禁酒・減酒を続けていると、ある時点で「浮いたお金を何に使うか」という問いに突き当たります。晩酌の生涯コスト試算酒代シミュレーションで見たように、標準的な晩酌をやめれば月1万円前後、外飲みの見直しまで含めれば月3万円前後が浮く計算になります。この記事では、その使い道を「何に使うと満足度が高いか」という心理学の知見をもとに整理し、SHIRAFUの世界観に沿った具体的な10の選択肢を紹介します。あわせて、お金と同じくらい重要な「取り戻した時間」の使い道についても扱います。

この記事の要点

  • モノを買う消費より、経験や体験を買う消費のほうが幸福感が長続きするとされる研究があります(Van Boven & Gilovich, 2003)
  • お金で時間を買う消費(家事代行など)は、所得の多寡に関わらず生活満足度の高さと関連していたという大規模調査があります(Whillans et al., 2017)
  • 標準的な晩酌をやめた場合は月1万円前後、外飲みの見直しまで含めれば月3万円前後が浮く計算になります(先行試算より)
  • 浮いたお金の使い道は「体」「学び」「経験」「資産形成」の4系統で整理すると選びやすくなります
  • 投資に触れる場合、本記事では制度の一般的な説明にとどめ、個別の金融商品の推奨や利回りの保証は行いません

浮いたお金は何に使うのが「正解」なのか

結論から言えば、唯一の正解はありません。ただし、心理学の消費者研究には「同じ金額でも、使い方によって得られる満足度は変わる」という知見の蓄積があります。代表的なのが、モノを買う消費(材質消費)と、体験を買う消費(経験消費)を比較した研究です。

心理学者のリーフ・ヴァン・ボーヴェンとトーマス・ギロヴィッチは2003年の論文で、基本的な生活ニーズが満たされている場合、旅行や外食のような経験にお金を使うほうが、服やガジェットのようなモノにお金を使うよりも幸福感が高くなる傾向を報告しました。理由として挙げられているのは、経験は自分のアイデンティティの一部になりやすいこと、他人との比較で目減りしにくいこと、そして人とのつながりを生みやすいことです。この研究はその後15年以上にわたって多くの追試・レビューが重ねられ、消費者心理学における代表的な知見のひとつになっています。

もうひとつ押さえておきたいのが、「時間を買う」消費です。ハーバード大学のアシュリー・ウィランズらが2017年に発表した研究では、アメリカ・カナダ・デンマーク・オランダの4カ国、合計6,000人以上を対象に調査したところ、家事代行などの時間節約サービスに毎月お金を使っている人(全体の約28%)は、そうでない人より生活満足度が高いという関連が見られました。この関連は、収入や資産の多さで説明できるものではなく、所得層に関わらず見られたと報告されています。追加で行われた実験でも、同じ金額をモノに使った場合より、時間の節約に使った場合のほうが、その日の幸福感が高くなる結果が得られています。

これらはいずれも欧米圏を中心としたサンプルによる研究であり、日本人の消費行動にそのまま当てはまるとは限りません。それでも、「浮いたお金をどう使うか」を考えるときの一つの補助線として参考になります。

浮くお金はどれくらい? — 先行試算のおさらい

使い道を考える前に、実際どれくらいの金額が浮くのかを確認しておきます。

パターン月額の目安出典
標準的な晩酌(缶ビール+つまみ)をやめる約9,900円晩酌の生涯コスト試算
毎晩ストロング系2本をやめる約9,600円酒代シミュレーション
週2回の外飲みを見直す約43,300円酒代シミュレーション

いずれも仮定を明示した試算であり、実際の金額は飲み方や頻度によって変わります。ここでは「月1万円前後〜3万円台」という幅を目安に、使い道を考えていきます。

浮いたお金の使い道10選

経験消費・時間を買う消費という考え方を踏まえ、SHIRAFUの世界観(酔わない夜を、最高の宵に)に沿う形で使い道を整理しました。どれか一つを選んで小さく始めることをおすすめします。

#カテゴリ具体例月1万円台で始めるなら
1サウナ・整いサウナ施設の回数券・自宅サウナグッズ月2〜3回のサウナ通い
2運動ジムの月会費・ランニングシューズジムの月会費1本分
3睡眠環境枕・マットレス・遮光カーテン枕1個の買い替えから
4学びオンライン講座・資格・書籍月額制の学習サービス1本
5資産形成NISA等の制度を使った積立投資月1万円の積立から
6ノンアルのアップグレードクラフトノンアル・モクテル素材週末だけ良いものを選ぶ
7体のメンテナンスマッサージ・整体・鍼灸月1回のケア
8経験・旅行日帰り旅行・体験型レジャー数ヶ月分をまとめて1回の体験に
9人との時間友人との食事・コミュニティ参加費「飲み会」ではない集まりに使う
10記録・可視化家計簿アプリ・浮いた額の見える化実質0円で始められる

