妊娠が分かった、あるいはこれから妊活を考えているタイミングで、「これまで飲んでいたノンアルドリンクは、このまま飲み続けていいのか」と迷う人は少なくありません。結論から言うと、特定の製品を挙げて「妊娠中でも安心」と言い切れる答えはありません。確認すべきなのは、パッケージに書かれた3つの表示——アルコール分・カフェイン・その他の成分——です。この記事では、それぞれの表示をどう読むか、公的資料をもとに整理します。

この記事の要点

  • 妊娠中・授乳中に確認すべきは、①アルコール分(0.00%か、1%未満だが0ではないか)②カフェイン③ハーブ・トニック類などその他の成分という3つの表示です
  • 「ノンアルコール」表示でも、酒税法上はアルコール分1%未満であれば名乗れるため、0.00%表示と0.5%前後の「微アル」は区別が必要です
  • 妊娠中のカフェインについて、世界保健機関(WHO)は1日300mgを超える摂取を控えるよう2016年に勧告し、欧州食品安全機関(EFSA)は習慣的摂取200mg/日以下を目安としています
  • 個別のハーブについて「妊娠中も安全」と言い切れる情報はなく、心配な場合はかかりつけの医師に確認することが基本です
  • すでに気づかずに飲んでしまった人を追い詰めるための記事ではありません

妊娠中・授乳中に確認すべき3つの表示

ノンアルドリンクという一つの棚の中には、性質の異なる複数の論点が混ざっています。ノンアル飲料全体の安全性の論点(添加物・糖質など)はノンアル飲料は体に悪い?で整理していますが、妊娠中・授乳中に絞って確認すべきなのは、次の3点です。

  1. アルコール分——0.00%表示か、1%未満だが0ではない「微アル」か
  2. カフェイン——お茶・コーヒー系・コーラ系・エナジー系の飲料に含まれうる成分
  3. その他の成分——ノンアルスピリッツやハーブティーに使われるハーブ・ボタニカル類

3点をまとめると、次の表のようになります。

確認項目どこを見るか判断の目安出典
アルコール分パッケージの「アルコール分」表示0.00%表示を選ぶ。1%未満でも0ではない微アルは避ける国税庁「酒類の定義」
カフェイン原材料表示・カフェイン量表示(任意表示)習慣的摂取200mg/日以下(EFSA)、300mg/日を超えない(WHO)食品安全委員会ファクトシート、WHO
ハーブ・ボタニカル類原材料表示の植物名個別の安全性を断定できる情報はなく、心配な場合は医師に確認該当分野の統一的な公的基準はまだない
糖分栄養成分表示「ゼロ」表示も基準値未満の意味であり、文字通りのゼロとは限らない消費者庁食品表示基準

「ノンアルコール」表示は0.00%とは限らない

日本の酒税法は「酒類」をアルコール分1度(1%)以上の飲料と定義しており(国税庁)、1%未満の飲料は酒類ではないという理由で「ノンアルコール」を名乗れます。この中には0.00%と明記された製品だけでなく、0.5%前後のアルコールを含む「微アル」も含まれます。詳しい注意点は微アル(0.5%)とは?で整理していますが、妊娠中・授乳中は「ノンアルコール」の表記だけで判断せず、必ず「アルコール分」欄の数値で0.00%を確認してください。

妊娠中のカフェインはどこまでか

内閣府食品安全委員会は、カフェイン自体の独自リスク評価はまだ行っていませんが、ファクトシート「食品中のカフェイン」(最終更新: 平成30年2月23日)で海外の主要機関の目安をまとめています。世界保健機関(WHO)は2016年、1日300mgを超える妊婦に対し、流産や新生児の低体重リスクを減らすため摂取量を制限するよう勧告しました。この300mgという数字は2023年8月の最新レビューでも維持されています。

一方、欧州食品安全機関(EFSA)は2015年の科学的意見書で、妊婦は習慣的なカフェイン摂取を1日200mg以下にとどめれば胎児への健康リスクは生じないとしています。授乳中の女性も1回当たり200mg以下・習慣的摂取200mg/日以下であれば健康リスクは生じないとし、カナダ保健省は妊婦・授乳婦・妊娠を計画している女性に対して1日300mg以下(コーヒーのマグカップで2杯強)を目安に挙げています。

数字にはWHO・カナダ保健省の300mgとEFSAの200mgという幅がありますが、いずれも「ゼロではなく上限を意識する」という考え方は共通です。合計量を把握するには、コーヒーだけでなくお茶・コーラ・エナジードリンク系のノンアルにも含まれうる点に注意が必要です。飲料ごとのカフェイン量の比較はカフェインはどれが多い?で整理しています。

ハーブ・ボタニカル成分はどう見ればいいか

ノンアルコールスピリッツやハーブティーには、さまざまなハーブ・植物由来の成分が使われ、中には妊娠中の摂取について注意が示されているものもあります。ハーブの種類によって研究の蓄積量や注意喚起の有無は大きく異なり、一律に「安全」とは言えません。原材料表示に見慣れない植物名がある場合は、パッケージやメーカーの情報だけで判断せず、かかりつけの産婦人科医に確認することが確実です。

