飲酒量を減らしたいと思っても、自分の飲み方がどのくらいのリスクなのか、客観的に知る手段は意外と少ないものです。「AUDIT(Alcohol Use Disorders Identification Test)」は、WHO(世界保健機関)が開発した飲酒スクリーニングテストで、過去1年間の飲み方について10の質問に答えるだけで、飲酒によるリスクの目安をスコア化できます。この記事では、AUDITの成り立ちから10問の構成と配点、厚生労働省が示すスコアの目安、簡易版AUDIT-Cとの違い、純アルコール量(ドリンク数)の数え方、そしてスコアが高かった場合の相談先までを一次資料に基づいて解説します。
この記事の要点
- AUDITはWHOが1989年に6カ国共同研究として開発した、過去1年間の飲酒について答える10問のスクリーニングテストです(合計0〜40点)
- 厚生労働省の手引きでは、0〜7点は「問題飲酒ではないと考えられる」、8〜14点は「減酒支援(ブリーフインターベンション)の対象」、15点以上は「アルコール依存症が疑われ、専門医療機関につなげる」目安とされています
- AUDITは医学的な確定診断ではなく、あくまで気づきのためのスクリーニングツールです
- 前半3問だけを使う簡易版が「AUDIT-C」で、カットオフ値は男性4点以上・女性3点以上とされ、SHIRAFUの月相診断でも使われています
AUDITとは何か — WHOが1989年に開発した飲酒スクリーニングツール
AUDITは、WHOが主導した6カ国共同研究(ノルウェー・オーストラリア・ケニア・ブルガリア・メキシコ・アメリカ)を通じて1989年に開発された、飲酒問題の早期発見を目的とするスクリーニングテストです。プライマリケア(かかりつけ医レベルの診療)を受診する人々を対象とした150項目の評価尺度から、飲酒量・依存症状・飲酒による害という概念領域を代表する10項目が選ばれました。開発の詳細はSaundersらによって1993年に学術誌『Addiction』に発表されています。日本では、厚生労働省が「保健指導におけるアルコール使用障害スクリーニング(AUDIT)とその評価結果に基づく減酒支援(ブリーフインターベンション)の手引き」を作成し、特定健診・特定保健指導の現場での活用を推奨しています。
AUDITの10の質問はどんな内容?(構成と配点)
AUDITは、過去1年間の飲酒について10の質問に答え、それぞれの回答に応じた点数(多くは0〜4点、一部は0・2・4点)を合計する形式です。合計は0〜40点の範囲になります。厚生労働省の手引きおよびASK(認定NPO法人ASK)の解説によると、10問は4つの領域に大きく分かれます。
| 質問 | 内容 | 配点の範囲 |
|---|---|---|
| Q1 | 飲酒の頻度 | 0〜4点 |
| Q2 | 1回に飲む量(ドリンク数) | 0〜4点 |
| Q3 | 1度に6ドリンク以上飲む頻度 | 0〜4点 |
| Q4 | 飲み始めると止められなかった頻度(過去1年) | 0〜4点 |
| Q5 | 飲酒のため普段できることができなかった頻度(過去1年) | 0〜4点 |
| Q6 | 深酒の後、体調を整えるための「迎え酒」の頻度(過去1年) | 0〜4点 |
| Q7 | 飲酒後の罪悪感・自責の念(過去1年) | 0〜4点 |
| Q8 | 飲酒のため前夜の出来事を思い出せなかった頻度(過去1年) | 0〜4点 |
| Q9 | 飲酒が原因で自分か他人がけがをしたか | 0・2・4点 |
| Q10 | 周囲の人が飲酒を心配し、減らすよう勧めたことがあるか | 0・2・4点 |
Q1〜3は飲酒量と頻度、Q4〜6はコントロールの喪失や依存の兆候、Q7〜8は精神的な影響、Q9〜10は飲酒による実害という組み立てです。回答は、各質問について最も近い選択肢を1つ選ぶ形で行います。
AUDITのスコアはどう読む?厚労省の目安
厚生労働省の手引きでは、10問の合計点を次の3区分で評価し、それぞれに対応の目安を示しています。
| 合計点 | 判定 | 対応の目安 |
|---|---|---|
| 0〜7点 | 問題飲酒ではないと考えられる | 特別な介入は不要 |
| 8〜14点 | 問題飲酒はあるが、依存症には至っていない | 減酒支援(ブリーフインターベンション) |
| 15〜40点 | アルコール依存症が疑われる | 専門医療機関の受診につなげる |
なお、AUDIT-Cとの違いを解説するシラフの月相診断とは?減酒タイプ診断の仕組みと8つの月相タイプでも触れているとおり、WHOが国際的に示している元々のカットオフ値は0〜9点/10〜19点/20〜40点で、日本の特定保健指導向けの手引きはこれよりやや厳しめの0〜7点/8〜14点/15〜40点を採用しています。日本の基準は、飲酒量の少ない人が多い集団特性を踏まえて設定されたものです。
参考値として、厚生労働科学研究(研究代表者:樋口進、2013年)の一般住民調査では、AUDITスコアが7点以下だった人は男性で76.0%、女性で96.6%でした。8点以上は男性で約19%・女性で約3%、15点以上は男性で約5%・女性で約1%と報告されています。
純アルコール量(ドリンク数)はどう数える?
