飲まない夜の締めくくりに、何を選ぶか。ビールでもハイボールでもなく、湯気の立つ一杯という選択肢がある。ただし「お茶ならなんでもノンカフェイン」というわけではない。この記事では、本当にカフェインを含まないお茶と、カフェインはあるが控えめな「低カフェイン」のお茶を分けて整理し、日本食品標準成分表のデータをもとに、夜に選ぶべき一杯を具体的に絞り込む。

この記事の要点

  • 麦茶・ルイボスティー・カモミール・黒豆茶・そば茶・コーン茶・ミントは、いずれもカフェインを含まないお茶(茶葉=チャノキ由来ではない)です
  • 「ほうじ茶はノンカフェイン」は誤解です。日本食品標準成定表(2020年版・八訂)では、ほうじ茶の浸出液は100mLあたり20mgのカフェインを含み、これはせん茶(緑茶)と同量です
  • 番茶・玄米茶は100mLあたり10mgとほうじ茶よりは少なめですが、ゼロではありません。就寝前に確実にカフェインを避けたいなら、茶葉由来のお茶ではなく麦茶やハーブティーを選ぶのが確実です

「お茶=ノンカフェイン」は思い込みかもしれない

日本語の「お茶」という言葉は、緑茶・ほうじ茶・麦茶・ハーブティーまで一括りにして指すことが多い。しかしカフェインの有無で見ると、この括りは大きく2つのグループに分かれる。

1つは、チャノキ(カメリア・シネンシス)の葉を原料とする「茶葉のお茶」。せん茶・玉露・ほうじ茶・番茶・玄米茶・ウーロン茶・紅茶がここに含まれ、加工法が違うだけで原料は同じチャノキなので、どれも多かれ少なかれカフェインを含む。

もう1つは、チャノキ以外の植物を原料とする「茶外茶(ちゃがいちゃ)」。麦茶・そば茶・黒豆茶・コーン茶や、カモミール・ミントなどのハーブティーがここに含まれる。原料が違うため、これらは基本的にカフェインを含まない。

つまり「夜に飲むお茶」を選ぶときにまず見るべきは、味や香りの前に、この原料の違いだ。

比較表 — カフェイン有無・味の傾向・入手性

お茶カフェイン(浸出液100mLあたり)味・香りの傾向入手性
麦茶なし香ばしく癖が少ない。冷・温どちらも定番コンビニ・スーパーで通年入手可
ルイボスティーなしほのかな甘みのある紅茶風の風味。渋みは少ないスーパー・専門店で入手しやすい
カモミールティーなしりんごに似た甘い香り。優しい後味専門店・輸入食品売場で入手可
黒豆茶なし香ばしく、ほんのり甘みを感じる後味スーパー・和食材売場で入手可
そば茶なしそば由来の香ばしさとやさしい風味スーパー・専門店で入手可
コーン茶なしとうもろこしの甘い香ばしさ専門店・輸入食品売場が中心
ミント(ペパーミント)ティーなしメントールのすっきりした清涼感。味自体は淡い専門店・輸入食品売場で入手可
玄米茶10mg緑茶に炒り玄米を合わせた香ばしさコンビニ・スーパーで入手しやすい
番茶10mgあっさりとした軽い渋みスーパー・茶舗で入手可
ほうじ茶20mg焙煎による香ばしさとまろやかな渋みコンビニ・スーパーで通年入手可
(参考)せん茶20mg爽やかな渋みと旨みコンビニ・スーパーで通年入手可
(参考)紅茶30mgしっかりとした渋みとコクコンビニ・スーパーで通年入手可
(参考)コーヒー60mg苦味と香ばしさ、成分による覚醒感コンビニ・スーパーで通年入手可

出典: 文部科学省「日本食品標準成分表2020年版(八訂)」の浸出液カフェイン値を基に作成。数値は目安であり、抽出条件(茶葉量・湯温・浸出時間)によって前後する。

この表を見ると、ほうじ茶がせん茶(緑茶)と同じ100mLあたり20mgのカフェインを含んでいることがわかる。「ほうじ茶は香ばしくて優しい味だから、緑茶よりカフェインが少なそう」という印象を持つ人は少なくないが、成分表上はむしろ番茶・玄米茶(いずれも10mg)より多い。就寝前に「ノンカフェインのつもりでほうじ茶を選ぶ」のは、成分表ベースでは正確ではないということになる。

夜、確実にカフェインを避けたいなら

上の表からわかる通り、夜にカフェインの影響を残したくない場合の第一候補は、茶葉由来ではない麦茶・ルイボスティー・カモミール・黒豆茶・そば茶・コーン茶・ミントティーのグループになる。この中からどれを選ぶかは、次のような好みの軸で考えるとよい。

香ばしさで選ぶなら: 麦茶・黒豆茶・そば茶・コーン茶。いずれも焙煎由来の香ばしさがあり、和食との相性もよい。特に麦茶は入手性が高く、冷やしても温めても飲めるため、季節を問わない定番になりやすい。

華やかな香りで選ぶなら: カモミールティー。りんごに似た甘い香りが特徴で、「今日を終える」儀式性を演出しやすい一杯だ。ただし後述の注意点があるため、体質によっては避けたほうがよい人もいる。

さっぱりと締めたいなら: ミント(ペパーミント)ティー。食後の口の中をリセットするような清涼感があり、食べ過ぎた夜や、頭を切り替えたい夜に向く。

軽い渋みで「お茶らしさ」を残したいなら: ルイボスティー。紅茶に近い風味がありながらカフェインを含まないため、「紅茶が飲みたいが夜だから避けたい」という場面の代替になりやすい。

