ゼブラストライピングとは、アルコール飲料とノンアルコール飲料(水・ソフトドリンク・ノンアルコールカクテルなど)を交互に飲む飲み方を指す、英語圏で広まった呼び名です。 シマウマの白黒の縞模様になぞらえた言葉で、辞書に見出し語として収載された正式な用語ではなく、飲料業界メディアやSNSで使われる俗語です。ただし「お酒とノンアルコールを交互に挟む」という実践自体は目新しいものではなく、日本には「チェイサー」「和らぎ水」という同じ発想の作法が先にあります。この記事では、ゼブラストライピングという語がいつごろ・どこから広まったのかを確認できる一次資料をもとに整理したうえで、日本の在来の作法との関係、そして「交互に飲めば安心」と言い切れるのかどうかを、公的な飲酒ガイドラインの記述に沿って分けて説明します。
この記事の要点
- ゼブラストライピングとは、お酒とノンアルコール飲料を交互に飲む飲み方の英語圏での呼び名で、辞書に見出し語として収載されている正式な用語ではありません
- 確認できる範囲では2024年後半に英国の業界調査(Lucky Saint×KAM Insight)が報じられて以降、英語圏の飲料業界メディアで急速に使われるようになりました
- 日本には同じ発想の「チェイサー」「和らぎ水」という作法がすでにあり、海外発の目新しい実践というより、古くからの作法に新しい呼び名がついた形です
- 摂取するアルコール量やペースが落ちること自体は構造上そうなりますが、「二日酔いを防ぐ」と言い切れるだけの強い根拠は確認できていません
- 英国CMOの飲酒ガイドラインや厚労省のガイドラインも、水と交互に飲むことをリスクを減らす工夫の一つとして挙げています
ゼブラストライピングとは何を指す言葉か
英語圏の飲料メディアVinePairの説明では、ゼブラストライピングは「1杯のお酒の次に1杯のノンアルコール飲料を挟み、それを繰り返す飲み方」を指すとされています。名前の由来はシマウマの白黒の縞模様で、アルコールとノンアルコールを交互に重ねていく様子を模様になぞらえたものだと複数の記事で説明されています。同記事は「この言葉を最初に考え出したのが誰かは分かっていない」と明記しており、特定の個人や企業が最初に名付けたと確認できる記録は見当たりませんでした。
いつ・どこから広まったのか
確認できる範囲では、2024年9月18日付の業界メディアBeverageDailyの記事が、この語をタイトルに掲げて解説した早い時期の報道の一つです。同記事は、英国のノンアルコールビールブランドLucky Saintとホスピタリティ調査会社KAM Insightが実施した調査を引用し、英国のパブ・バー来店客の28%が普段からゼブラストライピングをしており、18〜24歳に限ると78%がアルコールとノンアルコールの飲み物を組み合わせていると報じています。2024年後半にかけて、この英国発の調査報道をきっかけに語が飲料業界メディアで一気に広がったことが確認できます。
2025年に入ると、酒類大手ディアジオが年次トレンドレポートで、1回の社交の場でアルコールとノンアルコールを交互に飲む「ゼブラストライピング」という飲み方の広がりを指摘するなど、業界レポートでも取り上げられる語になりました。依存症研究者のヴァン・デ・フェン氏(ニューサウスウェールズ大学)とリー氏(カーティン大学)は2025年2月にThe Conversationへ寄稿し、「用語自体は新しいが、飲み物を交互にするという発想はハームリダクション(被害軽減)の考え方として以前からある」と位置づけています。Merriam-Webster・Collinsなど主要な英語辞書に、この飲酒の意味での見出し語としての収載は確認できず、業界メディア発の俗語という段階にとどまっています。
日本の「チェイサー」「和らぎ水」との関係
「ゼブラストライピング」は英語圏で最近広まった呼び名ですが、アルコールとノンアルコールを交互に飲むという発想そのものは、日本にすでに定着した作法として存在します。代表的なのが「チェイサー」と「和らぎ水」です。
チェイサーは、強い酒をストレートで飲むときに続けて口にする水・炭酸水・軽い酒を指すバー用語です。英語辞書Merriam-Websterは、chaserを「より強い、あるいはより弱い酒の直後に飲む、別の種類の飲み物」と説明しています。英語のchase(追いかける)に由来し、メインの一杯を追いかけるように飲むイメージから来た呼び方だと紹介されています。
和らぎ水は、日本酒を飲む合間に挟む水を指す言葉です。日本酒造組合中央会は公式サイトで「合間に水を飲めば、気分すっきり、深酔いしません」「洋酒にチェイサーという飲み方があるように、日本酒にも水、というスタイル」と案内しています。誰がいつこの言葉を使い始めたかは業界団体の公式資料からは確認できませんでしたが、洋酒のチェイサーと対になる呼び方として案内されている点は明確です。
つまり、ゼブラストライピングを「海外発の新しい飲み方」と紹介するのは正確ではありません。実践としては、チェイサーや和らぎ水という形で日本にもともとあった作法に、英語圏で新しい呼び名がついた、と捉えるほうが実態に近いと言えます。
