「抹茶はコーヒーよりカフェインが多い」という話を聞いたことがあるかもしれません。これは間違いではありませんが、正確でもありません。結論から言うと、答えは「何を基準に比べるか」で逆転します。この記事では、日本食品標準成分表のデータをもとに、抹茶とコーヒーのカフェイン量を「粉末100gあたり」と「実際に飲む1杯あたり」の両方で比較し、夜に抹茶を楽しみたいときの現実的な選択肢まで整理します。

この記事の要点

  • 「抹茶はカフェインが多い」という話は、茶葉をまるごと使う粉末(100gあたり3,200mg)と、抽出後のコーヒー液(100mLあたり60mg)という状態の違う数字を並べたものです。単位(gとmL)も状態(粉末と液体)も異なるため、そのまま「何倍」と割り算できる比較ではありません
  • しかし実際に飲む1杯あたりで比べると、抹茶1杯(抹茶1.5g使用・約48mg)はコーヒー1杯(ドリップ150mL・約90mg)の半分程度で、むしろコーヒーの方が多くなります
  • カフェインの半減期は健康な成人で平均約4時間(範囲2〜8時間、EFSA)。就寝の4〜6時間前を目安に量を調整するのが現実的です

抹茶のカフェインはコーヒーの何倍? — 基準で答えが変わる

文部科学省「日本食品標準成分表」によると、抹茶(粉末)のカフェイン含有量は100gあたり3.2g(3,200mg)です。一方、コーヒー(浸出液)は100mLあたり60mgとされています。「抹茶は実はカフェインが多い」という話の多くは、この2つの数字を並べたものです。ただし、抹茶は「粉末100gあたり」、コーヒーは「浸出液100mLあたり」で、単位(gとmL)も状態(粉末と抽出後の液体)も異なります。両者を割り算して「何倍」と言える関係にはなく、この数字だけで濃さを比べることはできません。

ただし、これは粉末と浸出液という別々の状態を比べているため、実際に飲む量としてはフェアな比較になっていません。コーヒー100mLを飲むことは日常的ですが、抹茶の粉末を100gまるごと飲むことはあり得ないからです。

そこで、実際に淹れて飲む「1杯あたり」で比べ直します。内閣府食品安全委員会のファクトシートには、抹茶1杯(抹茶1.5g・70〜80℃の湯70mL)のカフェイン含有量が48mgと示されています。これに対し、コーヒー1杯(コーヒー粉末10g・熱湯150mLで抽出したドリップコーヒー)のカフェイン量は約90mgです。家庭での点て方は道具ゼロから始める抹茶の点て方で紹介しています。

つまり、実際に飲む1杯という単位で比べると、抹茶(48mg)はコーヒー(90mg)のおよそ半分程度にとどまります。「抹茶はコーヒーの何倍?」という問いに、原料の粉末と抽出後の飲料を単純に割り算して答えることはできません。意味のある比較は「実際に飲む1杯あたり」で、その場合は抹茶がコーヒーの約半分です。粉末100gという単位はそもそも飲用する量ではないため、そこから導いた「何倍」という数字は比較の土俵が噛み合っていないことに注意が必要です。

カフェイン量比較表 — 抹茶・お茶類・コーヒー

浸出液(飲料として抽出した状態)のカフェイン濃度と、実際に飲む1杯あたりの量を並べました。

飲料カフェイン濃度1杯の目安1杯あたりのカフェイン量
抹茶(薄茶)3.2g/100g(粉末)抹茶1.5g・湯70mL約48mg
コーヒー(ドリップ)60mg/100mL150mL約90mg
玉露160mg/100mL茶葉10g・湯60mL(伝統的な淹れ方)約96mg
紅茶30mg/100mL150mL換算約45mg
せん茶(緑茶)20mg/100mL150mL換算約30mg
ほうじ茶20mg/100mL150mL換算約30mg

出典: 文部科学省「日本食品標準成分表」、内閣府食品安全委員会ファクトシート「食品中のカフェイン」。玉露は少量の湯に多めの茶葉を使う淹れ方のため、浸出液のカフェイン濃度が高くなります。せん茶・紅茶・ほうじ茶は成分表の浸出条件(せん茶:茶10g/90℃430mL/1分、紅茶:茶5g/熱湯360mL/1.5〜4分)から150mLあたりに換算した参考値です。抹茶とほうじ茶などノンカフェイン・低カフェインの選択肢の詳しい比較は夜に飲めるお茶ガイドで扱っています。

この表からわかるのは、玉露が実は最もカフェイン濃度の高いお茶だという点です。玉露は低温の湯で渋みを抑えつつ、少量の湯に対して多めの茶葉(10g程度)を使うため、1杯あたりのカフェイン量が高くなります。低温だからカフェインが多く出るわけではなく、むしろ低温はカフェインの溶出を抑える方向に働きます。玉露のカフェインが多いのは、被覆栽培で茶葉自体のカフェインが多いことと、濃く淹れる淹れ方によるものです。「濃い緑色で高級な玉露=カフェインが強い」という印象は、成分表の1杯あたりの数字とも一致しています。

なぜ「抹茶はカフェインが多い」と言われるのか

抹茶が茶葉をまるごと粉末にして飲む形態であることが、この誤解の背景にあります。せん茶や玉露は茶葉に湯を注いで成分を「浸出」させ、出がらしの葉は捨てます。一方、抹茶は茶葉そのものを粉にして丸ごと摂取するため、同じグラム数の茶葉から抽出できるカフェインの量は、浸出液より圧倒的に多くなります。100gあたりの数字が跳ね上がるのはこのためです。