ほうじ茶・番茶・玄米茶を選ぶなら知っておきたいこと

ほうじ茶・番茶・玄米茶を「絶対にゼロにはしたくないが、なるべく控えたい」という低カフェイン枠として選ぶ場合、次の点を押さえておくと選びやすい。

ハーブティーを選ぶときの注意点

カモミールなどのハーブティーは、夜の一杯として人気が高い一方で、体質や状況によっては避けたほうがよい場合がある。

キク科アレルギーがある人: カモミールはキク科の植物で、ブタクサ・菊・マリーゴールドなど近縁のキク科植物にアレルギーがある人は、カモミールにも反応することがあるとされる。重い場合はアナフィラキシーに至った例も報告されており、キク科アレルギーの自覚がある人は避けるのが基本だ。

妊娠中・授乳中の人: カモミールをはじめとするハーブティーは、妊娠中・授乳中の安全性について十分なデータが揃っていないものが多い。厚生労働省の「統合医療」情報サイトでも、ハーブ類は医薬品と相互作用する可能性が指摘されており、体質やタイミングによる影響を断定できない。妊娠中・授乳中の人がハーブティーを日常的に取り入れたい場合は、自己判断で量を増やさず、かかりつけの医師や薬剤師に相談してから習慣にするのが望ましい。

服薬中の人: ハーブティーの中には、常用している薬と相互作用する可能性が指摘されているものもある。持病があり薬を服用している場合も、習慣的に飲む前に医療者に確認しておくと安心だ。

これらはハーブティーを禁じる話ではなく、「体質や状況によっては合わない場合がある」という前提を知ったうえで選ぶための情報だ。持病がなく、キク科アレルギーの心当たりもない人にとって、カモミールは夜の定番になりうる一杯である。

シーン別の選び方

飲み会の代わりに、家で夜を締めたいとき: 香ばしさが「一日の終わり」を感じさせてくれる麦茶や黒豆茶、そば茶が合わせやすい。温かい状態で提供すれば、乾杯代わりの一杯としての儀式性も生まれる。

食後、口の中をリセットして頭を切り替えたいとき: ペパーミントティーのすっきりとした清涼感が向いている。脂っこい食事のあとや、仕事モードから離れたい夜に。

特別感のある一杯で夜を締めたいとき: カモミールティーの甘い香りは、いつもの夜を少し特別なものに変えてくれる。マグカップを両手で包むような温度で淹れると、香りの立ち方も変わる。

「お茶らしい一杯」がほしいが、カフェインは避けたいとき: ルイボスティーが紅茶に近い満足感を与えてくれる。ミルクを少量加えても味がまとまりやすい。

ある程度のカフェインは許容できるが、控えめにしたいとき: 玄米茶や番茶を、量とタイミングを意識しながら選ぶとよい。ほうじ茶を選ぶ場合は、せん茶と同程度のカフェインがあることを踏まえた上で。

よくある質問

ほうじ茶は本当にノンカフェインではないのですか?

はい、ノンカフェインではありません。日本食品標準成分表(2020年版・八訂)によると、ほうじ茶の浸出液は100mLあたり20mgのカフェインを含み、これはせん茶(緑茶)と同じ量です。「香ばしくて優しい味だからカフェインも少ない」というのはよくある誤解で、成分表上は番茶・玄米茶(各10mg)よりも多い量になります。

麦茶にカフェインは本当に入っていないのですか?

入っていません。麦茶は大麦を原料とする「茶外茶」で、茶葉(チャノキ)を使っていないため、カフェインを生成する成分自体を含みません。妊娠中や就寝前でも量を気にせず飲める選択肢です。

カモミールティーは毎晩飲んでも大丈夫ですか?

キク科アレルギーがなく、妊娠中・授乳中でもなく、服薬による相互作用の懸念がない人であれば、日常的に楽しむこと自体は広く行われている。ただしキク科アレルギーがある人は避けるべきで、妊娠中・授乳中の人や持病で服薬中の人は、習慣にする前に医師や薬剤師へ相談することをおすすめする。

低カフェインのお茶は何時までに飲むのが目安ですか?

カフェインの影響には個人差が大きく、「何時まで」という一律の答えはない。就寝前の数時間はカフェインを含む飲み物を避けたいと考える場合は、ほうじ茶・番茶・玄米茶よりも、麦茶やハーブティーなど完全にノンカフェインのお茶を選ぶほうが確実だ。

夜にお茶を選ぶこと自体に、どんな意味がありますか?

「飲まない」を我慢の穴埋めにするのではなく、香りや温度を自分で選ぶ時間として楽しむこと自体が、夜の締めくくりの質を変える。どのお茶を選ぶかより、湯気を待つ数分そのものが「今日を終える」合図になる、という捉え方もできる。

まとめ

夜に飲むお茶を選ぶときの軸はシンプルだ。まず、茶葉(チャノキ)由来かどうかで、ノンカフェインか低カフェインかが決まる。麦茶・ルイボスティー・カモミール・黒豆茶・そば茶・コーン茶・ミントティーは原料からしてカフェインを含まず、確実性を求めるならここから選ぶのが近道になる。一方、ほうじ茶・番茶・玄米茶はゼロではなく、特にほうじ茶はせん茶と同量のカフェインを含む点を覚えておきたい。そのうえで、カモミールなどハーブティーには体質・妊娠中・服薬中の注意点があることも押さえておく。

数値を知った上で選ぶ一杯は、なんとなく選ぶ一杯より、夜の締めくくりとしての満足度が高い。抹茶とカフェインの関係は抹茶のカフェインはコーヒーの何倍?で、お茶の成分とくつろぎの関係はL-テアニンの研究で詳しく扱っている。眠りとの関係を深く知りたい人は寝酒と睡眠の科学、夜全体の過ごし方を設計したい人は飲まない夜のリカバリー完全ガイドもあわせて参考にしてほしい。

参考文献