| 用語 | 意味 | 由来 | 目的 |
|---|---|---|---|
| ゼブラストライピング | 酒とノンアルコール飲料を交互に飲む飲み方 | 2024年ごろから英語圏の業界メディア・調査報道で広まった俗語 | 摂取ペースを落とし、酔いの度合いを自分で調整する |
| チェイサー | 強い酒の後に飲む水・炭酸水・軽い酒 | 英語chaser(追う者)に由来するバー用語 | 口直しをして、強い酒の刺激を和らげる |
| 和らぎ水 | 日本酒を飲む合間に挟む水 | 日本酒造組合中央会などが飲み方の工夫として案内する作法(具体的な提唱の起点は確認できず) | 酔いのペースを緩やかにし、料理や次の一杯の味を保つ |
| 休肝日 | 一定期間、意図的に飲酒しない日を設ける習慣 | 厚労省の飲酒ガイドライン等で使われる概念 | 1回の飲み方ではなく、週単位で総量・頻度を管理する |
何が言えて、何が言えないのか
アルコールとノンアルコールを交互に飲めば、同じ杯数を飲んでも摂取する純アルコール量そのものが減り、飲むペースも自然に落ちます。これは足し算・引き算の理屈であり、構造上そうなると言えます。The Conversationに寄稿したヴァン・デ・フェン氏とリー氏も「ほとんどの人にとって、実質的にアルコール摂取量を半分にする」と評価しています。
一方で、「二日酔いにならない」「悪酔いしない」と言い切れるだけの根拠があるかは、別に考える必要があります。二日酔い対策で本当に効くのは何かで扱ったとおり、二日酔いには公式な診断基準すらなく、複数の要因が絡み合って起きると考えられています。厚生労働省のガイドラインが「飲酒の合間に水(又は炭酸水)を飲む」ことを配慮事項として挙げているのは事実ですが、そこで説明されている効果は「飲む量に占める純アルコールの量を減らす」という点にとどまり、二日酔いそのものを防ぐと約束するものではありません。水を飲んでもアルコールの分解速度自体が上がるわけではない、という点も同記事のとおりです。
したがって、ゼブラストライピングについて言えるのは「総量とペースが落ちる」という構造的な事実までで、体感的な結果まで保証するものではありません。
公的な飲み方の助言との関係
ゼブラストライピングという呼び名こそ使っていませんが、水と交互に飲むという行動自体は、日英双方の公的なガイドラインですでに推奨事項として挙げられています。
厚生労働省が2024年2月に公表した「健康に配慮した飲酒に関するガイドライン」は、健康に配慮した飲酒の仕方の一つとして「飲酒の合間に水(又は炭酸水)を飲むなど、アルコールをゆっくり分解・吸収できるようにする」ことを挙げ、「飲む量に占める純アルコールの量を減らす効果があります」と説明しています。
英国でも、保健情報サイトDrinkawareが紹介する英国主席医療責任者(Chief Medical Officers)の低リスク飲酒ガイドラインは、1回の飲酒機会でリスクを減らす工夫として「ゆっくり飲む」「食事と一緒に飲む」と並べて「水と交互に飲む(alternating with water)」ことを挙げています。呼び名は違っても、行動としての推奨内容は日英で一致していると言えます。
実践のコツ — 乾杯の次の1杯をどう頼むか
やり方自体は難しくありません。乾杯の1杯目を飲み終えたら、次の注文でお酒ではなく水・ソフトドリンク・ノンアルコールカクテルを頼み、その次にまたお酒に戻る——この繰り返しが基本の形です。
オーセンティックバーでは「ノンアルコールでお任せできますか」「ヴァージン◯◯を」といった伝え方が通じやすく、具体的な頼み方や好みの伝え方はバーで恥をかかないノンアル注文術にまとめています。乾杯の場で「今回は水にします」と言うだけで十分なことも多く、理由を説明せずに済ませたい場合は『なんで飲まないの?』への切り返しフレーズ集の言い回しも役立ちます。割り材としては、無糖の炭酸水・ノンアルコールビール・ノンアルコールカクテルなど、口当たりが軽く飲み過ぎにつながりにくいものが選びやすいでしょう。
交互に飲めば安心、とは言えない場合もある
注意したいのは、「交互に飲んでいるから」という理由で、飲む量そのものを増やしてしまうケースです。ゼブラストライピングはあくまで1回あたりの純アルコール量とペースを落とす工夫であり、総量の上限を無視してよい理由にはなりません。長時間の飲酒を正当化する技術として使うと、本来の目的とは逆の結果を招きかねません。
また、「水を挟めば大丈夫」という発想では対応できない状態もあります。飲酒量が自分でコントロールできなくなっている、あるいは飲酒をめぐって自分や周囲が困りごとを抱えていると感じる場合、必要なのは飲み方の工夫ではなく専門的な相談です。行政・医療・当事者会それぞれの相談先はお酒の相談はどこにすればいい?にまとめています。
よくある質問
ゼブラストライピングは正式な医学用語ですか?
