テアニンは、お茶の葉に含まれるアミノ酸の一種で、緑茶特有の「うま味」を生み出している成分です。近年は「リラックス成分」としてサプリメントや機能性表示食品にも使われるようになりましたが、その研究がどこまで進んでいるのか、正確に把握している人は多くありません。この記事では、テアニンの基礎知識から、リラックス・睡眠に関する研究の現在地、日本の機能性表示食品制度での扱い、お茶とサプリメントの含有量の目安までを、出典を明記しながら整理します。
この記事の要点
- テアニンは茶葉に多く含まれるアミノ酸で、玉露や抹茶に多いのは「被覆栽培」によってカテキンへの変化が抑えられるためです
- リラックス指標であるα波の増加や、主観的な睡眠の質の改善を示す研究がありますが、いずれも「示唆」レベルの報告にとどまります
- 日本では機能性表示食品の関与成分として複数の製品に使われていますが、これは事業者の届出制度であり、消費者庁による個別の審査を経たものではありません
テアニンとは何か — なぜ玉露や抹茶に多いのか
テアニンは、グルタミン酸の側鎖にエチルアミンが結合した構造を持つアミノ酸の一種で、チャノキの根で合成されたのち葉に蓄積します。日本語版Wikipediaの記述によれば、1950年に京都府立農業試験場茶業研究所によって玉露から発見され、1964年には日本国内で食品添加物として指定されました。チャノキ以外の植物・生物ではほとんど見つかっておらず、お茶を特徴づける成分のひとつとされています。
お茶の中でテアニンが特に多いのが、玉露や抹茶(碾茶)です。京都府茶業研究所の解説によれば、茶葉に蓄えられたテアニンは日光を浴びることでカテキン(渋み成分)へと変化していきますが、玉露や碾茶のように収穫前に茶園を覆って日光を遮る「被覆栽培」を行うと、このカテキンへの変化が抑えられ、テアニンを豊富に含んだまま葉が育ちます。同研究所は、テアニンが茶の全遊離アミノ酸の4割以上を占める主要な旨味成分であり、乾燥重量あたり2〜5%程度含まれると説明しています。被覆によって同時に茶園の気温も下がるため、旨味の多さと渋みの少なさが重なって「銘茶」と呼ばれる味わいが生まれる、という位置づけです。
つまり「玉露や抹茶がなぜ甘みや旨味を感じさせるのか」という問いへの答えの中心にあるのが、このテアニンだということになります。抹茶を淹れる際のカフェインについては、抹茶のカフェインはコーヒーの何倍? で別途詳しく扱っています。
リラックス指標の研究の現在地 — α波は本当に増えるのか
テアニンが「リラックス成分」と呼ばれる根拠のひとつが、脳波のα波(アルファ波)に関する研究です。α波は、目を閉じて安静にしているときや、落ち着いた覚醒状態にあるときに多く観測される脳波の一種で、リラックスの生理的な指標のひとつとして扱われます。
代表的な研究として、Nobre・Rao・Owenらが2008年にAsia Pacific Journal of Clinical Nutrition誌に発表した論文では、被験者にL-テアニンまたはプラセボを摂取させたうえで安静時の脳波を測定したところ、テアニン摂取群でプラセボ群よりも大きなα波活動の増加が観察されたと報告されています。これは「お茶を飲むと感じるような、落ち着いているのに眠くはならない感覚」を裏づける知見として引用されることが多い研究です。
ただし、これらの研究の多くは少人数を対象とした短期の実験であり、「テアニンを摂取すれば誰でも確実にリラックスできる」と断定できる段階ではありません。あくまで「α波の増加が報告されている」「リラックス指標の変化を示唆する研究がある」という距離感で捉えるのが適切です。
睡眠の質に関する研究の現在地
睡眠との関係についても、近年になって研究の蓄積が進んでいます。Bulmanらが2025年にSleep Medicine Reviews誌に発表したシステマティックレビュー・メタ分析(19件の研究・参加者897人を統合)では、L-テアニンの摂取によって、主観的な入眠までの時間(睡眠潜時)、日中の機能不全感、総合的な睡眠の質スコアのいずれにおいても、統計的に有意な改善が確認されたと報告されています。
この結果は前向きな内容ですが、報告されている改善の効果量自体は小さく、研究ごとに摂取量や対象者、測定方法にばらつきがある点には注意が必要です。著者らも今後さらに質の高い研究の蓄積が必要だとしており、「睡眠の質を大きく変える」という強い主張ではなく、「主観的な睡眠指標に一定の改善が報告されている」という水準で理解しておくのが妥当です。
寝る前の飲み物という観点では、夜に飲めるお茶ガイド でノンカフェインの選択肢を紹介しています。また、そもそもアルコールが睡眠の質に与える影響については 寝酒は睡眠の質を下げる で詳しく解説しています。
カフェインとの同時摂取に関する研究
お茶にはテアニンと同時にカフェインも含まれているため、この組み合わせに関する研究も進んでいます。Nawarathnaらが2025年にBritish Journal of Nutrition誌に発表した研究では、17時間の徹夜による睡眠不足状態の若年成人37人を対象に、L-テアニン200mgとカフェイン160mgを組み合わせて摂取させたところ、プラセボと比較して選択的注意課題の正答率や反応時間が有意に改善したと報告されています。
