談にも対応しています。

窓口できること費用対象
自立相談支援機関(生活困窮者自立支援制度)家計改善支援・就労支援・住まいの確保など、生活全般の相談無料経済的な困りごとを抱えている人(本人・家族)
消費生活センター(消費者ホットライン188)多重債務や借金トラブルの相談、専門窓口への案内無料(通話料を除く)借金・消費トラブルで困っている人
法テラス(日本司法支援センター)借金・債務整理についての法律相談資力要件を満たせば無料相談・弁護士費用等の立替経済的に余裕がない人

生活困窮者自立支援制度は、市区町村に設置される「自立相談支援機関」が窓口となり、生活保護に至る前の段階で使える制度として位置づけられています。相談員が状況を聞き取り、家計改善支援事業や就労支援など、必要な支援につなげます。消費生活センターは「188(いやや)」に電話をかけると、住んでいる地域の窓口に自動的につながる仕組みです。多重債務や闇金融に関する相談も扱っています。法テラスは、借金の整理について弁護士・司法書士による法律相談を受けられる窓口で、収入や資産が一定の基準以下であれば、相談料や弁護士費用等の立替えを利用できます。

今夜、飲酒以外の対処を試したいとき

経済的な不安からくるストレスで、つい今夜もお酒に手が伸びそうだと感じることもあります。そうした瞬間にすぐ試せる工夫は、飲みたくなった夜の対処法10選にまとめています。お酒への衝動は多くの場合ピークを越えると自然に弱まっていく一過性の反応だとされており、家計の相談窓口を探すこととあわせて、その場をやり過ごす具体的な選択肢を持っておくことも役に立ちます。

飲酒そのもののコントロールが難しいと感じたら

家計の相談と並行して、飲酒量そのものをコントロールすることが難しいと感じる場合は、お酒の相談はどこにすればいい?で紹介している保健所・精神保健福祉センターなどの窓口も選択肢に入ります。これらは無料・匿名で相談でき、本人が動けない場合は家族だけで相談することもできます。経済面の相談窓口と飲酒についての相談窓口は別の系統ですが、どちらか一方に絞る必要はなく、状況に応じて両方を使うことができます。

よくある質問

お酒をやめれば家計は楽になりますか?

飲酒への支出を見直すことは、家計の負担を軽くする要素の一つにはなり得ます。ただし経済的な困窮の根本には、収入と支出全体のバランスや借金の状況など、飲酒以外の要因が関わっていることが多くあります。お酒代の見直しだけで解決するとは限らず、家計全体を扱う相談窓口を使うことも選択肢です。

家族が心配していますが、本人しか相談できませんか?

生活困窮者自立支援制度の相談窓口(自立相談支援機関)は、本人だけでなく家族からの相談も受け付けています。消費生活センターや法テラスも、状況によっては家族が窓口になって相談を進めることができます。

相談すると生活保護に切り替えられてしまいますか?

生活困窮者自立支援制度は、生活保護に至る前の段階で使える制度として位置づけられており、相談したことで自動的に生活保護に移行するわけではありません。相談内容に応じて、家計改善支援や就労支援など、必要な支援が案内されます。

借金があることを話すのが恥ずかしくて相談できません

消費生活センターや法テラスの相談員は、多重債務についての相談を日常的に受けています。経済的な困窮は特別な人だけに起きることではなく、相談すること自体は責められる行為ではありません。

まとめ

お酒代が家計を圧迫していると感じるとき、そこには経済的な困窮と飲酒が互いに影響し合う構造が関わっていることがあります。失業や収入減少、借金などのストレスが飲酒量を押し上げ、飲酒がさらに家計を圧迫するという流れは、意志の弱さの証明ではありません。家計や借金の悩みには、生活困窮者自立支援制度・消費生活センター・法テラスといった無料の公的相談窓口があり、飲酒そのものが気になる場合はあわせて保健所や精神保健福祉センターにも相談できます。一人で抱え込まず、使える窓口を組み合わせていくことが、無理のない立て直しにつながります。

参考文献

免責事項

本記事は一般的な情報提供を目的としており、診断や治療方針を示すものではありません。長期間・大量の飲酒が続いている場合、自己判断で急にお酒を断つと離脱症状が現れることがあります。手の震え・発汗・強い不安・けいれんなどがみられる場合は、自己判断で進めず医療機関にご相談ください。相談先には保健所・精神保健福祉センター・アルコール専門医療機関(減酒外来)などがあります。