忘年会や歓送迎会の幹事を任されたとき、飲む人と飲まない人の両方に気を配ろうとしても、何をどれだけ用意すればいいのか目安がないまま当日を迎えてしまうことは少なくありません。結論から言えば、幹事の仕事は「飲めない人に個別対応する」ことではなく、最初から誰もが選べる状態を設計しておくことです。ここでは、参加人数に対する注文比率の考え方、予算配分の目安、店への事前確認事項、そして乾杯進行時に使える言葉選びを、飲食店側の調査データを踏まえて整理しました。
この記事の要点
- ノンアルコール飲料は8割超の飲食店が提供しており、「特別対応」ではなく標準メニューとして確認できる
- 注文比率の目安は、飲み会全体でノンアルを含む非アルコール飲料を注文する人が6割強という調査を踏まえ、幹事側の準備目安として2〜3割を起点に考えるのが現実的
- 予算は一人当たり4,000円台後半が相場の中心で、ノンアル分を別枠にせず全体予算に組み込むのが実務的
- 店への事前確認は「品揃え」「飲み放題への含有」「在庫数」の3点が特に重要
- 乾杯の音頭は「お酒で乾杯」ではなく「お好きな飲み物で乾杯」と言い換えるだけで、場の設計が変わる
幹事に求められているのは「気を利かせる」ことではなく「設計」
「飲めない人がいたら店員さんに聞いてもらえばいい」という進め方は、当日になって特定の参加者だけが注文に手間取ったり、乾杯のタイミングでグラスの中身が用意できていなかったりする原因になります。幹事の役割は、誰か一人に気を利かせることではなく、最初から飲む人と飲まない人のどちらにとっても迷いなく選べる場を組み立てておくことです。
この視点は近年、飲食店側の対応にも表れています。株式会社シンクロ・フードが2024年3月8日〜18日に飲食店経営者・運営者404人を対象に行った調査では、81.4%の店舗がノンアルコール飲料を「提供している」と回答しており、接待で飲まずに信頼を得るでも紹介した通り、ノンアルコール対応はすでに一部の店だけの特別なサービスではなく標準的なメニューの一部になっています。つまり幹事にとって「ノンアルを用意できるか」は店選びの段階でほぼ心配のいらない条件になりつつあり、問題は「用意されているメニューをどう使うか」という運営設計の側に移っています。
実際、幹事自身がノンアルコール・ソフトドリンクの充実を重視する声も、以前から確認できます。株式会社オーイズミフーズが2018年1月12日〜18日に有効回答7,858件を集めた調査では、幹事が飲み放題プランに求める内容として「ビールは必須」「お酒の種類が豊富」という回答が上位を占める一方、自由回答では「ノンアルコール・ソフトドリンクの充実」を求める声が153件、「ソフトドリンクだけの飲み放題」を求める声も23件寄せられており、ドライバーや飲まない参加者への配慮を幹事自身が重要な関心事として捉えていることがうかがえます。
何人にどれだけ用意するか — 注文比率の考え方
実際にどのくらいの割合でノンアルコールを想定しておけばいいのか、幹事にとって一番悩ましいのがこの比率です。ここで参考になるのが、ぐるなび通信が2022年4月5日〜7日に全国20〜69歳の男女1,281人を対象に行った調査です。飲食店でノンアルコール・ソフトドリンクを「注文することがある」人の割合は63.4%(いつも14.8%+ときどき22.2%+たまに26.4%)にのぼり、飲み会の場でアルコール以外の飲み物を選ぶこと自体は、すでに珍しい行動ではないことが読み取れます。
この数字をそのまま「参加者の6割にノンアルを用意する」と捉える必要はありません。あくまで「たまに注文する」層まで含めた広い数字であり、実際に乾杯からノンアル一本で通す人はその一部です。幹事の準備目安としては、乾杯用のノンアルコールビールやスパークリングを参加人数の2〜3割分を起点に見積もり、当日の追加注文で調整できる体制を店側と事前に確認しておく、という考え方が現実的です。以下は、この考え方をもとにした人数別の目安です。実測データではなく、幹事が発注時に迷わないための編集上の目安として使ってください。
| 参加人数 | 乾杯用ノンアルの目安本数 | 想定する比率 | 運営上の注意点 |
|---|---|---|---|
| 10人前後 | ノンアルビール・スパークリング計3〜4本 | 全体の2〜3割 | 飲み放題プランでも別注文が必要な店が多い |
| 20人前後 | 計6〜8本 | 全体の2〜3割 | 幹事が乾杯直前に個別確認するより、事前アンケートが有効 |