いいえ、確立した言葉ではありません。英語圏の飲料業界メディアや調査報道で使われるようになった俗語で、Merriam-WebsterやCollinsといった主要な英語辞書にも、この飲酒の意味での収載は確認できていません。
いつからある言葉ですか?
誰が最初に使い始めたかは特定できていません。確認できる範囲では2024年後半に英国の業界調査(Lucky Saint×KAM Insight)が報道され、それ以降に飲料業界メディアで急速に使われるようになりました。
ゼブラストライピングをすれば二日酔いになりませんか?
そこまでは言い切れません。摂取する純アルコール量やペースが落ちること自体は構造上そうなりますが、二日酔いには公式な診断基準すらなく複数の要因が絡むとされており、水を交互に飲むこと自体がアルコールの分解速度を上げるわけでもありません。
チェイサーや和らぎ水と何が違うのですか?
目的は近く、実践としてはほぼ同じです。チェイサーは強い酒の後の口直し、和らぎ水は日本酒の飲み方として案内されてきた言葉である一方、ゼブラストライピングはお酒全般とノンアルコール飲料を交互に飲む行為を指す、比較的新しい英語の呼び名です。
まとめ
ゼブラストライピングとは、アルコールとノンアルコールの飲料を交互に飲む飲み方を指す、英語圏で広まった俗語です。誰が最初に名付けたかは特定できませんが、2024年後半の英国の業界調査報道をきっかけに広まり、辞書にはまだ収載されていません。日本にはチェイサー・和らぎ水という同じ発想の作法が先にあり、海外発の目新しい実践というよりは、古くからの作法に新しい呼び名がついた形だと言えます。摂取量やペースが落ちること自体は構造上そうなりますが、「二日酔いを防ぐ」とまで言い切れる根拠はなく、量を増やしてよい理由にもなりません。飲み方の工夫で対応できる範囲を超えていると感じる場合は、一人で抱え込まず専門機関への相談も選択肢です。
参考文献
- VinePair「What Is Zebra Striping? A Catchy New Way to Drink In Moderation」 https://vinepair.com/articles/zebra-striping-explained/
- BeverageDaily「What is zebra striping? An opportunity for alcohol-free drinks」(2024年9月18日) https://www.beveragedaily.com/Article/2024/09/18/what-is-zebra-striping-an-opportunity-for-alcohol-free-drinks/
- Van de Ven K, Lee N.「With 'damp drinking' and 'zebra striping', Gen Z are embracing moderation – not abstinence – from alcohol」The Conversation, 2025年2月10日 https://theconversation.com/with-damp-drinking-and-zebra-striping-gen-z-are-embracing-moderation-not-abstinence-from-alcohol-246250
- Diageo「Diageo identifies 2025 socialising trends in new global report」 https://www.diageo.com/en/news-and-media/press-releases/2025/diageo-identifies-2025-socialising-trends-in-new-global-report
- 厚生労働省「健康に配慮した飲酒に関するガイドライン」(2024年2月) https://www.mhlw.go.jp/content/12200000/001211974.pdf
- Drinkaware「UK low risk drinking guidelines: the Chief Medical Officers' advice」 https://www.drinkaware.co.uk/facts/information-about-alcohol/alcohol-and-the-facts/low-risk-drinking-guidelines
- 日本酒造組合中央会「和らぎ水のすすめ」 https://japansake.or.jp/sake/about-sake/yawaragi-mizu/
- Merriam-Webster「Chaser」 https://www.merriam-webster.com/dictionary/chaser
免責事項
本記事は一般的な情報提供を目的としており、医療アドバイスではありません。「ゼブラストライピング」は俗語であり、二日酔いや悪酔いを防ぐことを保証するものではありません。飲酒量のコントロールが難しいと感じる場合は、保健所・精神保健福祉センター・アルコール専門医療機関(減酒外来)など専門機関へのご相談をご検討ください。20歳未満の飲酒は法律で禁止されています。