「カフェインはコーヒーとエナジードリンク、どちらが多い?」という問いに、一言で答えることはできません。飲む量・淹れ方・製品によって数値が大きく変わるためです。この記事では、内閣府食品安全委員会のファクトシートと国民生活センターの調査報告という一次資料をもとに、コーヒー・茶類・抹茶・エナジードリンク・コーラ・カフェイン錠まで、主なカフェイン源を1回あたりの量で横並びに整理します。
この記事の要点
- 1回あたりの量で比べると、コーヒー(ドリップ150mLで約90mg)が定番の目安。抹茶1杯(約48mg)はコーヒーの半分程度(内閣府食品安全委員会)
- エナジードリンク・眠気覚まし用飲料は100mLあたり32〜300mgと製品差が非常に大きい(食品安全委員会)。海外調査では1缶(250〜330mL)で約80〜105mgという報告もある
- カフェインを有効成分とする一般用医薬品(眠気除去)は、1回服用量で最小93mg、1日の服用量では最大500mgの製品が販売されている(国民生活センター, 2021)
- 健康な成人の目安量はEFSAで1日400mg以下・単回200mg以下。妊娠中は習慣的摂取200mg/日以下が目安(EFSA, 2015)
- 飲料へのカフェイン含有量表示は義務ではなく任意のため、表示のない製品を組み合わせて摂ると、意図せず多量摂取につながることがある(国民生活センター, 2021)
カフェイン源の全体マップ — 何に、どれだけ含まれる?
カフェインは、コーヒー豆・茶葉(チャノキ)・カカオ豆・ガラナなどに天然に含まれる成分で、清涼飲料水には苦味料等の食品添加物としても使われています。内閣府食品安全委員会のファクトシート「食品中のカフェイン」(最終更新: 平成30年2月23日)には、浸出液の濃度と、実際に飲む量に換算した目安が示されています。
| 飲料・食品 | カフェイン濃度 | 1回あたりの目安量 | 出典 |
|---|---|---|---|
| コーヒー(ドリップ) | 60mg/100mL | 150mLで約90mg | 食品安全委員会 |
| インスタントコーヒー | 57mg/100mL | 140mLで約80mg | 食品安全委員会 |
| 玉露 | 160mg/100mL | 60mLで約96mg | 食品安全委員会 |
| 紅茶 | 30mg/100mL | 150mL換算で約45mg | 食品安全委員会 |
| せん茶 | 20mg/100mL | 150mL換算で約30mg | 食品安全委員会 |
| ウーロン茶 | 20mg/100mL | 150mL換算で約30mg | 食品安全委員会 |
| 抹茶 | 3.2g/100g(粉末) | 1杯(抹茶1.5g・湯70mL)で約48mg | 食品安全委員会 |
| エナジードリンク・眠気覚まし用飲料 | 32〜300mg/100mL | 製品1本で36〜150mg | 食品安全委員会 |
| カフェイン錠(眠気除去・第3類医薬品) | — | 1回服用量で最小93mg、1日服用量で最大500mgの製品あり | 国民生活センター |
抹茶とコーヒーの詳しい比較は抹茶のカフェインはコーヒーの何倍?で扱っています。この表からもわかる通り、「お茶=カフェインが少ない」とは一概に言えず、玉露のように濃度の高いお茶もあります。
エナジードリンクとコーラについては、日本の成分表には浸出液としての標準値がないため、海外の調査値を参考値として補足します。ドイツ連邦リスク評価研究所(BfR)は、エナジードリンク1缶(250mL)に約80mgのカフェインが含まれ、これはフィルターコーヒーのラージカップ(200mL)とほぼ同量、紅茶1カップの約2倍、コーラ1缶または緑茶1カップの2倍以上にあたるとしています。フィンランド食品安全局(EVIRA)の調査では、コーヒー1杯(200mL)で約100mg、エナジードリンク1本(330mL)で約105mg、コーラ飲料1本(500mL)で約65mgという数値が示されています。カナダ保健省はコーラ1缶(355mL)のカフェイン量を36〜46mgとしています。いずれも国や製品によって幅があるため、あくまで目安として捉えてください。
チョコレートやココアについては、世界保健機関(WHO)が2001年の助言の中で「紅茶、ココア、コーラ飲料はほぼ同程度のカフェインを含み、コーヒーにはこれらの約2倍のカフェインが含まれる」と整理しています。具体的なmg数の日本語一次資料は確認できなかったため、この記事では相対的な位置づけにとどめます。
エナジードリンクは何に注意すればいい?