| 30人以上 | 計10本前後+予備2〜3本 | 全体の2〜3割+予備 | 店舗側の在庫上限を事前に確認しておく |
若手中心の会や、健康志向・車移動が多い参加者層とわかっている場合は、この比率をさらに引き上げて発注する判断も十分に成り立ちます。逆に、参加者の年齢層や過去の飲み会の傾向からアルコール志向が強いと分かっている場合は、比率を下げつつも「ゼロにしない」ことが重要です。乾杯だけでもノンアルに切り替える動きが広がっている背景は『乾杯だけ』問題の解き方で詳しく解説しています。
予算配分の考え方 — ノンアル分を別枠にしない
予算の全体感を押さえておくと、ノンアル分の配分も判断しやすくなります。ぐるなび通信が2025年9月2日〜5日に全国20〜60代のぐるなび会員1,330人を対象に行った調査では、ビジネス忘年会の予算相場は平均4,445円、プライベート忘年会は平均5,085円でした。開催規模は、ビジネスでは「7〜10人」30%・「11〜20人」24.2%が主流で、プライベートでは「5〜6人」39.9%・「4人以下」36.4%と小規模志向が目立ちます。
この予算の中で、ノンアルコールをことさら「特別な追加費用」として別枠にする必要はありません。多くの店では飲み放題プランの中にノンアルコールビールやソフトドリンクが標準で含まれており、追加料金が発生するのは高価格帯のノンアルコールスパークリングやモクテルを個別注文する場合に限られます。幹事としては、コース料金に含まれる範囲を確認したうえで、含まれない銘柄を希望する参加者がいる場合のみ個別会計にするか、会全体の会費に上乗せするかを事前に決めておくと、当日の会計トラブルを避けられます。
店に事前確認しておくべきこと
当日になって「ノンアルの在庫が足りない」「飲み放題に含まれていなかった」という事態を避けるために、予約時に確認しておきたい項目を整理しました。
- ノンアルコールメニューの品揃えと本数: ビールタイプ・スパークリングタイプがそれぞれ何本用意できるか
- 飲み放題プランへの含有有無: 標準プランに含まれるか、追加料金プランが必要か
- 乾杯用の在庫確保: 開始時間に合わせて人数分を卓上に揃えられるか
- 会計区分: ノンアル分を個別会計にするか、コース料金に含めるか
これらは電話やメールでの事前予約時に一度に確認してしまえば、当日の運営で慌てる場面をほぼなくせます。オーイズミフーズの調査が示すように、幹事自身がこうした点を重視していることは以前から変わっていません。品揃えの少ない店であれば、事前に希望を伝えて仕入れを相談してみる価値もあります。
乾杯進行での言葉選び — 全員が参加できる一言
幹事、あるいは乾杯の発声を任された人がかける最初の一言は、その後の会全体の空気を決めます。「とりあえずビールで乾杯」という号令は、飲まない参加者に「合わせなければ」という無言のプレッシャーを与えかねません。代わりに使える言い回しとして、次のような一言があります。
「皆さま、グラスの中身は問いません。お好きな飲み物で乾杯をお願いします」——このひと言を発声の前に添えるだけで、ノンアルコールを手にしている参加者も、アルコールを手にしている参加者も、同じ動作で乾杯に加われます。飲む夜も、あえて飲まない夜も同じ格で扱われるべきだという考え方は、幹事の一言によって場の空気として実現できます。
乾杯の号令を任された人が状況を把握していない場合に備え、幹事から事前に「今日は飲み放題にノンアルも含まれているので、乾杯の際は『お好きな飲み物で』と一声添えてください」と頼んでおくのも有効です。参加者本人が「なぜ飲まないのか」と聞かれた場合の切り返し方は『なんで飲まないの?』への切り返しフレーズ集にまとめてありますが、幹事の側でそもそも聞かれる場面を減らす設計をしておくことが、根本的な解決になります。
当日の運営で気をつけたいこと
事前準備を整えても、当日の細かな運営次第で効果が薄れてしまうことがあります。まず、参加確認の段階で「ノンアルコール希望」の欄をアンケートに設けておくと、当日の注文がスムーズになります。乾杯直前になって一人ひとりに希望を聞くと、時間もかかり、聞かれた側も気を遣います。
また、注文が来た飲み物は、アルコールかノンアルコールかにかかわらず同じタイミングで卓上に配るよう店にお願いしておくと、乾杯の瞬間に「自分だけまだ届いていない」という状況を避けられます。会の途中で追加注文を促す際も、「お酒のおかわりどうですか」ではなく「お飲み物のおかわりどうですか」という言い方に変えるだけで、ノンアルコール派の参加者も自然に追加注文しやすくなります。こうした声かけの積み重ねが、飲めない・飲まない人への圧力になりがちな職場の空気を変える一歩にもなります。飲み会特有の同調圧力の構造についてはアルハラ(アルコールハラスメント)とは?で詳しく扱っています。
