「ビールはプリン体が多いから痛風によくない、焼酎やハイボールなら大丈夫」という話を聞いたことがある方も多いのではないでしょうか。しかし痛風・尿酸値の観点では、これは正確ではありません。日本痛風・尿酸核酸学会の治療ガイドラインや厚生労働省 e-ヘルスネットは、アルコールそのものが、含まれるプリン体の量とは別に尿酸値を上げる働きを持つと説明しています。①アルコールの代謝で生じる乳酸が腎臓からの尿酸排泄を妨げる経路と、②アルコールの代謝でATP(体内のエネルギー物質)の分解が進み、尿酸のもとになるプリン体の産生が増える経路の、主に2つです。この記事では、この2つの経路を起点に、酒の種類による違い、「プリン体ゼロ・オフ」表示が意味すること・しないこと、そして尿酸値に関わる飲酒以外の要因を、一次資料にもとづいて整理します。

この記事の要点

  • アルコールは含まれるプリン体の量にかかわらず、①乳酸による尿酸排泄の抑制、②ATP分解による尿酸産生の増加という2つの経路で尿酸値を上げます(厚生労働省 e-ヘルスネット、森脇 2019)
  • このため「焼酎やウイスキーなら痛風にならない」とは言えません。ただしビールは含まれるプリン体の分だけ、他の酒より尿酸値の上昇に関する報告が多い傾向があります
  • 「プリン体ゼロ・オフ」表示は100mlあたり0.5mg未満という飲料業界の自主基準で、法律上の栄養成分表示基準の対象ではありません。多くはアルコールを含む発泡酒・新ジャンル製品です
  • 日本痛風・尿酸核酸学会のガイドラインは、尿酸値への影響を抑える飲酒量の目安として、日本酒1合・ビール350〜500ml・ウイスキー60ml程度(純アルコール約20g)を示しています
  • 尿酸値は飲酒だけでなく、脱水・肥満・果糖の摂取・激しい無酸素運動などの影響も受けます

痛風・尿酸値とお酒の関係 — なぜプリン体だけの問題ではないのか

健康診断で尿酸値が7.0mg/dLを超えると高尿酸血症と判断されます。厚生労働省 e-ヘルスネットによれば成人男性の約20%が該当し、関節に尿酸の結晶がたまって炎症を起こすと痛風発作につながります。

尿酸は、細胞の代謝にともなって生じるプリン体が体内で分解されてできる物質です。そのため「プリン体の多い酒を避ければよい」と考えられがちですが、e-ヘルスネットの「アルコールと高尿酸血症・痛風」は、アルコールが尿酸値を上げる理由として、①ATPの分解が進みプリン体が増えること、②腎臓の機能低下で尿酸が排泄されにくくなること、③プリン体を多く含む食品(レバー・いわし・白子など)を一緒に摂りやすくなることの3つを挙げています。①と②は、酒に含まれるプリン体の量とは関係のない、アルコールそのものの作用です。

神戸学院大学の森脇優司氏による総説「アルコールと尿酸」(痛風と尿酸・核酸 43巻2号、2019年)は、このメカニズムをさらに詳しく説明しています。アルコールはアセトアルデヒドを経て酢酸・アセチルCoAへと代謝される過程でATPを消費し、アデニンヌクレオチドの分解を進めて尿酸値を上げます。これとは別に、アルコールの分解でNADHが増えると乳酸の代謝が抑えられて体内に蓄積し、その乳酸が腎臓の尿酸トランスポーター(URAT1)を介して排泄される際に尿酸の再吸収を促し、血清尿酸値を上げるとも報告されています。つまり「プリン体を含まない酒だから尿酸値には影響しない」とは言えません。

「ビールはダメだが焼酎・ハイボールなら平気」は本当なのか

アルコール自体が尿酸値を上げる以上、蒸留酒(焼酎・ウイスキー・ブランデーなど)であっても無関係ではありません。森脇(2019)が紹介する米国の研究(Choi HK, Atkinson K, et al. Lancet 2004)では、毎日蒸留酒を2杯以上(88ml以上)飲む人は、飲まない人と比べて痛風の相対危険度が1.6倍に上昇したと報告されています。同じ研究でビールを毎日2本以上(710ml以上)飲む人は2.5倍、ワインでは明確な関連が見られなかったとされ、この差は主にビールに含まれるプリン体の量に由来すると考えられています。「ビールは上がりやすく蒸留酒は上がりにくい」という傾向は事実でも、「蒸留酒なら無関係」という意味にはなりません。