エナジードリンクそのものが問題というより、量・表示・組み合わせの3点に注意が必要というのが、公的機関の一致した見解です。
製品差が大きく、無表示の製品もある。国民生活センターが2021年に公表した調査によれば、飲料へのカフェイン含有量表示は義務ではなく事業者の任意判断であるため、表示のない商品も多く流通しています。同調査では、パック入りコーヒー飲料にカフェイン量の表示がなかったという相談事例のほか、中学生の子どもが表示のないペットボトルコーヒー飲料500mLを飲み、1時間以内に頭痛・吐き気・動悸を訴えて救急搬送され、点滴治療を受けて日帰りで退院したという事例も報告されています。同センターは、複数のカフェイン含有製品を同時に摂取すると、意図せず摂取量が積み重なる可能性があると注意を促しています。
若年層への注意喚起は海外で特に強い。ドイツ連邦リスク評価研究所は、小児・青少年によるエナジードリンクの過剰摂取が、安全とされるレベルを超えるカフェイン摂取につながり、心血管系への負の影響を及ぼす可能性があるとしています。フィンランド食品安全局の評価では、体重50kgの青少年で1日15mg程度のカフェインであれば副作用は見られないものの、1日50mgを超えると耐性が増加する可能性、1日125mgを超えると不安やイライラ感が見られたと報告されています。カナダ保健省は子供の年齢別上限を、4〜6歳で1日45mg以下、7〜9歳で62.5mg以下、10〜12歳で85mg以下、13歳以上の青少年では体重1kgあたり2.5mg以下と定めています。オーストラリア・ニュージーランド食品基準機関は、エナジードリンクに「子供・妊婦・授乳中の女性・カフェインに感受性の高い人には適さない」旨の表示を義務付けています。
アルコールとの組み合わせにも注意が必要。米国疾病予防管理センター(CDC)は、エナジードリンクのようなカフェインを多く含む飲料とアルコールを混ぜて飲むこと、特にこの飲み方を好む若者に対して注意喚起しています。カフェインがアルコールによる酩酊のサインを覆い隠してしまい、結果としてアルコールの過剰摂取につながりやすくなるためです。会食の場でのお酒との付き合い方は飲み会の断り方でも扱っています。
糖分も見落とせない。エナジードリンクの多くは加糖されています。WHOは2015年の指針で、遊離糖類(添加された砂糖やシロップ等)の摂取量を総エネルギー摂取量の10%未満に、可能であれば5%未満(2000kcalの食事で約25g、小さじ6杯程度)に抑えることを推奨しています。カフェイン量だけでなく、糖分の表示もあわせて確認する習慣が現実的です。
これらはいずれも特定の銘柄を問題視するものではなく、「量・表示・組み合わせ」という飲み方全般に関わる注意点です。製品を選ぶ際は、パッケージのカフェイン量・糖類の表示を確認することが、もっとも確実な対策になります。
コーヒーと茶、体感の「立ち上がり・持続」はなぜ違う?
同じカフェイン量でも、コーヒーとお茶では体感が違うと感じる人は少なくありません。この違いを説明しうる要因のひとつが、茶葉に含まれるアミノ酸「L-テアニン」です。
伊藤園中央研究所と愛媛県立医療技術大学が2014年に日本食品科学工学会で発表した研究では、健康な成人にカフェインとテアニンを組み合わせて摂取させたところ、テアニン単独摂取時よりも、カフェインによる興奮作用が緩和される傾向が確認されたとされています。これは「テアニンがカフェインの効き方を穏やかにする可能性がある」という示唆であり、カフェインの量や半減期そのものがなくなるわけではありません。抹茶とコーヒーのより詳しい比較は、前述の記事を参考にしてください。
一方、体内からカフェインが抜けていく速さ(持続時間)は、飲み物の種類ではなく、代謝速度(酵素CYP1A2の働き方や年齢・体重・肝機能など)によって決まります。EFSAによれば、健康な成人のカフェインの半減期は平均およそ4時間、個人差により2〜8時間の幅があるとされています。「何時まで飲んでいいか」を半減期から逆算する考え方はカフェインは何時まで?で詳しく整理しています。
1日のカフェイン設計図 — 朝・昼・午後をどう組み立てるか
カフェイン源を把握したら、次は「1日にどう配分するか」です。ひとつの現実的な考え方は、EFSAの1日目安量(健康な成人で400mg以下)を上限の予算として、時間帯ごとに使う量を決めておくことです。
- 朝: コーヒー1杯(ドリップ150mLで約90mg)や紅茶で、しっかり覚醒させる時間帯に使う
- 昼: せん茶やウーロン茶(150mL換算で約30mg)など、やや控えめな量に切り替える
- 15時以降: 半減期(平均約4時間)から逆算し、就寝時刻に向けて量を減らす。デカフェやノンカフェインの麦茶・ハーブティーに切り替えるのも選択肢のひとつです。夜に飲めるお茶の選び方は夜に飲めるお茶ガイドで紹介しています
こうして1日を通した量を意識すると、「気づいたら400mgを超えていた」という事態を避けやすくなります。定期的にカフェインの摂取量を見直す・一時的に控える工夫についてはカフェイン断ちガイドでも取り上げています。
健康な成人の摂取目安量は? — EFSAの基準
欧州食品安全機関(EFSA)は2015年の科学的意見書で、カフェインの安全な摂取量について次のような目安を示しています。カフェインの一日摂取許容量(ADI)は個人差が大きいため設定されていませんが、これらの数字は各国の食品安全機関でも広く参照されています。
| 対象 | 目安量 | 出典 |
|---|---|---|
| 健康な成人(習慣的) | 400mg/日以下 | EFSA |
| 健康な成人(単回) | 200mg以下(体重70kgで約3mg/kg体重) | EFSA |
| 妊婦(習慣的) | 200mg/日以下 | EFSA |
| 授乳中の女性 | 単回200mg以下・習慣的200mg/日以下 | EFSA |
| 健康な子供・青少年 | 約3mg/kg体重(単回・習慣的とも) | EFSA |
これらはあくまで「健康リスクへの懸念が生じない」とされる目安であり、感受性には個人差があります。国民生活センターの調査でも、カフェインへの感受性は子供・妊婦・授乳婦で特に注意が必要とされています。妊娠中のカフェイン摂取については、就寝タイミングよりも1日の合計量の管理が優先される点も押さえておきたいポイントです。
よくある質問
エナジードリンクとコーヒー、カフェイン量が多いのはどちらですか?