AUDITのQ2・Q3では「ドリンク数」という単位で飲酒量を尋ねます。厚生労働省の手引きでは、1ドリンク=純アルコール10gと定義し、次の式で計算します。
純アルコール量(g) = 飲酒量(mL) × アルコール度数(%) ÷ 100 × 0.8 ドリンク数 = 純アルコール量(g) ÷ 10
(0.8はアルコールの比重)
この式にもとづく代表的な換算例は次のとおりです。
| 飲み物 | 量 | ドリンク数 |
|---|---|---|
| ビール(5%) | 中瓶・500mL缶 1本 | 約2.0ドリンク |
| 日本酒(15%) | 1合・180mL | 約2.2ドリンク |
| 焼酎(25%) | ストレートで1合・180mL | 約3.6ドリンク |
| ワイン(12%) | グラス1杯・120mL | 約1.2ドリンク |
| ウイスキー等(40%) | ダブル水割り1杯(原酒60mL) | 約2.0ドリンク |
Q3で基準となる「6ドリンク以上」は、ビール中瓶なら約3本、日本酒なら約3合、25度の焼酎なら約1.7合(300mL)に相当する量です。自分の普段の飲み方をドリンク数に置き換えてみると、AUDITの質問にも答えやすくなります。
AUDITとAUDIT-Cの違いは何か?
AUDIT-Cは、AUDIT全10問のうち、飲酒量と頻度に関する最初の3問(Q1〜Q3)だけを使う簡易版です。回答の負担が少ないため、より手軽に飲酒リスクを把握できるスクリーニングとして使われます。厚生労働省の手引きでは、AUDIT-Cのカットオフポイントを男性4点以上・女性3点以上としており、この基準を超えた場合に残りの7問を実施することで、「多量飲酒群」と「依存症疑い群」をさらに区別できる、という段階的な使い方が紹介されています。つまりAUDIT-Cは入り口の簡易チェック、全10問のAUDITはより詳しい評価という位置づけです。
SHIRAFUの「シラフの月相診断」も、前半3問にAUDIT-Cを採用し、医療的な目安として独立して扱っています。後半6問はSHIRAFU独自の3軸判定で、AUDIT-Cとは別の「夜の過ごし方の傾向」を言葉にするためのものです。
スコアが高かった場合、どこに相談すればいい?