酒類ごとのプリン体量と、日本痛風・尿酸核酸学会「高尿酸血症・痛風の治療ガイドライン 第3版[2022年追補版]」(Mindsガイドラインライブラリ掲載)が示す飲酒量の目安を整理すると、次のようになります。同ガイドラインは、尿酸値への影響を最低限に保つ量として日本酒1合・ビール350〜500ml・ウイスキー60ml程度(純アルコール約20g)を挙げています。

酒類プリン体量の目安(100mlあたり)アルコール自体の尿酸値への影響飲酒量の目安
ビール(通常)約3.3〜6.9mg(地ビールは5.8〜16.6mgとより高い銘柄も)1日2本(710ml)以上で痛風の相対危険度2.5倍という報告350〜500ml程度
発泡酒約2.8〜3.9mgプリン体を除いた製品でも尿酸値の上昇が報告されているビールに準じる
日本酒約1.2mg適量(1〜1.5合程度)では血清尿酸値自体は上昇しないとする報告がある一方、摂取量が増えるとリスクは上昇1合(180ml)程度
焼酎(25度)約0.0mg(ほぼ含まない)プリン体はほぼ含まないが、摂取量が増えれば痛風リスクは上昇(1日88ml以上で1.6倍)ウイスキーの目安に準ずる
ウイスキー約0.1mg同上。蒸留酒はビールよりプリン体由来の上昇が小さいが無関係ではない60ml程度
ワイン約0.4mg他の酒類より尿酸値上昇との関連が見られないとする報告が多いが、量が増えれば同程度とする報告もある(参考)148mlまで上昇なしとする報告

プリン体量の出典: 公益財団法人痛風・尿酸財団「アルコール飲料中のプリン体含有量」(帝京大学薬学部臨床分析学研究室調べ、2006年時点)。なお同ガイドラインは、食事由来のプリン体についても1日400mg程度を目安にした摂取制限を示していますが、これらはいずれも「目安」であり、下回れば絶対に痛風にならないという保証ではありません。

「プリン体ゼロ・オフ」表示は何を意味するのか

「プリン体ゼロ」という表示は、糖質やカロリーの「ゼロ」表示のように食品表示法・食品表示基準で定められた法定の強調表示基準ではありません。一般社団法人日本ノンアルコールビール協会などの解説によれば、「プリン体ゼロ」は飲料業界が自主的に定めた基準で、100mlあたりの含有量が0.5mg未満の場合に用いられる表示です。パッケージの「ゼロ」は含有量が文字通り0であることを保証するものではなく、尿酸値への影響がないことを保証するものでもありません。

さらに見落とされやすいのが、「プリン体ゼロ」と表示された商品の多くは、ノンアルコール飲料ではなく、アルコール度数のある発泡酒や新ジャンル(いわゆる「第三のビール」)である場合が多いという点です。プリン体の含有量がどれだけ低くても、アルコールが含まれている以上、前述した乳酸・ATP分解を介した経路は働きます。「プリン体ゼロだから量を気にせず飲んでよい」とは言えません。

痛風発作が起きた直後・発作後の飲酒はどう考えられているか

痛風・高尿酸血症の患者を対象にした栄養指導の実践報告(田中万智ほか「痛風・高尿酸血症患者に対する飲酒教育」痛風と核酸代謝 42巻1号、2018年)によれば、発作直後には飲酒を控える患者が多い一方、発作が治まってしばらく再発しないと以前と同じ飲酒量に戻ってしまう患者も見られると報告されています。同報告は、「ビールは駄目だが焼酎やプリン体0の発泡酒なら大丈夫」という誤った理解から、以前よりアルコール度数の高い飲料に切り替えた結果、純アルコールの摂取量がかえって増えるケースがあると指摘しています。

発作の最中や尿酸降下薬などの服用中の飲酒の可否は、症状や薬剤の種類によって個別に判断される事柄です。気になる症状がある場合や、すでに薬を服用している場合は、自己判断で飲酒量を決めず主治医・かかりつけ医に相談してください。