いずれも「モノを増やす」よりも「体験・体調・時間」に還元される使い道を意識して選んでいます。1と2は運動・整うという行為そのものが経験消費に近く、3と7は翌朝のコンディションに直接効いてくる投資です。飲み会の代わりの過ごし方の具体例は飲み会の代わりにナイトラン、夜の時間そのものを回復に充てる考え方は飲まない夜のリカバリー完全ガイドでも紹介しています。

積立投資という選択肢 — NISAの基礎(制度説明にとどめます)

リストの5番目に挙げた「資産形成」について、制度の基礎だけ触れておきます。日本には、個人の投資による利益を非課税にする「NISA(少額投資非課税制度)」という制度があります。2024年からの新NISAでは、つみたて投資枠(年間120万円)と成長投資枠(年間240万円)を併用でき、非課税で保有できる期間は無期限、生涯の非課税保有限度額は1,800万円までと定められています(金融庁「NISAを知る」より)。

浮いた酒代を毎月同じ金額だけ積み立てに回すという発想自体は、前述の酒代シミュレーション記事や晩酌の生涯コスト試算記事でも複利運用の試算として扱っています。ただし、投資には元本割れのリスクが伴い、利回りを保証するものではありません。本記事は制度の存在を紹介するにとどめ、特定の金融商品を推奨するものではないことをあらためて明記します。金額や商品選びに迷う場合は、金融機関や公的な相談窓口で確認することをおすすめします。

「取り戻した時間」の使い道は?

浮くのはお金だけではありません。晩酌や飲み会にかけていた時間そのものも、飲まない選択によって手元に戻ってきます。ウィランズらの研究が示すように、時間の使い方そのものが満足度に直結するなら、「浮いた時間」の使い道も、お金の使い道と同じくらい丁寧に考える価値があります。

金額と同じように、時間の使い道も「一気に全部」ではなく、まずは週1回・1つの習慣から試すくらいで十分です。

よくある質問

浮いたお金は貯金と自己投資、どちらを優先すべき?

本記事はどちらか一方を推奨するものではありません。まずは家計の状況に応じて必要な貯蓄を確保したうえで、余剰分の使い道として本記事のリストを参考にすることをおすすめします。

モノを買うのは良くないということ?

そうではありません。Van Boven & Gilovichの研究は「経験消費のほうが幸福感が長続きしやすい傾向がある」ことを示したものであり、モノの購入を否定するものではありません。自分にとって意味のあるモノであれば、満足度につながることもあります。

NISAを使えば必ず増える?

いいえ。NISAは投資による利益を非課税にする制度であり、運用成果そのものを保証するものではありません。投資には元本割れのリスクがあります。本記事は制度の存在を紹介するにとどめ、特定の金融商品を推奨していません。

月1万円もお金が浮くか自信がありません

まずは1週間分だけ、実際に使わなかった酒代を別の場所に移してみると、金額の実感がわきやすくなります。具体的な試算方法は記事冒頭で紹介した酒代シミュレーションを参考にしてください。

使い道が思いつかない場合はどうすればいい?

無理に決めなくても構いません。まずは家計簿アプリなどで「浮いた額を見える化」するだけでも、次の一歩を考えるきっかけになります。本記事のリストのうち、今の生活に取り入れやすいものを1つ選ぶところから始めてみてください。

まとめ

禁酒・減酒で浮いたお金は、モノよりも経験や時間に使うほうが満足度につながりやすいとされる研究があります。サウナ・運動・睡眠環境・学び・資産形成など、SHIRAFUの視点で整理した10の使い道のうち、まずは1つだけ試してみることをおすすめします。あわせて、飲み会や晩酌にかけていた「時間」の使い道も考えることで、金額以上の満足度が得られる可能性があります。投資に関しては、制度を知ったうえで自分のペースで判断することが大切です。

参考文献

本記事は一般的な情報提供を目的としており、特定の金融商品の勧誘や投資助言を行うものではありません。投資は自己判断・自己責任のもとで行い、必要に応じて金融機関や専門家にご相談ください。