ノンアルコール飲料の市場は、ここ数年で着実に拡大しています。サントリーの推計によれば、2024年の国内ノンアルコール飲料市場は4,584万ケースで前年比111%、10年前と比べて約1.6倍の規模になりました。この記事では、確認できた公開資料をもとに、市場を押し上げている要因と国内外の動きを中立的に整理します。

この記事の要点

  • サントリーの推計では、2024年の国内ノンアルコール飲料市場は4,584万ケース(前年比111%)で、10年前の約1.6倍の規模です
  • 拡大の背景には、健康志向・コンプライアンス意識・製品品質の向上・ソバーキュリアス文化という複数の要因が重なっています
  • 米国ではノンアルコールのビール・ワイン・スピリッツの小売売上が2025年末までに10億ドルを突破する見込みですが、購入者の92%はアルコール製品も併せて購入しており、「代替」よりも「併用」の実態が見えます

ノンアルコール市場はどれくらい伸びている?

サントリーが2025年8月に公表した「ノンアルコール飲料レポート2025」によると、2024年の国内ノンアルコール飲料市場は4,584万ケース(前年比111%)、2025年は約4,730万ケース(前年比103%)と見込まれています。10年前の2014年と比較すると、約1.6倍の規模に拡大した計算です。

同レポートは、関東圏(東京都・埼玉県・千葉県・神奈川県)在住の20〜60代3万人を対象にした事前調査(2024年6月実施)と、飲用者1,751人を対象にした本調査で構成されています。これによると、この1年間にノンアルコール飲料を飲んだ人の約半数が「月1日以上」飲用しており、7割以上が「自宅内」と「自宅外」の両方で飲用しています。飲用理由については約7割が「何かの代わりではなく、積極的に選んでいる」と回答しており、実際に飲用量が「増えた」と答えた人は4割以上にのぼります。主な飲用シーンは「夕食時」「夕食後」「風呂上がり」の3つで、ノンアルコールRTD(缶チューハイ・カクテルテイスト等)の飲用者に限ると、6割以上が1日のうちに複数の種類を飲むと回答しています。

なお、国内の酒類消費量そのものは長期的に減少傾向にあります(詳しくは日本のアルコール消費量はどれだけ減ったか)。酒類全体の消費が縮小する一方でノンアルコール飲料が伸びているという対照的な動きは、単なる「代替」では説明しきれない需要の変化を示していると考えられます。

ノンアルコール飲料市場規模(サントリー推計)前年比
2024年4,584万ケース111%
2025年(見込み)約4,730万ケース103%

サントリーの推計では、2025年の市場規模は10年前(2014年)と比べて約1.6倍に拡大しています。出典: サントリーホールディングス「ノンアルコール飲料レポート2025」(2025年8月公表)

市場を押し上げる4つのドライバー

健康志向。サントリーの調査では、ノンアルコール飲料を選ぶ理由として「健康に気をつけたいから」が上位に挙げられており、体調管理の一環として飲用を選ぶ人が一定数存在することがうかがえます。厚生労働省の国民健康・栄養調査でも、週3回以上飲酒する「習慣飲酒者」の割合は男性で平成元(1989)年の51.5%から令和元(2019)年には33.9%まで低下しており、健康を意識した飲酒行動の変化が背景にあると考えられます。

飲酒運転・コンプライアンス意識。運転前や勤務前後にアルコールを避ける必要がある場面は多く、0.00%表示のノンアルコール飲料は「飲酒運転リスクをゼロにできる選択肢」として定着しています。企業のコンプライアンス意識の高まりも、会食や接待の場でノンアルコールを選びやすい空気を後押ししていると考えられます。

製品品質の向上。キリンビールは2025年9月30日、同社初となる脱アルコール製法を採用した「キリン本格醸造ノンアルコール ラガーゼロ」を発売しました。4年をかけて開発されたこの製品は、2026年2月時点で累計販売本数2,500万本を突破しています。サントリーも2025年9月24日にノンアルコールビールテイスト飲料の新ブランド「ザ・ベゼルズ」を発売するなど、各社が製法の刷新に投資しており、「ノンアルコールは味が薄い」という過去のイメージを塗り替える動きが続いています。

ソバーキュリアス文化。「飲める人があえて飲まない」という選択を前向きに捉える文化的な変化も、需要を押し上げる要因の一つです。特に若い世代でこの傾向は顕著で(詳しくはZ世代はなぜ飲まないのか)、企業側の対応も進んでいます。アサヒビールは2022年、電通デジタルとともに「スマドリ株式会社」を設立し、同年6月には渋谷にアルコール分0.00%・0.5%・3.0%の飲料100種類以上を提供する「スマドリバー渋谷」をオープンしました。同社によれば「スマドリ」の認知率は2024年に約50%へ達し、2025年度は60%を目標としています。

国内プレイヤーの動き

大手4社は2025年、いずれもノンアルコール分野で新商品や既存ブランドの刷新を進めました。確認できた範囲は以下の通りです。

メーカー商品名発売・展開時期内容
アサヒビールアサヒゼロ(リニューアル)2025年2月製造分〜、3月に334ml瓶追加定番ノンアルコールビールテイスト飲料のリニューアル
アサヒビールアサヒよわない贅沢2025年4月22日発売グレープフルーツ・桃の2種展開のノンアルコールカクテルテイスト飲料
キリンビールキリン本格醸造ノンアルコール ラガーゼロ2025年9月30日発売、2026年4月に500ml缶追加キリン初の脱アルコール製法採用。2026年2月時点で累計2,500万本突破
サントリーザ・ベゼルズ2025年9月24日発売ノンアルコールビールテイスト飲料の新ブランド
サントリーからだを想うのんある酒場(レモンサワー/ワインスパークリング〈赤〉)2025年12月上旬〜順次発売ノンアルコールのレモンサワー・スパークリングワインテイスト