尿酸値は飲酒だけで決まるのか — ほかに関わる要因

尿酸値に影響するのは飲酒だけではありません。同ガイドラインの記述からは、次のような要因も挙げられます。

尿酸値を飲酒だけの問題として捉えると、こうした要因を見落としてしまいます。

ノンアルコールビールなら気にしなくていいのか、健診で指摘されたら

アルコール分をほとんど含まないノンアルコールビールは、少なくとも前述した乳酸・ATP分解を介した経路への影響は小さいと考えられます。ただしプリン体の含有量は製品によって差があり、各社の公表値には幅があります。銘柄ごとの実数値は糖質・プリン体で選ぶノンアルビール比較で扱っていますので確認してください。なお、アルコール度数0.5%前後の「微アル」はノンアルコールとは異なりアルコールを含むため、前述の経路も考慮する必要があります。違いは微アル(0.5%)とは?で整理しています。

健康診断で尿酸値を指摘された場合、e-ヘルスネットは、適切なエネルギー摂取・プリン体の摂りすぎに注意すること・十分な水分摂取・適切な飲酒量への見直しを治療の基本として挙げています。γ-GTPなど肝機能の数値もあわせて指摘された場合の考え方は健診前の減酒ガイドγ-GTPとは?で扱っています。痛風・高尿酸血症の診断や治療薬の使用は個々の症状・検査値によって判断が分かれる領域のため、自己判断で飲酒量や薬の使い方を決めず、かかりつけ医・専門医に相談してください。

よくある質問

プリン体ゼロのお酒なら痛風の心配はいりませんか?

いいえ。「プリン体ゼロ」は100mlあたり0.5mg未満という業界の自主基準であり、アルコール自体が乳酸・ATP分解を介して尿酸値を上げる働きはプリン体の含有量とは別に働きます。多くの「プリン体ゼロ」表示製品はアルコールを含む発泡酒・新ジャンルであり、量を気にせず飲んでよいという意味ではありません。

焼酎やウイスキーなら尿酸値は上がりませんか?

蒸留酒はビールに比べてプリン体をほとんど含みませんが、摂取量が増えれば蒸留酒でも痛風発症リスクが上がるという報告があります(1日88ml以上で相対危険度1.6倍)。「蒸留酒だから無関係」とは言えません。

高尿酸血症の基準値はどのくらいですか?

血液中の尿酸値が7.0mg/dLを超えると高尿酸血症と判断されます(厚生労働省 e-ヘルスネット)。成人男性の約20%が該当するとされ、自覚症状がないまま進行することも多い数値です。

尿酸値を上げるのは飲酒だけですか?

いいえ。肥満、果糖の過剰摂取、脱水、激しい無酸素運動なども尿酸値に影響するとされています。飲酒量だけを見直しても、こうした他の要因が変わらなければ十分な改善につながらない場合があります。

まとめ

痛風・尿酸値とお酒の関係は、「プリン体の多い酒を避ければよい」という単純な話ではありません。アルコールそのものが、乳酸による尿酸排泄の抑制とATP分解による尿酸産生の増加という2つの経路で尿酸値を上げるため、蒸留酒であっても無関係ではなく、「プリン体ゼロ」表示も安全を保証するものではありません。ガイドラインは日本酒1合・ビール350〜500ml・ウイスキー60ml程度という飲酒量の目安を示していますが、これはあくまで目安であり、肥満・果糖・脱水・激しい運動など飲酒以外の要因も尿酸値には関わります。健診で数値を指摘された場合や痛風・高尿酸血症の診断を受けている場合は、自己判断で飲酒量や薬の使い方を決めず、かかりつけ医・専門医に相談してください。

参考文献

免責事項

本記事は一般的な情報提供を目的としており、医療アドバイスではありません。尿酸値や飲酒量に関する数値は、集団を対象とした研究や公的資料にもとづく目安であり、個人にそのまま当てはまるとは限りません。痛風・高尿酸血症の診断を受けている場合や、治療薬を服用中の場合は、自己判断で飲酒量や薬の使い方を決めず、必ず医師・薬剤師にご相談ください。