これらの知見をふまえると、テアニンとカフェインの組み合わせは「カフェイン単独よりも穏やかな覚醒感」を生む可能性が示唆される研究領域だと言えます。ただし、テアニンとカフェインを同時に摂取した場合の睡眠への影響については研究間で結論が一致しておらず、就寝前のカフェイン摂取自体は睡眠の質を下げる可能性が広く報告されているため、テアニンを摂ったからといって就寝前のカフェイン摂取が問題なくなるわけではありません。国立健康・栄養研究所の「健康食品」の安全性・有効性情報でも、カフェインなどの興奮剤との併用によってテアニンの作用が弱まる可能性が指摘されています。
日本の機能性表示食品制度でのテアニンの扱い
日本では2015年に「機能性表示食品」制度が始まり、テアニン(多くはL-テアニンという表記)は、この制度の関与成分としてすでに複数の製品に使われています。消費者庁の届出情報検索データベースで確認できる範囲では、「仕事や勉強などによる一時的な精神的ストレスや疲労感をやわらげる」「良質な眠りをサポートする」といった趣旨の届出表示を掲げる製品が複数存在します。
ここで押さえておきたいのは、機能性表示食品は特定保健用食品(トクホ)とは異なり、消費者庁による個別の審査を経た制度ではないという点です。事業者が自らの責任において、公表されている科学的根拠(査読論文やレビュー)をもとに機能性を届け出る仕組みであり、届出が受理されたからといって、その効果が国によって保証されたわけではありません。パッケージの表示を読む際は、「〜という機能があると事業者が届け出ている食品である」という制度の性質を理解したうえで、参考情報のひとつとして受け止めるのが適切です。
含有量の目安 — お茶1杯とサプリメントの用量
テアニンの含有量は、茶葉の品種・栽培方法・淹れ方によって幅があり、出典によって数値にも差があります。参考として、専門書のデータをもとに算出された茶葉2gあたりのテアニン含有量の目安は次のとおりです。
| お茶の種類 | テアニン量の目安(茶葉2gあたり) |
|---|---|
| 抹茶 | 約72mg |
| 玉露 | 約62mg |
| 煎茶 | 約38mg |
| 番茶 | 約13mg |
| ほうじ茶 | 約3mg |
※日本食品工業学会誌(1970年)・茶業研究報告(1994年)のデータをもとにした算出値であり、実際の抽出量は湯温・浸出時間・茶葉の産地や収穫時期によって変動します。あくまで種類間の相対的な傾向を把握するための目安として参照してください。
一方、サプリメントとして販売されているテアニンの多くは、1回あたり100〜200mg程度を配合しているものが一般的です。前述の機能性表示食品では、1日あたりの摂取目安量として200mgを関与成分量に設定している製品が多く見られます。お茶を飲むだけでこの量に届かせようとすると、抹茶を何杯も飲む必要があり、日常的な喫茶で摂れる量とサプリメントで想定されている量には、相応の開きがあることは知っておくとよいでしょう。
安全性の一般的知見
テアニンは長年にわたり食品として摂取されてきた成分であり、米国食品医薬品局(FDA)は食品添加物として一般に安全と認められる「GRAS」に分類しています。国立健康・栄養研究所の「健康食品」の安全性・有効性情報でも、ラットを用いた研究で高濃度のテアニンを繰り返し投与しても心身への明確な害は見られなかったと紹介されています。
一方で、いくつか知っておきたい注意点もあります。同データベースでは、テアニンが降圧剤(血圧を下げる薬)の作用を強める可能性、カフェインなど興奮剤との併用でテアニンの作用が弱まる可能性が指摘されています。血圧の薬を服用している方や、他のサプリメント・医薬品を併用している方は、自己判断で摂取量を増やさず、事前に医師や薬剤師に相談することをおすすめします。また、妊娠中・授乳中の方や持病のある方も、摂取前に専門家に確認しておくと安心です。
SHIRAFU文脈: お茶という「代わりの一杯」の科学
SHIRAFUがテアニンを取り上げるのは、単なる健康成分の紹介としてではなく、「飲まない夜」の代わりの一杯として、お茶がどのような立ち位置にあるのかを知っておいてほしいからです。
晩酌の代わりに一杯のお茶を選ぶという行為には、単に「アルコールを避ける」というマイナスの発想だけでなく、テアニンのような研究の蓄積があるお茶の成分に目を向けるという、積極的な選択の側面もあります。もちろん、お茶を飲んだからといって劇的な変化が保証されるわけではなく、あくまで「示唆」レベルの研究が積み重なっている段階です。私たちはテアニンやお茶に関しても、特定のブランドや商品に偏った紹介はせず、公開されている研究や制度の情報を中立的に伝えることを心がけています。
夜の一杯としてどんなお茶を選ぶかは、夜に飲めるお茶ガイド で選択肢を紹介しています。そして、飲まない夜が翌朝のコンディションにどうつながるかについては、「キマる朝」の作り方 で詳しく解説しています。テアニンを含むお茶は、あくまで「飲まない夜」を我慢の時間ではなく積極的な選択の時間に変えるための、数ある選択肢のひとつに過ぎません。
よくある質問
テアニンとカフェインは同時に摂って大丈夫?