製品によって大きく異なります。ドイツ連邦リスク評価研究所の調査では、エナジードリンク1缶(250mL・約80mg)はフィルターコーヒーのラージカップ(200mL)とほぼ同量とされています。一方、日本の食品安全委員会のデータでは、エナジードリンク・眠気覚まし用飲料は100mLあたり32〜300mgと幅が非常に大きく、一概にどちらが多いとは言えません。製品ごとの表示を確認するのが確実です。
コーラにもカフェインは入っていますか?
入っています。カナダ保健省の資料ではコーラ1缶(355mL)で36〜46mg、フィンランド食品安全局の調査ではコーラ飲料1本(500mL)で約65mgとされています。コーヒーや玉露ほど高濃度ではないものの、無視できる量ではありません。
カフェイン錠は飲み物のカフェインと合算して考えるべきですか?
はい。国民生活センターの調査でも、複数のカフェイン含有製品を同時に摂取すると、意図せず摂取量が積み重なる可能性が指摘されています。カフェイン錠(眠気除去用の一般用医薬品)は1回服用量で最小93mgとされ、コーヒーや茶類と組み合わせると、EFSAの目安量(400mg/日)に近づきやすくなります。
妊娠中でもコーヒーは飲んでいいですか?
飲むこと自体が禁止されているわけではありませんが、量の管理が重要です。EFSAは妊婦の習慣的なカフェイン摂取量を1日200mg以下を目安としています。カフェインを含む飲料は複数の種類を合わせて摂取しがちなため、合計量を意識し、具体的な目安についてはかかりつけの医師に相談することをおすすめします。
カフェイン量の表示がない飲料は安全ですか?
表示がないことと安全性は別の問題です。国民生活センターの調査では、カフェイン含有量の表示は事業者の任意判断とされており、表示のない製品も多く流通していると報告されています。表示がない場合は、飲料の種類(コーヒー・エナジードリンク・お茶など)や量から、この記事の比較表を目安に大まかに見積もることが現実的な対策になります。
まとめ
「カフェインはどれが多いか」という問いへの答えは、比べる対象と単位によって変わります。1回あたりの量ではコーヒーが定番の目安になりますが、エナジードリンクは製品差が非常に大きく、カフェイン錠は飲料よりまとまった量を含みます。健康な成人の目安量はEFSAで1日400mg以下・単回200mg以下、妊娠中は200mg/日以下です。飲料へのカフェイン表示は義務ではないため、複数のカフェイン源を組み合わせるときほど、表示を確認し、自分なりの1日の設計図を持っておくことが現実的な対策になります。
参考文献
- 内閣府食品安全委員会 ファクトシート「食品中のカフェイン」(最終更新: 平成30年2月23日) https://www.fsc.go.jp/factsheets/index.data/factsheets_caffeine.pdf
- 独立行政法人国民生活センター「飲料のカフェイン含有量に関する調査 −知らずに多く摂取していることも!?−」(2021年11月4日) https://www.kokusen.go.jp/pdf/n-20211104_3.pdf
- European Food Safety Authority (EFSA)「Scientific Opinion on the Safety of Caffeine」(2015) https://www.efsa.europa.eu/sites/default/files/corporate_publications/files/efsaexplainscaffeine150527.pdf
- 伊藤園「テアニン摂取による中枢神経興奮作用緩和を確認 — カフェインの作用を緩和」(伊藤園中央研究所・愛媛県立医療技術大学、2014年) https://www.itoen.co.jp/news/article/13210/
- World Health Organization「WHO calls on countries to reduce sugars intake among adults and children」(2015) https://www.who.int/news/item/04-03-2015-who-calls-on-countries-to-reduce-sugars-intake-among-adults-and-children
免責事項
本記事は一般的な情報提供を目的としており、医療上のアドバイスではありません。カフェインへの感受性や適切な摂取量には個人差があります。妊娠中の方、授乳中の方、持病がある方、子供、カフェインへの感受性が高い方は、自己判断せずに医師にご相談ください。