厚生労働省の手引きは、AUDITスコアの区分に応じて次のような対応を推奨しています。
- 8〜14点(問題飲酒はあるが依存症には至っていない): 「減酒支援(ブリーフインターベンション)」の対象です。飲酒日記をつけながら、自分で無理のない飲酒目標を立てて取り組む短時間の介入が効果的とされています。まずはゼロにしない減酒術・7つのルールのような具体的な工夫から始めるのも一つの方法です。
- 15点以上(アルコール依存症が疑われる): 精神保健福祉センターや専門医療機関(アルコール専門外来・減酒外来など)につなげることが推奨されています。手引きは、対象者一人で抱え込ませず、関係機関と連携することの重要性も強調しています。
なお、手引きは「スコアが低くても、暴言・暴力や飲酒がらみのトラブル、肝臓障害などの深刻な併存疾患、養育放棄・虐待といった問題がある場合は、点数に関わらず専門機関への相談を勧めるべき」とも述べています。減酒と断酒のどちらが自分に合うか迷う場合は、断酒と減酒の違いも参考になります。
よくある誤解 — AUDITは「診断」ではない
AUDITは医学的な確定診断ではありません。 あくまでプライマリケアの現場で、飲酒問題の可能性がある人を早期に見つけるためのスクリーニングツールです。厚生労働省の手引きも、AUDITのスコアはアルコール依存症の診断における「判断材料の1つ」であり、最終的な診断は医師が総合的に判断するものだと明記しています。
もう1つの誤解は、「スコアが低ければ安心していい」というものです。回答者が飲酒問題を隠して正直に申告しなければ、AUDITのスコアは実際より低く出てしまいます。手引きは、点数に関わらず、酩酊時の暴言・暴力や深刻な併存疾患、家庭内の問題などが見られる場合は、専門機関への相談を勧めるべきだとしています。
よくある質問
AUDITは何点満点ですか?
40点満点です。10の質問それぞれに0〜4点(一部の質問は0・2・4点)が割り振られ、その合計で評価します。
AUDITは自分で受けられますか?
はい、質問票は厚生労働省や久里浜医療センターなどのサイトで公開されており、自己採点も可能です。ただし、スコアが高く出た場合は自己判断で済ませず、保健所や精神保健福祉センター、専門医療機関にご相談ください。
AUDIT-CとAUDITの違いは何ですか?
AUDIT-CはAUDIT全10問のうち、飲酒量・頻度に関する最初の3問だけを使う簡易版です。カットオフ値は男性4点以上・女性3点以上とされ、手軽なスクリーニングとして使われます。より詳しく評価したい場合は、残りの7問を含む全10問のAUDITを行います。
SHIRAFUの月相診断でもAUDITを使っていますか?
はい。前半3問にAUDIT-Cを採用し、飲酒量に関する医療的な目安として独立して扱っています。後半6問はSHIRAFU独自の3軸判定で、夜の過ごし方の傾向を言葉にするためのものです。
スコアが低ければ、飲み方を見直す必要はありませんか?
スコアが低くても、正直に回答できていない場合や、飲酒に関連したトラブル・体調の変化がある場合は、点数だけで判断せず、自分の飲み方を振り返ってみることをおすすめします。AUDITはあくまで気づきのための入り口です。
まとめ
AUDITは、WHOが1989年に6カ国共同研究として開発した、過去1年間の飲み方を10の質問で評価する飲酒スクリーニングテストです。厚生労働省の手引きでは、合計スコアを0〜7点・8〜14点・15〜40点の3区分で読み、区分に応じて減酒支援や専門医療機関の受診を案内しています。前半3問の簡易版AUDIT-Cは、より手軽なチェックとしてSHIRAFUの月相診断でも活用されています。AUDITはあくまで気づきのためのスクリーニングであり、確定診断ではありません。気になるスコアが出た場合や、飲み方に不安がある場合は、一人で抱え込まず専門機関に相談してみてください。
参考文献
- World Health Organization「AUDIT: the Alcohol Use Disorders Identification Test: guidelines for use in primary health care」(https://iris.who.int/handle/10665/67205)
- Saunders JB, Aasland OG, Babor TF, et al.「Development of the Alcohol Use Disorders Identification Test (AUDIT): WHO Collaborative Project on Early Detection of Persons with Harmful Alcohol Consumption-II」Addiction, 1993(https://onlinelibrary.wiley.com/doi/10.1111/j.1360-0443.1993.tb02093.x)
- 厚生労働省「保健指導におけるアルコール使用障害スクリーニング(AUDIT)とその評価結果に基づく減酒支援(ブリーフインターベンション)の手引き」(https://www.mhlw.go.jp/content/10900000/001215491.pdf)
- 認定NPO法人ASK「WHOのスクリーニングテスト『AUDIT』」(https://www.ask.or.jp/article/6022)
医療機関への相談について
断酒・減酒に取り組む中で手の震え・発汗・不眠などの離脱症状が出る場合や、飲酒量を自分でコントロールできない状態が続く場合は、自己判断で進めず、アルコール専門外来・精神保健福祉センターなど専門機関にご相談ください。本記事は医療アドバイスではなく、AUDITの結果も医学的な確定診断ではありません。
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