よくある質問
ノンアルコールの注文比率はどのくらいを目安にすればいいですか
確立した統計基準があるわけではありませんが、飲食店でノンアルコール・ソフトドリンクを注文することがある人が6割強にのぼるという調査を踏まえると、乾杯用としては参加人数の2〜3割分を起点に発注し、当日の追加注文で調整できる体制を店と確認しておくのが現実的です。若手中心や車移動が多い会では、この比率を上げる判断も十分に成り立ちます。
飲み放題プランでノンアルコールは追加料金なしで頼めますか
店やプランによって異なります。標準の飲み放題プランにノンアルコールビールやソフトドリンクが含まれているケースは多い一方、ノンアルコールスパークリングやモクテルなど高価格帯の品目は別料金になることがあります。予約時に「飲み放題に含まれる範囲」を具体的に確認しておくと、当日の会計トラブルを避けられます。
乾杯の音頭で気をつける言い方はありますか
「お酒で乾杯」ではなく「お好きな飲み物で乾杯をお願いします」と一言添えるだけで、ノンアルコールを手にした参加者も自然に乾杯に加われます。乾杯を任せる人が事情を把握していない場合は、幹事から事前にひと声かけておくと安心です。
参加者の中に体質的に飲めない人がいるか、どう事前に把握すればいいですか
出欠確認のアンケートに「お飲み物の希望」を選択式で加えておくと、本人に直接尋ねずに把握できます。理由を詳しく聞く必要はなく、選択肢を用意しておくだけで十分です。
少人数の会でも、あえてノンアルを用意する必要はありますか
人数の多寡にかかわらず、ノンアルコールの選択肢を用意しておくこと自体に意味があります。少人数の会ほど「言い出しにくさ」が大きくなる場合もあるため、幹事があらかじめ選択肢を示しておくことで、参加者が気兼ねなく選べる場になります。
まとめ
幹事に求められているのは、当日に気を利かせることではなく、事前に誰もが選べる状態を設計しておくことです。ノンアルコール飲料はすでに8割超の飲食店で提供されている標準メニューであり、注文比率は参加人数の2〜3割を起点に、予算はノンアル分を特別扱いせず全体予算に組み込んで考えるのが実務的です。店への事前確認と、乾杯時の「お好きな飲み物で」という一言を押さえておけば、飲む人も飲まない人も同じ格で参加できる会になります。ノンアルコールの具体的な選び方は大人のノンアル完全ガイドも参考にしてください。
参考文献
- 株式会社シンクロ・フード「厚労省発表『飲酒ガイドライン』飲食店への影響は? ノンアルコール・低アルコール飲料提供に関する調査結果を発表」2024年3月(調査期間2024年3月8日〜18日、飲食店経営者・運営者404名対象)。https://www.synchro-food.co.jp/news/press/5792
- ぐるなび通信「『食事に合う』『さっぱり』『フルーティー』などが人気!~ノンアルコールドリンク・ソフトドリンク注文動向調査~」(調査期間2022年4月5日〜7日、全国20〜69歳男女1,281人対象)。https://pro.gnavi.co.jp/magazine/t_res/cat_2/a_3954/
- ぐるなび通信「2025年の忘年会消費者調査|参加意向・開催規模・予算・人気メニューの傾向とは」(調査期間2025年9月2日〜5日、全国20〜60代ぐるなび会員1,330人対象)。https://pro.gnavi.co.jp/magazine/t_res/cat_2/a_4685/
- 株式会社オーイズミフーズ「年代問わず“安さ”よりも“質”!『ビール必須』『お酒の種類豊富』の飲み放題が人気 歓送迎会に向けて『幹事が居酒屋に求めること』アンケートを実施」(調査期間2018年1月12日〜18日、有効回答7,858件)。https://www.atpress.ne.jp/news/150892
免責事項
本記事は公開されている調査データをもとに幹事業務の進め方を整理した一般的な情報であり、医療アドバイスではありません。記載した本数や比率は発注時の目安であり、実測データではありません。飲み放題の内容や在庫は店舗により異なるため、最終的な条件は各店へご確認ください。なお、飲酒は20歳になってから。ノンアルコール飲料も20歳未満の飲酒を連想させる形での提供・利用は控えてください。