お茶にはもともとテアニンとカフェインの両方が含まれており、日常的な喫茶の範囲であれば大きな問題はないとされています。ただし、カフェインとの併用でテアニンの作用が弱まる可能性が指摘されているほか、就寝前のカフェイン摂取は睡眠の質を下げる可能性が広く報告されているため、夜遅い時間はノンカフェインのお茶を選ぶなど工夫することをおすすめします。
テアニンを摂ればすぐにリラックスできる?
α波の増加や主観的なリラックス指標の改善を示す研究はありますが、効果には個人差があり、即効性や確実性を保証するものではありません。「摂取すれば必ずリラックスできる」と断定はできず、あくまで研究で示唆されている傾向として捉えるのが適切です。
抹茶と玉露、どちらがテアニンは多い?
参考文献をもとにした算出値では、茶葉2gあたりの含有量は抹茶の方がやや多いとされていますが、実際に湯で淹れた際の抽出量は湯温や浸出時間によっても変わります。いずれも被覆栽培によってテアニンが豊富に残る点は共通しています。
機能性表示食品のテアニンは、効果が国に認められているということ?
いいえ、そうではありません。機能性表示食品は、事業者が自らの責任において科学的根拠を示し、消費者庁に届け出る制度であり、特定保健用食品(トクホ)のような個別審査を経たものではありません。届出表示はあくまで事業者の見解として理解する必要があります。
サプリメントでテアニンを摂る場合の目安量は?
機能性表示食品では1日あたり200mgを目安量とする製品が多く見られますが、これは製品ごとの届出内容によって異なります。持病がある方や薬を服用中の方は、自己判断で量を増やさず、事前に医師や薬剤師に相談してください。
参考文献
- Nobre AC, Rao A, Owen GN.「L-theanine, a natural constituent in tea, and its effect on mental state」Asia Pacific Journal of Clinical Nutrition. 2008;17(Suppl 1):167-168. PMID: 18296328
- Bulman A, D'Cunha NM, Marx W, Turner M, McKune A, Naumovski N.「The effects of L-theanine consumption on sleep outcomes: A systematic review and meta-analysis」Sleep Medicine Reviews. 2025;81:102076. https://doi.org/10.1016/j.smrv.2025.102076
- Nawarathna GS, Ariyasinghe DI, Dassanayake TL.「High-dose L-theanine–caffeine combination improves neurobehavioural and neurophysiological measures of selective attention in acutely sleep-deprived young adults: a double-blind, placebo-controlled crossover study」British Journal of Nutrition. 2025;134(3):195-204.
- テアニン - Wikipedia日本語版. https://ja.wikipedia.org/wiki/テアニン
- 京都府茶業研究所「テアニンについて」. https://www.pref.kyoto.jp/chaken/teanin.html
- お茶百科(伊藤園)「アミノ酸(テアニン)|お茶の成分と健康性」. https://www.ocha.tv/components_and_health/benefits_greentea/theanine/
- 国立健康・栄養研究所「健康食品」の安全性・有効性情報 素材情報データベース. https://hfnet.nibiohn.go.jp/material-info/
- 消費者庁 機能性表示食品の届出情報検索. https://www.caa.go.jp/policies/policy/food_labeling/foods_with_function_claims/search
- おちゃらいふ「緑茶のテアニン量はどのくらい?」(日本食品工業学会誌1970年・茶業研究報告1994年のデータを基に算出). https://teeelife.com/janpanese-tea-theanine/
本記事は医療・栄養指導ではありません。持病・服薬のある方は医師にご相談ください。