甘酒は妊娠中に飲めるか — 米麹と酒粕の違い

甘酒には原料が異なる2つの種類があります。農林水産省の説明によると、米と米麹だけで作る「米麹甘酒」は、麹菌がでんぷんを糖に分解する働きだけで作られアルコール発酵の工程を経ないためノンアルコールです。一方、酒粕を原料とする「酒粕甘酒」は、酒粕自体にアルコールが含まれるため、甘酒に加工したあともアルコールがわずかに残ります。

市販の酒粕甘酒の多くは、酒税法上の「酒類」に該当しないアルコール分1%未満(清涼飲料水扱い)に仕上げられていますが、0.00%という意味ではありません。妊娠中・授乳中に甘酒を選ぶ場合は、「米・米こうじ」だけで作られた米麹甘酒を選ぶか、酒粕甘酒であればアルコール分表示を確認することが確実です。

授乳期はどう考えればいいか

厚生労働省は、妊娠中だけでなく授乳中もアルコール摂取を控えることを勧めています。母体が飲んだアルコールは母乳を通じて赤ちゃんの体に入り、赤ちゃんの未発達な肝臓では十分に分解できないためです。

日本産婦人科医会の解説によると、飲酒はプロラクチンの分泌を抑え乳汁の分泌量や授乳のパフォーマンスを低下させる可能性があり、母体の血中アルコールは母乳にも移行します。乳汁中のアルコール濃度は飲酒後2時間ほどでピークに達するとされ、2時間以上あけてから授乳することが推奨されていますが、同会は母乳のメリットが大きいため授乳自体を避ける必要はないという海外の勧告も紹介しています。カフェインはEFSAが授乳中の女性の目安を1回当たり・習慣的摂取ともに200mg/日以下としていますが、体質・持病・服薬状況で変わるため、不安があれば産婦人科医や助産師に確認してください。

選ぶときの実務 — 表示の見方とギフト・外食

日常の中でノンアルドリンクを選ぶときは、次の点を意識すると迷いが減ります。

乾杯や食後の一杯を、必ずしも炭酸系のノンアルドリンクにする必要はありません。温かいノンカフェインのハーブティーや、果汁を炭酸水で割ったシンプルな一杯も、気分を切り替える選択肢になります。

すでに飲んでしまった人へ

妊娠に気づく前にお酒を飲んでいた、あるいはノンアルコール表示を確認せずに微アルを口にしてしまった、というケースは珍しくありません。この記事は、そうした過去の行動を責めるために書いたものではありません。大切なのは、気づいた時点から表示を確認する習慣に切り替えることです。妊娠中の飲酒がなぜ注意されるのか、根拠となるFASD(胎児性アルコール・スペクトラム障害)は妊娠中の飲酒はなぜ危険なのかで整理しているので、不安がある場合は参考にしてください。

よくある質問

妊娠中にノンアルコールビールを飲んでも大丈夫ですか?

アルコール分0.00%と表示された製品であれば、アルコールは含まれていません。ただし0.00%ではなく1%未満の微アルコール(0.5%前後)を名乗る商品もあるため、パッケージの「アルコール分」表示を必ず確認してください。

カフェインレスのコーヒーなら妊娠中でも自由に飲めますか?

カフェインレスのコーヒーはカフェイン量が少ないものの、完全にゼロとは限りません。EFSAは妊娠中の習慣的なカフェイン摂取の目安を1日200mg以下としており、他の飲料と合わせた1日の合計量を意識することが基本です。

甘酒は毎日飲んでも大丈夫ですか?

原材料が米・米こうじだけの米麹甘酒であれば、アルコールを含みません。酒粕を原料とする甘酒は微量のアルコールを含む場合があるため、妊娠中・授乳中は原材料表示を確認し、心配な場合はかかりつけの医師に相談してください。

授乳中はお酒を飲んだらすぐ授乳してはいけませんか?

日本産婦人科医会の解説では、乳汁中のアルコール濃度は飲酒後2時間ほどでピークに達するとされ、飲酒後2時間以上あけてから授乳することが推奨されています。ただし、これは目安であり、個々の状況については医師・助産師に確認することをおすすめします。

ハーブティーやハーブ系のノンアルスピリッツは妊娠中でも安心ですか?

ハーブの種類によって研究の蓄積や注意喚起の有無が異なり、一律に「安心」とは言えません。原材料表示に見慣れない植物名がある場合は、自己判断せずかかりつけの医師に確認することをおすすめします。

まとめ

妊娠中・授乳中にノンアルドリンクを選ぶときに確認すべきなのは、特定の製品名ではなくパッケージに書かれた3つの表示——アルコール分・カフェイン・その他の成分——です。アルコール分は0.00%表示を選び、カフェインは1日の合計量を意識し、ハーブ・ボタニカル類は不安があれば医師に確認する。この3点を押さえておけば、乾杯の場面でも落ち着いて一杯を選べるはずです。

参考文献

免責事項

本記事は医療アドバイスではありません。妊娠中・授乳中のアルコール・カフェイン・ハーブ成分の摂取については個人差があり、持病・体質・服薬状況によって適切な対応は変わります。不安がある場合は、自己判断せずかかりつけの産婦人科医・薬剤師にご相談ください。本記事は特定の製品を推奨するものではなく、表示の読み方を整理したものです。20歳未満の飲酒は法律で禁止されています。