サッポロビールも「プレミアムアルコールフリー」をラインナップに持ち、ノンアルコール市場に参入しています。4社とも、単一の定番商品だけでなく、味わいやシーンの異なる複数ラインをそろえる方向に動いていることが見て取れます。銘柄ごとの製法やスペックの違いはノンアルコールビールの選び方と比較で詳しく扱っています。

大手だけでなく、専門事業者の参入も進んでいます。ノンアルコール飲料専門のオンラインストア「Alldrop」を運営するLANYのように、海外のノンアルコールクラフトビールを含む専門品を輸入・販売する事業者が登場しており、海外醸造所によるクラフトノンアルビールを日本国内で入手できる選択肢も広がっています。

海外はどうなっているか

海外でもノンアルコール市場の拡大は確認できます。市場調査会社NIQ(ニールセンIQ)の2025年の調査(食品・ドラッグストア・量販店チャネルの52週間の販売データに基づく、EC・外食・専門店は含まない)によれば、米国のノンアルコールのビール・ワイン・スピリッツの小売売上は2025年末までに10億ドルを突破する見込みです。ただし同調査では、ノンアルコール飲料の購入者の92%がアルコール製品も併せて購入していることも明らかになっており、ノンアルコールが「アルコールの代わり」というより「アルコールと併用する選択肢」として定着しつつある実態がうかがえます。

欧州では、市場調査会社Innova Market Insightsの分析として、ノンアルコール・低アルコール飲料の新商品ローンチ数がアルコール飲料の5倍のペースで増加しており、全アルコール飲料ローンチに占める割合は11%に達しているとの報告があります。

若い世代の飲酒行動の変化も、海外の動きを理解するうえで参考になります。米国の世論調査機関ギャラップの調査では、35歳未満で「お酒を飲む」と答えた人の割合が2001〜2003年の72%から2021〜2023年には62%へ低下しています。こうした背景から、「sober curious(ソバーキュリアス)」という言葉自体も欧米発の概念として広がりました(詳しくはソバーキュリアスとは)。

日本市場にも海外ブランドが流入し始めています。前述のような専門店が海外のノンアルコールクラフトビールを輸入販売しているほか、世界的に販売量が多いブランドの一つとされるハイネケン0.0のような海外の定番銘柄も国内で入手できるようになっています。

「ノンアルは代替品」から「選ばれる一杯」へ

サントリーの調査で「積極的に選んでいる」という回答が約7割を占めたように、ノンアルコール飲料の位置づけは「お酒が飲めない人の我慢の一杯」から「その場に合わせて選ぶ一杯」へと変わりつつあります。製法の向上によって味わいの選択肢が増え、価格帯も居酒屋の定番商品から専門店のクラフト銘柄まで幅広くなりました。

SHIRAFUは特定のブランドや商品に偏らない立場で、この広がった選択肢を整理してお伝えしています。ジャンルごとの特徴や選び方の軸については大人のノンアル完全ガイドにまとめていますので、あわせてご覧ください。

今後の論点

市場が拡大する一方で、いくつかの論点も残っています。1つは低アルコール(微アルコール)製品の位置づけです。国税庁の定義では、アルコール分1%未満の飲料は酒税法上の「酒類」に該当しません。そのため0.5%前後のアルコールを含む「微アルコール」商品も、0.00%の完全ノンアルコール商品と同じ「ノンアルコール」カテゴリーで並んで売られていることがあります。運転前や妊娠中など、微量のアルコールも避けるべき場面では、パッケージの「アルコール分」表示を確認することが欠かせません。

もう1つは20歳未満への配慮です。ノンアルコール飲料は酒類に該当しないため年齢制限の法的な縛りはありませんが、見た目やパッケージがお酒に近い商品も多く、未成年の飲用をどう扱うかは各メーカー・販売店の自主的な配慮に委ねられている部分があります。この点はノンアルコールビールの選び方と比較でも取り上げている論点です。

市場が伸びるほど、こうした表示や運用のルールをどう整えていくかも、今後の焦点になっていくと考えられます。

よくある質問

ノンアルコール飲料の市場規模はどれくらいですか?

サントリーの推計では、2024年の国内市場は4,584万ケース(前年比111%)で、10年前の約1.6倍の規模です(2025年8月公表データ)。

ノンアルビールを飲む人は増えていますか?

サントリーの調査では、この1年間の飲用者の約半数が月1日以上飲用しており、4割以上が飲用量が「増えた」と回答しています(2025年調査)。

なぜ各社がノンアルコールに参入しているのですか?

健康志向やコンプライアンス意識に加え、脱アルコール製法などの技術向上で味わいの質が上がり、選ばれる商品として成立するようになったためと考えられます。

海外でも流行っていますか?

米国ではノンアルコール飲料の小売売上が2025年末までに10億ドルを突破する見込みで、欧州でも新商品のローンチ数が急増しています(NIQ、Innova Market Insights調べ)。

参考文献

※本記事のデータは2026年7月時点で確認した公開資料に基づきます。最新値は各出典をご確認ください。