ただし実際に茶碗に立てる抹茶の量は1.5〜2g程度で、玉露のように10gの茶葉を使うわけではありません。「原料の濃度が高い」ことと「実際に飲む量に含まれるカフェイン量」は別の話であり、この記事の比較表が示す通り、1杯単位で見れば抹茶はコーヒーよりもむしろ少なめです。

カフェインの半減期はどのくらい? 就寝前に飲んでも大丈夫か

欧州食品安全機関(EFSA)によると、カフェインの半減期(体内のカフェイン量が半分になるまでの時間)は、健康な成人で平均およそ4時間、個人差により2〜8時間の範囲とされています。年齢・体重・肝機能・妊娠の有無などによって、この時間は大きく変わります。半減期から「何時までに飲むか」を逆算する設計はカフェインは何時まで?で詳しく扱っています。

EFSAは同時に、就寝に近いタイミングで摂取した単回100mg程度のカフェインが、一部の成人で睡眠の長さやパターンに影響を与える可能性があるとも指摘しています。抹茶1杯(約48mg)はこの目安の半分程度ですが、感受性が高い人や、他の飲料と合わせてカフェインを摂取している場合は、影響が出ないとは言い切れません。

半減期が平均4時間であることを踏まえると、就寝時刻から逆算して4〜6時間前までに摂取を終えるのが、ひとつの現実的な目安になります。カフェインへの感受性には個人差が大きいため、「これくらいなら平気」という自己判断だけに頼らず、体感の変化を観察しながら自分なりの時間を見つけていくのが実際的です。

テアニンがあるとカフェインの感じ方は変わる?

抹茶やお茶類には、リラックスに関わるとされるアミノ酸「L-テアニン」が含まれています。カフェインを飲んだときの体感が、コーヒーとお茶とで違うと感じる人がいる背景には、このテアニンの存在が関係していると考えられています。

伊藤園中央研究所と愛媛県立医療技術大学が2014年に日本食品科学工学会で発表した研究では、健康な成人にカフェインとテアインを組み合わせて摂取させたところ、テアニン単独摂取時よりも、カフェインによる興奮作用が緩和される傾向が確認されたとされています。これは「テアニンがカフェインの効き方を穏やかにする可能性がある」という示唆であり、抹茶を飲めば眠りへの影響が消えるという意味ではありません。あくまで体感の違いを説明しうる一因として捉えるのが妥当です。

夜に抹茶を楽しみたいときの現実的な選択肢

抹茶そのものが好きで、夜の時間にも取り入れたい場合、いくつかの現実的な調整方法があります。

「夜は抹茶をやめる」という引き算ではなく、「量とタイミングを調整して楽しむ」という発想のほうが、無理なく続けやすいはずです。テアニンとリラックスの関係についてはL-テアニンの研究で、寝る前の飲み物全般との付き合い方は寝酒と睡眠の科学でさらに詳しく解説しています。

よくある質問

抹茶ラテなら夜でも平気ですか?

抹茶ラテに使われる抹茶の量は店舗や製品によって幅がありますが、一般的な抹茶パウダーの使用量(数g程度)であれば、通常の抹茶1杯と大きくは変わらないと考えられます。就寝前に飲む場合は、量を控えめにする、時間を早めるといった調整を検討してください。

抹茶とコーヒー、覚醒作用が強いのはどちらですか?

粉末100gあたりの数字だけを見ると抹茶が多く見えますが、これは実際に飲む状態の量ではありません。実際に1杯として飲む量で比べると、コーヒー(約90mg)の方が抹茶(約48mg)よりもカフェイン量は多くなります。体感の覚醒作用にはカフェイン量以外に個人差や慣れも影響するため、一概にどちらが強いとは言い切れません。

テアニンを摂ればカフェインの影響はなくなりますか?

なくなりません。テアニンがカフェインの興奮作用を緩和する可能性を示す研究はありますが、これは「作用が穏やかになりうる」という示唆であり、カフェイン自体の摂取量や半減期がなくなるわけではないためです。

子供や妊娠中の人は抹茶を避けるべきですか?

食品安全委員会やEFSAは、妊婦や子供のカフェイン摂取量についてそれぞれ目安を示しています。抹茶に限らず、カフェインを含む飲料全体の合計量で管理することが基本となるため、妊娠中の方や子供にカフェイン入り飲料を与える場合は、かかりつけの医師に相談することをおすすめします。

玉露が抹茶よりカフェインが多いのはなぜですか?

玉露は栽培段階で茶葉に覆いをして日光を遮る「被覆栽培」を行うため、旨み成分(テアニン)とともにカフェインも多く生成される傾向があるとされています。加えて、少量の湯に多めの茶葉を使う淹れ方のため、1杯あたりのカフェイン量が高くなります。低温でじっくり淹れるのは渋みや苦みを抑えるためで、低温だからカフェインが多く抽出されるわけではありません。

まとめ

「抹茶はコーヒーの何倍のカフェイン?」という問いに一言で答えることはできません。粉末100gと浸出液100mLという状態の違う数字は単純に割り算できず、意味のある比較は「実際に飲む1杯あたり」です。1杯で比べればコーヒーの方が多い、というのが日本食品標準成分表と食品安全委員会のデータに基づく答えです。半減期は平均約4時間、範囲は2〜8時間とされており、就寝の4〜6時間前を目安に量とタイミングを調整すれば、抹茶を我慢せずに夜と付き合っていくことができます。数字を知った上で選ぶ一杯は、なんとなく避けたり飲んだりする一杯より、納得感のある選択になるはずです。

参考文献

免責事項

本記事は一般的な情報提供を目的としており、医療・栄養指導ではありません。成分の感じ方や体への影響には個人差があります。持病のある方、服薬中の方、妊娠中・授乳中の方は、摂取の前に医師・薬剤師にご相談ください。